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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第165話 親友と出会った日
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※途中からカミルの視点が入ります。
カトレア達と別れた後、カミルは月明かりが照らす夜の森をひたすら歩いていた。
「どうして私、あんなことを言ってしまったのだろう?」
『それなら、火属性以外の属性魔法を使えるのではないのですか?』
(あそこにいたのは、今のメスト様と同じ私を知らない……いや、私という人と出会わなかったカトレアよ。そんなこと、彼女に会う前から分かっていたことじゃない。それでも……)
「口に出てしまったのは多分、私にとっての彼女が今でも大切な……」
(親友だと思っていたから)
先程まで魔物達の咆哮や魔法を放つ音が響いていたとは思えない、落ち葉を踏む音が響き渡るほど静かな森の中、僅かにカミルは彼女と初めて会った時のことを1人思い返す。
それは、カミルにとって大切な思い出だった。
◇◇◇◇◇
※ここから、カミル視点です。
「ふ~ん、あなたが、魔法が一切使えない宰相家の娘ね」
「えっと、あの……」
(確か、彼女は……)
あれは、我が家と親しくている侯爵家主催のお見合いを兼ねたお茶会に参加した時のこと。
当時、私には素敵な婚約者がいたのだけど、お母様から『同い年の子達と仲良くなる最大のチャンスよ!』って言われて、人脈作りも兼ねて仕方なく参加したのよね。
そこで私は彼女……カトレアに出会ったの。
「初めまして、私の名前はカトレア・ティブリー。かつて、『王国の主砲』と謳われた火属性魔法に優れた子爵家の娘よ」
「…………」
(あぁ、ティブリー子爵家の令嬢。あの家って確か、過去の栄光に縋りすぎて無駄にプライドが高いから、他の貴族から敬遠されているのよね。そして、なぜか我が家を目の敵にしている。この子が私に見下すような態度を取るのもそのせいね)
綺麗にカーテシーで挨拶をしつつも、他人を見下すような威圧的な態度に、思わず肩を震わせた私は、直感的にこの子仲良くなれないと思っていた。
だって彼女、由緒正しき家の娘として教育されたお陰か、家格が上の人間に対しても見下すような傲慢な態度を取っていたから。
「ええっと、あの……」
(と、とりあえず挨拶よね!)
彼女の気迫に押され、言葉を詰まらせていたその時、私の隣に頼もしい男の人が現れた。
「ふ~ん、君がティブリー家の娘ですか。前々から聞いていましたが、家格が上の者に対しても、随分と尊大な態度を取っているのですね」
「あなた、誰?」
不機嫌そうに目を吊り上げたカトレアに対し、私の隣に来たその人は酷くつまらなそうな顔で辛辣な感想を口にすると、私を見て簡単な自己紹介をする。
「僕? 僕はその子の兄ですけど」
そう言って、兄は私の手を取ると足早に会場から離れ、ほとんど人気の無い場所に連れ出すと、私から手を放して魔法の鍛錬を始める。
「あの、お茶会に戻らないとお母様からに怒られてしまいますわ」
(というより、ここどこなの!?)
初めて来た屋敷なので、当然のことながら連れ出された場所がどこかも分からず。
お茶会に戻りたいけど、今いる場所がどこかも分からなくて、1人狼狽えていると、それを見ていた兄が小さく溜息をつくと呆れたような顔で私の方を見る。
「なら、そこの大きな道を真っ直ぐ進めばお茶会に戻れるよ」
「そうなのですか! では……」
「でも、今行ったところで、またあの娘に捕まって嫌味なことを言われるよ」
「『嫌味』って、お兄様、あの方は……」
「いた――――!!」
その時、小鳥のさえずりしか聞こえない静かな場所に女の子の甲高い叫び声が響き渡る。
(今の声って、もしかして!?)
驚いて肩を震わせた私と兄は、揃って声が聞えてきた方を見ると、綺麗なピンクのドレスを着たカトレアが、顔を真っ赤にしながら私と兄を指差していた。
「ちょっと、あんたたち! この私を置いてどこかに逃げようなんて、いい度胸しているんじゃないの!」
(しまったわ!)
ズンズンとこちらに歩いてくる彼女の不満そうな顔に、再び嫌味を言われると思った私は、思わず俯くとギュッと目を閉じる。
すると、魔法の鍛錬をしていた兄が、淡々とした口調でカトレアに言い返す。
「逃げてなどいません。場所を移動しただけです」
「屁理屈言わないで! あんた達が逃げたお陰で、こちとら鬱陶しい森の中、を……」
そう言って、私の隣に来た彼女が突然、嫌味な言葉が発さなくなった。
(あれっ? どうしたのかしら?)
言葉を発さない彼女に違和感を覚えた私は、恐る恐る目を開けた隣を見る。
そこには、宙に浮かんでいる兄の魔法を見て目をキラキラさせているカトレアがいた。
(スゴイ、あんなに怒っていた子がこんなにも目を輝かせるなんて。さすが、兄様の魔法!)
魔法のためならどんな努力も惜しまない兄の魔法に、家族以外の誰かが感動している姿を見て、とても誇らしく思っていると、カトレアが突然声をかけてきた。
「ねぇ、あなた! あの魔法、何ていう魔法なの!?」
「え、ええっと……」
(私、貴族なんだけど魔法とかよく分からないのよね。だって……)
興奮気味に彼女から聞かれ、答えられずにいると、鍛錬をしていた兄がカトレアの質問に答える。
「これは、『複合魔法』と呼ばれている魔法です」
「複合魔法、ですか?」
「はい、この魔法は……」
それから、兄は魔法の鍛錬をしながら淡々と複合魔法について話し始め、それをカトレアは一言一句聞き漏らせまいと必死に耳を傾けていた。
これが、私と彼女の出会いであり、火魔法使い一族に生まれた彼女が火魔法以外を使うきっかけになった。
その後、彼女は私に無礼を言ってしまったことを謝罪し、押し掛けるように兄に弟子入りした。
それからというもの、彼女は毎日のように屋敷に来て、私とお茶を楽しんだり、兄に魔法の鍛錬をつけてもらったりした。
(最初は『絶対に仲良くなれない!』と思っていたけど、彼女といる時間が長くなるにつれて、彼女や彼女の婚約者と仲良くなれたのよね)
「だからこそ、言ってしまったのかもしれないけど」
真っ暗な森の中で、彼女との出会いを懐かしく思っていると、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
カトレア達と別れた後、カミルは月明かりが照らす夜の森をひたすら歩いていた。
「どうして私、あんなことを言ってしまったのだろう?」
『それなら、火属性以外の属性魔法を使えるのではないのですか?』
(あそこにいたのは、今のメスト様と同じ私を知らない……いや、私という人と出会わなかったカトレアよ。そんなこと、彼女に会う前から分かっていたことじゃない。それでも……)
「口に出てしまったのは多分、私にとっての彼女が今でも大切な……」
(親友だと思っていたから)
先程まで魔物達の咆哮や魔法を放つ音が響いていたとは思えない、落ち葉を踏む音が響き渡るほど静かな森の中、僅かにカミルは彼女と初めて会った時のことを1人思い返す。
それは、カミルにとって大切な思い出だった。
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※ここから、カミル視点です。
「ふ~ん、あなたが、魔法が一切使えない宰相家の娘ね」
「えっと、あの……」
(確か、彼女は……)
あれは、我が家と親しくている侯爵家主催のお見合いを兼ねたお茶会に参加した時のこと。
当時、私には素敵な婚約者がいたのだけど、お母様から『同い年の子達と仲良くなる最大のチャンスよ!』って言われて、人脈作りも兼ねて仕方なく参加したのよね。
そこで私は彼女……カトレアに出会ったの。
「初めまして、私の名前はカトレア・ティブリー。かつて、『王国の主砲』と謳われた火属性魔法に優れた子爵家の娘よ」
「…………」
(あぁ、ティブリー子爵家の令嬢。あの家って確か、過去の栄光に縋りすぎて無駄にプライドが高いから、他の貴族から敬遠されているのよね。そして、なぜか我が家を目の敵にしている。この子が私に見下すような態度を取るのもそのせいね)
綺麗にカーテシーで挨拶をしつつも、他人を見下すような威圧的な態度に、思わず肩を震わせた私は、直感的にこの子仲良くなれないと思っていた。
だって彼女、由緒正しき家の娘として教育されたお陰か、家格が上の人間に対しても見下すような傲慢な態度を取っていたから。
「ええっと、あの……」
(と、とりあえず挨拶よね!)
彼女の気迫に押され、言葉を詰まらせていたその時、私の隣に頼もしい男の人が現れた。
「ふ~ん、君がティブリー家の娘ですか。前々から聞いていましたが、家格が上の者に対しても、随分と尊大な態度を取っているのですね」
「あなた、誰?」
不機嫌そうに目を吊り上げたカトレアに対し、私の隣に来たその人は酷くつまらなそうな顔で辛辣な感想を口にすると、私を見て簡単な自己紹介をする。
「僕? 僕はその子の兄ですけど」
そう言って、兄は私の手を取ると足早に会場から離れ、ほとんど人気の無い場所に連れ出すと、私から手を放して魔法の鍛錬を始める。
「あの、お茶会に戻らないとお母様からに怒られてしまいますわ」
(というより、ここどこなの!?)
初めて来た屋敷なので、当然のことながら連れ出された場所がどこかも分からず。
お茶会に戻りたいけど、今いる場所がどこかも分からなくて、1人狼狽えていると、それを見ていた兄が小さく溜息をつくと呆れたような顔で私の方を見る。
「なら、そこの大きな道を真っ直ぐ進めばお茶会に戻れるよ」
「そうなのですか! では……」
「でも、今行ったところで、またあの娘に捕まって嫌味なことを言われるよ」
「『嫌味』って、お兄様、あの方は……」
「いた――――!!」
その時、小鳥のさえずりしか聞こえない静かな場所に女の子の甲高い叫び声が響き渡る。
(今の声って、もしかして!?)
驚いて肩を震わせた私と兄は、揃って声が聞えてきた方を見ると、綺麗なピンクのドレスを着たカトレアが、顔を真っ赤にしながら私と兄を指差していた。
「ちょっと、あんたたち! この私を置いてどこかに逃げようなんて、いい度胸しているんじゃないの!」
(しまったわ!)
ズンズンとこちらに歩いてくる彼女の不満そうな顔に、再び嫌味を言われると思った私は、思わず俯くとギュッと目を閉じる。
すると、魔法の鍛錬をしていた兄が、淡々とした口調でカトレアに言い返す。
「逃げてなどいません。場所を移動しただけです」
「屁理屈言わないで! あんた達が逃げたお陰で、こちとら鬱陶しい森の中、を……」
そう言って、私の隣に来た彼女が突然、嫌味な言葉が発さなくなった。
(あれっ? どうしたのかしら?)
言葉を発さない彼女に違和感を覚えた私は、恐る恐る目を開けた隣を見る。
そこには、宙に浮かんでいる兄の魔法を見て目をキラキラさせているカトレアがいた。
(スゴイ、あんなに怒っていた子がこんなにも目を輝かせるなんて。さすが、兄様の魔法!)
魔法のためならどんな努力も惜しまない兄の魔法に、家族以外の誰かが感動している姿を見て、とても誇らしく思っていると、カトレアが突然声をかけてきた。
「ねぇ、あなた! あの魔法、何ていう魔法なの!?」
「え、ええっと……」
(私、貴族なんだけど魔法とかよく分からないのよね。だって……)
興奮気味に彼女から聞かれ、答えられずにいると、鍛錬をしていた兄がカトレアの質問に答える。
「これは、『複合魔法』と呼ばれている魔法です」
「複合魔法、ですか?」
「はい、この魔法は……」
それから、兄は魔法の鍛錬をしながら淡々と複合魔法について話し始め、それをカトレアは一言一句聞き漏らせまいと必死に耳を傾けていた。
これが、私と彼女の出会いであり、火魔法使い一族に生まれた彼女が火魔法以外を使うきっかけになった。
その後、彼女は私に無礼を言ってしまったことを謝罪し、押し掛けるように兄に弟子入りした。
それからというもの、彼女は毎日のように屋敷に来て、私とお茶を楽しんだり、兄に魔法の鍛錬をつけてもらったりした。
(最初は『絶対に仲良くなれない!』と思っていたけど、彼女といる時間が長くなるにつれて、彼女や彼女の婚約者と仲良くなれたのよね)
「だからこそ、言ってしまったのかもしれないけど」
真っ暗な森の中で、彼女との出会いを懐かしく思っていると、後ろから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
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