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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第175話 2人の団長
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部下に『護衛任務』という名の処罰と時間稼ぎを命じた後、その男は久しぶりに騎士団本部の団長室を訪れていた。
コンコンコン
「入れ」
「失礼する」
「っ!? あなた様は!?」
執務室に現れた突然の来訪者に、書類との格闘をすぐさま止めたフェビルは、慌てて席から立ち上がると深く頭を下げる。
そんな彼に、部屋の来訪者は小さく笑みを浮かべる。
「久しいな、フェビル。遅くなったが、王国騎士団長並びに近衛騎士団長就任おめでとう」
「いえ、こちらこそ多忙を理由にご挨拶へ伺えず申し訳ございませんでした、ルベル団長」
(まさか、宮廷魔法師団長自らこちらに来られるとは)
挨拶へ伺えなかった申し訳なさから頭が上げられないフェビルの傍で、グレアはルベルを見て表情が固まっていた。
「こちらにいらっしゃるのでしたら、私自らがお出迎えしましたのに」
「いや、謝るのはこちらの方だ。すまない、忙しいと分かりつつ先触れも出さずにこちらへ来てしまって。お陰で、ここに来るまでに君の部下達に散々怯えられえた」
朗らかな笑みで穏やかに話すルベルに対し、顔を上げたフェビルが珍しく引き攣った笑みを浮かべながら、グレアにアイコンタクトで紅茶の用意を頼むと、ルベルを応接セットのソファーに座らせた。
「それにしても、近衛騎士団長に就任してからもう1年が経つのか? どうだ、近衛騎士団団長としての仕事には、だいぶ慣れてきたか?」
「いえ、全然。いかんせん、辺境とは勝手が全く異なりますから……情けない話、毎日の仕事に追われるばかりです」
「ハハッ、そうかそうか! それにしては、王都に来て早々あの宰相閣下に立てついたようじゃないか!」
「『立てついた』ですか?」
ルベルと対面するように反対側のソファーに座ったフェビルは、楽しそうに笑っているルベルの言葉に思わず首を傾げる。
「聞いたぞ。『特別訓練』なるものをして宰相閣下とやりあったと」
(あぁ、あれのことか)
「違いますよ。あれは、宰相閣下が勝手に思い違いをして暴走しただけです。こちらは、ちゃんと然るべき手順を踏んで訓練を行っただけです」
「まぁ、そんなところだろうな」
ノルベルトの暴挙に振り回されるフェビルへ同情して深く溜息をつくルベルと、思わぬ来訪者に戦々恐々とするあまり冷や汗を掻くフェビル。
国防を担う2人の長の間に気まずい空気が流れた刹那、グレアがローテーブルに来客用の上品なティーカップが2つ置く。
「ありがとう……なぁフェビル、そんなに緊張するな。第二騎士団団長時代に散々、無茶無謀をしていたお前がそんなだと、傍に控える有能な部下が委縮してしまうじゃないか。そうだろ、グレア副団長?」
「え、あ、はい……」
突然話を振られ、普段は冷静沈着なグレアが珍しくたじろぐ。
そんな彼を一瞥したルベルは、小さく溜息をつくとティーカップに手を伸ばしてそのまま口を付ける。
「うん、君の淹れるお茶は相変わらず美味いな。今度、うちの副団長にも教えて欲しいものだ」
「あ、いや、その……」
普段なら絶対に掻かない冷や汗を掻きながら困惑するグレアを見て、ようやく落ち着きを取り戻したフェビルは、彼が用意してくれた紅茶を飲んで一息つく。
(まぁ、豪快とも繊細ともとれる優れた手腕で長らく宮廷魔法師団を率いてきた人に対して『緊張するな』というのが無理な話だ)
優雅にお茶を飲んでいるルベルに視線を戻したフェビルは、静かにティーカップを置くと王国騎士団を率いる者として背筋を伸ばす。
「それで、今日は何の御用ですか? まさか、私の就任祝いの挨拶と雑談をしに来られたわけではありませんよね?」
心底真面目な表情で問い質すフェビルに、嬉しそうに笑ったルベルがティーカップを置く。
「話が早くて助かるぞ、フェビル王国騎士団長。あのバカ宰相だとこうはいかない」
「茶化さないでください、ルベル宮廷魔法師団長」
(そう言えばこの人、俺と同じで宰相閣下のことが嫌だったな。現に、宰相閣下のことをバカ呼ばわりしているし)
「すまんすまん、お前を見ているとつい」
「『つい』って何ですか? ついって」
「ハハッ、本当にすまない。さて、今回こちらに来たのは、今度帝国に派遣する奴らの護衛について何だが……その前に」
その瞬間、ルベルの表情から穏やかさが消える。
「フェビル。お前、レイピアを使って魔法を打ち消す平民のことを知っているな?」
コンコンコン
「入れ」
「失礼する」
「っ!? あなた様は!?」
執務室に現れた突然の来訪者に、書類との格闘をすぐさま止めたフェビルは、慌てて席から立ち上がると深く頭を下げる。
そんな彼に、部屋の来訪者は小さく笑みを浮かべる。
「久しいな、フェビル。遅くなったが、王国騎士団長並びに近衛騎士団長就任おめでとう」
「いえ、こちらこそ多忙を理由にご挨拶へ伺えず申し訳ございませんでした、ルベル団長」
(まさか、宮廷魔法師団長自らこちらに来られるとは)
挨拶へ伺えなかった申し訳なさから頭が上げられないフェビルの傍で、グレアはルベルを見て表情が固まっていた。
「こちらにいらっしゃるのでしたら、私自らがお出迎えしましたのに」
「いや、謝るのはこちらの方だ。すまない、忙しいと分かりつつ先触れも出さずにこちらへ来てしまって。お陰で、ここに来るまでに君の部下達に散々怯えられえた」
朗らかな笑みで穏やかに話すルベルに対し、顔を上げたフェビルが珍しく引き攣った笑みを浮かべながら、グレアにアイコンタクトで紅茶の用意を頼むと、ルベルを応接セットのソファーに座らせた。
「それにしても、近衛騎士団長に就任してからもう1年が経つのか? どうだ、近衛騎士団団長としての仕事には、だいぶ慣れてきたか?」
「いえ、全然。いかんせん、辺境とは勝手が全く異なりますから……情けない話、毎日の仕事に追われるばかりです」
「ハハッ、そうかそうか! それにしては、王都に来て早々あの宰相閣下に立てついたようじゃないか!」
「『立てついた』ですか?」
ルベルと対面するように反対側のソファーに座ったフェビルは、楽しそうに笑っているルベルの言葉に思わず首を傾げる。
「聞いたぞ。『特別訓練』なるものをして宰相閣下とやりあったと」
(あぁ、あれのことか)
「違いますよ。あれは、宰相閣下が勝手に思い違いをして暴走しただけです。こちらは、ちゃんと然るべき手順を踏んで訓練を行っただけです」
「まぁ、そんなところだろうな」
ノルベルトの暴挙に振り回されるフェビルへ同情して深く溜息をつくルベルと、思わぬ来訪者に戦々恐々とするあまり冷や汗を掻くフェビル。
国防を担う2人の長の間に気まずい空気が流れた刹那、グレアがローテーブルに来客用の上品なティーカップが2つ置く。
「ありがとう……なぁフェビル、そんなに緊張するな。第二騎士団団長時代に散々、無茶無謀をしていたお前がそんなだと、傍に控える有能な部下が委縮してしまうじゃないか。そうだろ、グレア副団長?」
「え、あ、はい……」
突然話を振られ、普段は冷静沈着なグレアが珍しくたじろぐ。
そんな彼を一瞥したルベルは、小さく溜息をつくとティーカップに手を伸ばしてそのまま口を付ける。
「うん、君の淹れるお茶は相変わらず美味いな。今度、うちの副団長にも教えて欲しいものだ」
「あ、いや、その……」
普段なら絶対に掻かない冷や汗を掻きながら困惑するグレアを見て、ようやく落ち着きを取り戻したフェビルは、彼が用意してくれた紅茶を飲んで一息つく。
(まぁ、豪快とも繊細ともとれる優れた手腕で長らく宮廷魔法師団を率いてきた人に対して『緊張するな』というのが無理な話だ)
優雅にお茶を飲んでいるルベルに視線を戻したフェビルは、静かにティーカップを置くと王国騎士団を率いる者として背筋を伸ばす。
「それで、今日は何の御用ですか? まさか、私の就任祝いの挨拶と雑談をしに来られたわけではありませんよね?」
心底真面目な表情で問い質すフェビルに、嬉しそうに笑ったルベルがティーカップを置く。
「話が早くて助かるぞ、フェビル王国騎士団長。あのバカ宰相だとこうはいかない」
「茶化さないでください、ルベル宮廷魔法師団長」
(そう言えばこの人、俺と同じで宰相閣下のことが嫌だったな。現に、宰相閣下のことをバカ呼ばわりしているし)
「すまんすまん、お前を見ているとつい」
「『つい』って何ですか? ついって」
「ハハッ、本当にすまない。さて、今回こちらに来たのは、今度帝国に派遣する奴らの護衛について何だが……その前に」
その瞬間、ルベルの表情から穏やかさが消える。
「フェビル。お前、レイピアを使って魔法を打ち消す平民のことを知っているな?」
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