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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第173話 守るための処罰
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「そして、お前が魔法を放った人物を『平民ではなく実は高位貴族の隠し子だった』として、お前に冤罪をかけるつもりなのだろう」
「えぇっ!?」
(真偽を問う場に当事者を出さないのに、その当事者に冤罪を着せる気なの!?)
「そこまでして、宮廷魔法師団を手中に収めたいのですか?」
「あぁ、そこまでして奴は手中に収めるつもりだ」
「そんな……」
驚きのあまり言葉を失うカトレアに、ルベルは神妙な面持ちでバカ宰相ことノルベルトが考えそうなシナリオを話す。
「平民を殺した罪で、俺は宮廷魔法師団団長を下ろされる。その後、その平民が実はどこかの貴族の隠し子だと分かり、当事者であり『稀代の天才魔法師』であるお前は、責任を取る形で団長に就任する。だが、貴族殺しのお前に宮廷魔法師団の一切を任せられないから宰相が実権を握る」
「そんな強引な……」
「そうだよな。俺も話していて強引だと思う。でも、宰相の立場であれば、有力貴族を買収してこの強引な筋書きを現実にするくらい容易いものなんだ」
(全く、どうしてあんなバカがうちの宰相をやっているのか……って、今はそんなことを考えている時ではないな)
ルベルの話を聞いて、愕然とするカトレアに、ルベルは真剣な面持ちのまま彼女の華奢な肩を掴んで処罰を与えた真意を伝える。
「だから俺は、あのバカ宰相の思い通りにさせないためお前がやっていない証拠を掴む!」
「証拠が出るのですか?!」
(私が故意的に魔法を撃っていないという証拠が!)
驚きのあまり声を上げたカトレアに、ルベルは自信ありげな笑みを浮かべて頷く。
「あぁ、奴を脅して秘蔵っ子に魔法を使わせれば、必ず証拠が出てくるはずだ!」
「……団長、それって大丈夫なんですよね?」
「もちろん、大丈夫だ!」
(なんだか、物騒な言葉も聞こえた気がするけど)
イマイチ信じられないカトレアが心配そうな目を向けると、ルベルが笑みを潜める。
「だが、これにはどうしても時間がかかる。そこで、お前には時間稼ぎの囮として『処罰』という名目で帝国まで護衛任務に行ってもらう!」
「時間稼ぎ、ですか?」
(平民に魔法を撃った処罰では無かったのですね?)
上司の言葉に少しだけ安堵したカトレアだったが、『時間稼ぎ』の意味が分からず首を傾げると、彼女の肩に置いていた手に少しだけ力を込めたルベルが深く頷く。
「あぁ、一応お前はこの国で『稀代の天才魔法師』として名を馳せている。そのお前が、任務の一環で帝国に行くとなれば、あのバカ宰相を含めて貴族のお偉いさん方の関心はそっちにいく」
「そうなのですか?」
(そんな都合よくいくのかしら?)
「そうだ。実際、フェビルが辺境近くの駐屯地で特別訓練をした時、あのバカ宰相を含めた貴族のお偉いさん方の関心が一気にそちらに向いた」
「貴族のお偉いさん方は、皆様暇なのですか?」
呆れたような顔をするカトレアに、ルベルは思わず苦笑する。
「そう言うな。そのお陰で、あいつが処罰をくらったのは婚約者から聞いているだろ?」
「まぁ、それは聞いていますが……つまり、噂の渦中の人物である私が時間稼ぎの囮役としてお偉いさん方の気をこちらに向けさせ、その間に私がやっていないという証拠を団長が掴むということでしょうか?」
「そういうことだ。正直、部下にこんな役回りを与えるのは上司としては大変心苦しい。だが、こうでもしないと、俺はお前がやっていない証拠を掴むことが出来ない」
(あの自称『切れ者宰相』のことだ。噂が蔓延しているこのタイミングで、俺が噂の証拠探しに動いたと知れば、『宮廷魔法師団団長が、部下の活躍を自分のものにしようと証拠の改竄をし始めた』とかアホなことを言うはずだ。ならば、噂の渦中であるカトレアに動いてもらい、関心が彼女にいっている隙に証拠を掴むしかない!)
「本当、心底胸糞悪い奴だ」
「団長?」
心底嫌な顔をしながら小声で呟いたルベルは、深く溜息をつくと、小首を傾げているカトレアからそっと離れて腰に両手を添える。
「とはいえ、噂の渦中にいるお前が帝国に行ったとあのバカ宰相が知れば、奴が護衛任務中のカトレアに対して何をするか分からない。そこで、お前の護衛役として騎士をつける」
「騎士ですか?」
(宮廷魔法師の仕事に王国騎士が同行するなんて珍しいわね。それに護衛役の護衛って)
「あぁ、護衛だけならお前を含めた宮廷魔法師だけでも充分だ。そもそも、うちが帝国へ赴くことになったのは帝国から……というより、マーザス氏からうち宛に指名依頼が来たからなんだ」
「帝国がうち宛に指名で?」
(妙に信じがたいわ。なにせ、ここ3年もの間、王国と帝国は表面上友好関係であるけど、うちの宰相閣下の施策で帝国はおろか周辺諸国との国交を断絶している。そんな状況で宛に指名で来るなんて……)
『俄かに信じられない』と益々眉を顰めるカトレアから問い質され、ルベルは真剣な表情のまま小さく頷く。
「そうだ。ある日突然、宮廷魔法師団団長宛にマーザス氏から手紙が届いた。それが『帝国で預かっている杖を返したいから来て欲しい』という依頼だった」
「なるほど」
(『王国が帝国に杖を預けている』なんて話、一切聞いたことがないけど……でも、手紙が届いたってことは、王国が帝国に杖を預けているのは間違いないなさそうね)
「それで、団長はその依頼を受けることにしたのですね?」
「そうだな。なにせ、差出人は帝国で『天才魔法師』と呼ばれている人物だ。いくら、我が国が周辺諸国との国交を断絶状態にしているとはいえ、そんな大物からうちに指名で依頼が来たんだ。王国の宮廷魔法師団団長として無下にすることは出来ないだろう」
「えぇっ!?」
(真偽を問う場に当事者を出さないのに、その当事者に冤罪を着せる気なの!?)
「そこまでして、宮廷魔法師団を手中に収めたいのですか?」
「あぁ、そこまでして奴は手中に収めるつもりだ」
「そんな……」
驚きのあまり言葉を失うカトレアに、ルベルは神妙な面持ちでバカ宰相ことノルベルトが考えそうなシナリオを話す。
「平民を殺した罪で、俺は宮廷魔法師団団長を下ろされる。その後、その平民が実はどこかの貴族の隠し子だと分かり、当事者であり『稀代の天才魔法師』であるお前は、責任を取る形で団長に就任する。だが、貴族殺しのお前に宮廷魔法師団の一切を任せられないから宰相が実権を握る」
「そんな強引な……」
「そうだよな。俺も話していて強引だと思う。でも、宰相の立場であれば、有力貴族を買収してこの強引な筋書きを現実にするくらい容易いものなんだ」
(全く、どうしてあんなバカがうちの宰相をやっているのか……って、今はそんなことを考えている時ではないな)
ルベルの話を聞いて、愕然とするカトレアに、ルベルは真剣な面持ちのまま彼女の華奢な肩を掴んで処罰を与えた真意を伝える。
「だから俺は、あのバカ宰相の思い通りにさせないためお前がやっていない証拠を掴む!」
「証拠が出るのですか?!」
(私が故意的に魔法を撃っていないという証拠が!)
驚きのあまり声を上げたカトレアに、ルベルは自信ありげな笑みを浮かべて頷く。
「あぁ、奴を脅して秘蔵っ子に魔法を使わせれば、必ず証拠が出てくるはずだ!」
「……団長、それって大丈夫なんですよね?」
「もちろん、大丈夫だ!」
(なんだか、物騒な言葉も聞こえた気がするけど)
イマイチ信じられないカトレアが心配そうな目を向けると、ルベルが笑みを潜める。
「だが、これにはどうしても時間がかかる。そこで、お前には時間稼ぎの囮として『処罰』という名目で帝国まで護衛任務に行ってもらう!」
「時間稼ぎ、ですか?」
(平民に魔法を撃った処罰では無かったのですね?)
上司の言葉に少しだけ安堵したカトレアだったが、『時間稼ぎ』の意味が分からず首を傾げると、彼女の肩に置いていた手に少しだけ力を込めたルベルが深く頷く。
「あぁ、一応お前はこの国で『稀代の天才魔法師』として名を馳せている。そのお前が、任務の一環で帝国に行くとなれば、あのバカ宰相を含めて貴族のお偉いさん方の関心はそっちにいく」
「そうなのですか?」
(そんな都合よくいくのかしら?)
「そうだ。実際、フェビルが辺境近くの駐屯地で特別訓練をした時、あのバカ宰相を含めた貴族のお偉いさん方の関心が一気にそちらに向いた」
「貴族のお偉いさん方は、皆様暇なのですか?」
呆れたような顔をするカトレアに、ルベルは思わず苦笑する。
「そう言うな。そのお陰で、あいつが処罰をくらったのは婚約者から聞いているだろ?」
「まぁ、それは聞いていますが……つまり、噂の渦中の人物である私が時間稼ぎの囮役としてお偉いさん方の気をこちらに向けさせ、その間に私がやっていないという証拠を団長が掴むということでしょうか?」
「そういうことだ。正直、部下にこんな役回りを与えるのは上司としては大変心苦しい。だが、こうでもしないと、俺はお前がやっていない証拠を掴むことが出来ない」
(あの自称『切れ者宰相』のことだ。噂が蔓延しているこのタイミングで、俺が噂の証拠探しに動いたと知れば、『宮廷魔法師団団長が、部下の活躍を自分のものにしようと証拠の改竄をし始めた』とかアホなことを言うはずだ。ならば、噂の渦中であるカトレアに動いてもらい、関心が彼女にいっている隙に証拠を掴むしかない!)
「本当、心底胸糞悪い奴だ」
「団長?」
心底嫌な顔をしながら小声で呟いたルベルは、深く溜息をつくと、小首を傾げているカトレアからそっと離れて腰に両手を添える。
「とはいえ、噂の渦中にいるお前が帝国に行ったとあのバカ宰相が知れば、奴が護衛任務中のカトレアに対して何をするか分からない。そこで、お前の護衛役として騎士をつける」
「騎士ですか?」
(宮廷魔法師の仕事に王国騎士が同行するなんて珍しいわね。それに護衛役の護衛って)
「あぁ、護衛だけならお前を含めた宮廷魔法師だけでも充分だ。そもそも、うちが帝国へ赴くことになったのは帝国から……というより、マーザス氏からうち宛に指名依頼が来たからなんだ」
「帝国がうち宛に指名で?」
(妙に信じがたいわ。なにせ、ここ3年もの間、王国と帝国は表面上友好関係であるけど、うちの宰相閣下の施策で帝国はおろか周辺諸国との国交を断絶している。そんな状況で宛に指名で来るなんて……)
『俄かに信じられない』と益々眉を顰めるカトレアから問い質され、ルベルは真剣な表情のまま小さく頷く。
「そうだ。ある日突然、宮廷魔法師団団長宛にマーザス氏から手紙が届いた。それが『帝国で預かっている杖を返したいから来て欲しい』という依頼だった」
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