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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第174話 帝国からの依頼
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「帝国の天才宮廷魔法師?」
(帝国にも天才魔法師と呼ばれる人がいるのね)
宮廷魔法師団に指名で依頼してきたのが『帝国の宮廷魔法師』と聞いて、思わず首を傾げるカトレア。
そんな彼女にルベルは、依頼主について簡単に説明する。
「あぁ、本人は『魔道具専門だから、そちらの天才魔法師みたいにたくさん魔法が使えるわけじゃないよ』と謙遜していたが、帝国では一番の実力を持つ宮廷魔法師らしい」
「そうなのですね」
「稀代の天才魔法師様的には、気になるんじゃないのか?」
ニヤニヤと笑いながら揶揄うルベルを見て、僅かに眉を顰めたカトレアだったが、帝国の宮廷魔法師がどんな人物であるか気にならないと言ったら噓になる。
(帝国の天才宮廷魔法師……確かに気になるわね)
「まぁ、預かり物なんて、本当は文官だけ派遣すれば済む話。しかし、さっきも言ったが、依頼してきた相手からの指名だ。宮廷魔法師団として、仕方なく受けることにした」
「そうだったのですね」
(そういうことなら、宮廷魔法師団の帝国行きも納得ね)
ショックを受けるがあまり暗い目をしていたカトレアの薄紫色の瞳に光が灯り、ルベルは小さく溜息をつきながら安堵の笑みを浮かべる。
「では、研究員の派遣もあちらの宮廷魔法師様からの依頼で?」
「いや、そっちはマーザス氏からのご好意だ。『せっかく帝国に来るなら、帝国の魔道具技術を勉強していかない?』と」
「そうでしたか」
(あちらの宮廷魔法師は器が広いらしいようね)
「うちの団長にも見習って欲しいものです」
「おい、それは俺が器の小さい男だって言いたいのか?」
「えっ、違いました?」
「お前なぁ……」
(まぁ、どっかの他国嫌いの誰かさんのせいで、王国の魔道具技術は現在、発展途上の真っ只中だから、帝国から厚意は王国としては渡りに船だ)
どこかの誰かの顔を思い浮かべ、大きく溜息をついたルベルは、自席に戻ると机の上で不機嫌そうに頬杖をつく。
「それで、団長はあちらの厚意に甘えて、うちの研究員を帝国に派遣することを決めたのですね」
「そうだ。そしたら、どこでそれを聞きつけたのか、あのバカ宰相が『帝国行きを許す代わりに、文官を1人つけるように』ってアホなことを言ってきたんだ」
「えっ? 宮廷魔法師団宛に来た要望なのに、どうして宰相閣下が口出ししてきたのですか?」
「知るかよ! どうせ、その文官にスパイ紛いのことをさせたいんだろうよ! 全く、バカは休み休みに言えってんだ!」
「…………」
(さっきから思っていたけど、うちの宰相閣下を『バカ』呼ばわりするなんて……さすが長年、宮廷魔法師団団長として王国の防衛の片翼を担ってきた人だわ。でも、宰相閣下が宮廷魔法師団の帝国行きを知っているということは……!)
すっかり冷めきった紅茶を一気飲みしたルベルは、みるみるうちに顔を青ざめさせるカトレアを見て、再び溜息をつくとティーカップを置いてそっぽを向く。
「安心しろ。あのバカはお前の帝国行きをまだ知らない」
「っ!?」
「そもそも、この依頼は極秘依頼として宮廷魔法師団内で片付けるつもりだった。だが、あのバカが横槍を入れたお陰で、王城内で公になりつつある。だが……」
ルベルがカトレアを見るとニヤリと笑う。
「俺としては、囮役のお前に意識を向けさせるには丁度いいと思っている。お前を帝国に派遣する目的は、あくまでこちらが証拠を掴むまでの時間稼ぎ。だから、この状況を俺は好機と思っている」
「そう、ですね」
(『宮廷魔法師団の何人かが帝国へ派遣されることが決まり、その中に噂の渦中にいる私が処罰として派遣される』。お偉いさんの意識を向けさせるにはこれ以上ない話題ね)
すると、大きく息を吐いたルベルが静かに机の上で両手を組む。
「とまぁそういうわけだから……カトレア、お前には平民に魔法を撃ったことに対しての処罰と噂の証拠を探す時間稼ぎを兼ねて、帝国に行く研究者達の護衛とマーザス氏からの預かり物を持ち帰る任務を与える」
「かしこまりました」
(団長は私の言葉を信じてくれた。だったら私は、その信頼に応えられる働きをしよう)
深々と頭を下げるカトレアを見て、満足げな笑みを浮かべたルベルは、空になったティーカップを持つと椅子から立ち上がる。
「それじゃあ俺は、今から王国騎士団の本部に行ってくるわ」
「えっ、団長自らですか!?」
(宮廷魔法師団団長自らが王国騎士団の本部に行くなんて珍しい!)
驚きのあまり声を上げたカトレアに、ティーカップを片付けたルベルは再びニヤリと笑う。
「あぁ、そうだ。さっきも言っただろ? 『お前の護衛役として騎士をつかせる』って」
「まさか、今から話を通しに行くのですか?」
「あぁ、もちろんだ」
「はぁ」
(本当、相変わらず無茶をする方ね)
カトレアが呆れたような顔で見つめると、ルベルはそっと笑みを潜めると指示を出す。
「日程などの詳細は後日、書面で伝える。それまで、お前はいつも通り宮廷魔法師の仕事をしろ。分かったな?」
「はい、団長!」
「よし、それじゃあ仕事に戻っていいぞ」
「はい!」
(団長が私を信じてくれるなら、私も宮廷魔法師として団長の期待に応えないと!)
気持ちのいい返事をしたカトレアは、少しだけ晴れやかな気持ちで団長室を後にした。
「さて、俺も奴のところに行こう」
(例の平民について知っているか直接聞かないといけない)
カトレアの背中を見届けたルベルは、宮廷魔法師団内にある転移陣を使って騎士団本部に赴いた。
(帝国にも天才魔法師と呼ばれる人がいるのね)
宮廷魔法師団に指名で依頼してきたのが『帝国の宮廷魔法師』と聞いて、思わず首を傾げるカトレア。
そんな彼女にルベルは、依頼主について簡単に説明する。
「あぁ、本人は『魔道具専門だから、そちらの天才魔法師みたいにたくさん魔法が使えるわけじゃないよ』と謙遜していたが、帝国では一番の実力を持つ宮廷魔法師らしい」
「そうなのですね」
「稀代の天才魔法師様的には、気になるんじゃないのか?」
ニヤニヤと笑いながら揶揄うルベルを見て、僅かに眉を顰めたカトレアだったが、帝国の宮廷魔法師がどんな人物であるか気にならないと言ったら噓になる。
(帝国の天才宮廷魔法師……確かに気になるわね)
「まぁ、預かり物なんて、本当は文官だけ派遣すれば済む話。しかし、さっきも言ったが、依頼してきた相手からの指名だ。宮廷魔法師団として、仕方なく受けることにした」
「そうだったのですね」
(そういうことなら、宮廷魔法師団の帝国行きも納得ね)
ショックを受けるがあまり暗い目をしていたカトレアの薄紫色の瞳に光が灯り、ルベルは小さく溜息をつきながら安堵の笑みを浮かべる。
「では、研究員の派遣もあちらの宮廷魔法師様からの依頼で?」
「いや、そっちはマーザス氏からのご好意だ。『せっかく帝国に来るなら、帝国の魔道具技術を勉強していかない?』と」
「そうでしたか」
(あちらの宮廷魔法師は器が広いらしいようね)
「うちの団長にも見習って欲しいものです」
「おい、それは俺が器の小さい男だって言いたいのか?」
「えっ、違いました?」
「お前なぁ……」
(まぁ、どっかの他国嫌いの誰かさんのせいで、王国の魔道具技術は現在、発展途上の真っ只中だから、帝国から厚意は王国としては渡りに船だ)
どこかの誰かの顔を思い浮かべ、大きく溜息をついたルベルは、自席に戻ると机の上で不機嫌そうに頬杖をつく。
「それで、団長はあちらの厚意に甘えて、うちの研究員を帝国に派遣することを決めたのですね」
「そうだ。そしたら、どこでそれを聞きつけたのか、あのバカ宰相が『帝国行きを許す代わりに、文官を1人つけるように』ってアホなことを言ってきたんだ」
「えっ? 宮廷魔法師団宛に来た要望なのに、どうして宰相閣下が口出ししてきたのですか?」
「知るかよ! どうせ、その文官にスパイ紛いのことをさせたいんだろうよ! 全く、バカは休み休みに言えってんだ!」
「…………」
(さっきから思っていたけど、うちの宰相閣下を『バカ』呼ばわりするなんて……さすが長年、宮廷魔法師団団長として王国の防衛の片翼を担ってきた人だわ。でも、宰相閣下が宮廷魔法師団の帝国行きを知っているということは……!)
すっかり冷めきった紅茶を一気飲みしたルベルは、みるみるうちに顔を青ざめさせるカトレアを見て、再び溜息をつくとティーカップを置いてそっぽを向く。
「安心しろ。あのバカはお前の帝国行きをまだ知らない」
「っ!?」
「そもそも、この依頼は極秘依頼として宮廷魔法師団内で片付けるつもりだった。だが、あのバカが横槍を入れたお陰で、王城内で公になりつつある。だが……」
ルベルがカトレアを見るとニヤリと笑う。
「俺としては、囮役のお前に意識を向けさせるには丁度いいと思っている。お前を帝国に派遣する目的は、あくまでこちらが証拠を掴むまでの時間稼ぎ。だから、この状況を俺は好機と思っている」
「そう、ですね」
(『宮廷魔法師団の何人かが帝国へ派遣されることが決まり、その中に噂の渦中にいる私が処罰として派遣される』。お偉いさんの意識を向けさせるにはこれ以上ない話題ね)
すると、大きく息を吐いたルベルが静かに机の上で両手を組む。
「とまぁそういうわけだから……カトレア、お前には平民に魔法を撃ったことに対しての処罰と噂の証拠を探す時間稼ぎを兼ねて、帝国に行く研究者達の護衛とマーザス氏からの預かり物を持ち帰る任務を与える」
「かしこまりました」
(団長は私の言葉を信じてくれた。だったら私は、その信頼に応えられる働きをしよう)
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「それじゃあ俺は、今から王国騎士団の本部に行ってくるわ」
「えっ、団長自らですか!?」
(宮廷魔法師団団長自らが王国騎士団の本部に行くなんて珍しい!)
驚きのあまり声を上げたカトレアに、ティーカップを片付けたルベルは再びニヤリと笑う。
「あぁ、そうだ。さっきも言っただろ? 『お前の護衛役として騎士をつかせる』って」
「まさか、今から話を通しに行くのですか?」
「あぁ、もちろんだ」
「はぁ」
(本当、相変わらず無茶をする方ね)
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「日程などの詳細は後日、書面で伝える。それまで、お前はいつも通り宮廷魔法師の仕事をしろ。分かったな?」
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「よし、それじゃあ仕事に戻っていいぞ」
「はい!」
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