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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第178話 ルベルの頼み事(前編)
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「とはいえ、これは帝国に派遣する奴らが戻ってきてから話をしよう」
「そう言えば、宮廷魔法師団では今度、帝国に研究者達を派遣するんでしたね」
「あぁ、そこになぜか宰相閣下が首を突っ込んできて多少面倒なことになってしまったが」
「そのようですね」
(大方、帝国に行く宮廷魔法師団の動きが気に食わなかったのだろう)
ノルベルトの横暴に振り回され、心底うんざりしているルベルに、フェビルが思わず苦笑を漏らす。
すると、ルベルはニヤリと笑みを浮かべる。
「それでフェビル、その帝国に研究者達を派遣するにあたって、王国騎士団団長であるお前に2つ頼みたいことがある」
「2つですか?」
(何だか、嫌な予感がする)
眉を顰めながら首を傾げるフェビルに、ルベルは笑みを浮かべたまま人差し指を立てる。
「あぁ、まず1つ目。うちから研究者達を派遣するに伴い、宰相閣下から『文官をつけろ』と言ってきた。大方、監視役だと思うが……文官をつけるとなれば必ず護衛役の騎士がつくはずだ。もちろん、聞いているよな?」
「えぇ、つい先日ですが、国王陛下から書簡で『宮廷魔法師団に所属している研究者達に随行役として文官を派遣するため、その護衛としてうちから何人か出して欲しい』と命令が下されました」
「ほう、陛下からか」
(今や『お飾り』と呼ばれているあの国王陛下からフェビル宛に書簡で護衛任務の命を下すとは)
「はい。それでさっきそのことについてグレアと話そうと思っていました」
「そうだったのか」
(それなら丁度良かった)
フェビルの話を聞いて、ルベルが笑みを深める。
「それじゃあ、護衛を誰にするか決まっていないのだな?」
「そうですね……というより、ルベル団長。それと頼み事とは、一体何が関係するのですか?」
怪しむように眉を顰めたフェビルを見て、ルベルは笑みを浮かべたままソファーに深く腰掛ける。
「実は、研究者達の護衛役の中に、あの『稀代の天才魔法師様』であらせられるカトレア・ティブリーがいるんだ」
「えっ!? どうして、そんな大物を!?」
フェビルとグレアが驚いたように揃って目を見開くと、ルベルは気持ちを落ち着けるように紅茶を一口飲んだ。
「それはまぁ、後で話すとして……で、ここからが本題だ」
その瞬間、静かにティーカップを置いたルベルの顔から笑みが消え、鋭い眼光がフェビルとグレアを射貫く。
「うちからカトレアを出す。だから、そっちからは彼女の婚約者であらせられるラピス君を出して欲しい」
「ラピスを、ですか?」
「あぁ、そうだ」
真剣な表情で頼み込むルベルに、フェビルは少しだけ考え込む。
(ラピスは、今いる近衛騎士達の中で一番の若手であるが、『水と雷の中級魔法が使える』という剣ばかり優れている騎士団では珍しい逸材。だから、他の先輩騎士達を同じように文官の護衛任務はこなせるはず。しかし……)
「ルベル団長。返事をする前に、1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、良いぞ」
「どうして、ラピスなのでしょうか? 確かに、彼に護衛任務を与えても問題無いのですが」
「俺がラピス君を指名した意味が分からないということか?」
「おっしゃる通りです」
目の前にいる御仁の思惑が分からないフェビルは、表情を一切崩さないルベルに対して問い質す。
すると、ルベルが小さく笑みを浮かべて答える。
「まぁ、端的に言えば『年寄りのお節介』みたいなやつなんだが、実は……」
そこから、ルベルはフェビルと彼の傍でずっと控えていたグレアに、カトレアに護衛の任を与えた経緯について話す。
◇◇◇◇◇
「……なるほど。つまり、噂の渦中の人物にいるカトレア嬢も守るという意味で、うちのラピスを指名したってわけですね?」
「そういうことだ」
ルベルの話を聞いて納得したフェビル。
それを見て、ルベルは安堵の溜息をつく。
「まぁ、こちらとしては文官につく近衛騎士なら誰でも良いんだが……先の一件で、カトレアもそれなりに精神的に参っていてな」
そう言うと、ルベルはここ2週間のカトレアの様子を振り返る。
(なにせ、噂が出回り始めてから、カトレアを見れば誰もが彼女を見て噂する始末。一応、カトレア以外の部下達に噂に関する緘口令を布いているが……それも、ここ最近になって限界に来つつある)
険しい顔をしたルベルは、フェビルに懇願する。
「そう言う意味で、婚約者であるラピス君にカトレアの護衛役として彼女の傍にいて欲しい」
「そういうことでしたら、こちらとしては一向に構いません。なぁ、グレア?」
「はい。メストには私の方から説明します」
フェビルと同じくルベルの話に納得したグレアが頷くと、フェビルは小さく首を横に振る。
「いや、ラピスには俺から説明する。そっちの方が、あいつも気合が入るだろ」
「かしこまりました」
深々と頭を下げるグレアを見て、姿勢を正したグレアはフェビルに向かって頭を下げる。
「ありがとう、フェビル。感謝する」
「い、いえ……このくらい、たいしたことではありませんよ」
フェビルの気遣いに、再び安堵の笑みを浮かべたルベルはスッと笑みを潜める。
「それで、もう1つの頼み事なんだが……」
それは、フェビルとグレアにとって素直に頷けないものだった。
「そう言えば、宮廷魔法師団では今度、帝国に研究者達を派遣するんでしたね」
「あぁ、そこになぜか宰相閣下が首を突っ込んできて多少面倒なことになってしまったが」
「そのようですね」
(大方、帝国に行く宮廷魔法師団の動きが気に食わなかったのだろう)
ノルベルトの横暴に振り回され、心底うんざりしているルベルに、フェビルが思わず苦笑を漏らす。
すると、ルベルはニヤリと笑みを浮かべる。
「それでフェビル、その帝国に研究者達を派遣するにあたって、王国騎士団団長であるお前に2つ頼みたいことがある」
「2つですか?」
(何だか、嫌な予感がする)
眉を顰めながら首を傾げるフェビルに、ルベルは笑みを浮かべたまま人差し指を立てる。
「あぁ、まず1つ目。うちから研究者達を派遣するに伴い、宰相閣下から『文官をつけろ』と言ってきた。大方、監視役だと思うが……文官をつけるとなれば必ず護衛役の騎士がつくはずだ。もちろん、聞いているよな?」
「えぇ、つい先日ですが、国王陛下から書簡で『宮廷魔法師団に所属している研究者達に随行役として文官を派遣するため、その護衛としてうちから何人か出して欲しい』と命令が下されました」
「ほう、陛下からか」
(今や『お飾り』と呼ばれているあの国王陛下からフェビル宛に書簡で護衛任務の命を下すとは)
「はい。それでさっきそのことについてグレアと話そうと思っていました」
「そうだったのか」
(それなら丁度良かった)
フェビルの話を聞いて、ルベルが笑みを深める。
「それじゃあ、護衛を誰にするか決まっていないのだな?」
「そうですね……というより、ルベル団長。それと頼み事とは、一体何が関係するのですか?」
怪しむように眉を顰めたフェビルを見て、ルベルは笑みを浮かべたままソファーに深く腰掛ける。
「実は、研究者達の護衛役の中に、あの『稀代の天才魔法師様』であらせられるカトレア・ティブリーがいるんだ」
「えっ!? どうして、そんな大物を!?」
フェビルとグレアが驚いたように揃って目を見開くと、ルベルは気持ちを落ち着けるように紅茶を一口飲んだ。
「それはまぁ、後で話すとして……で、ここからが本題だ」
その瞬間、静かにティーカップを置いたルベルの顔から笑みが消え、鋭い眼光がフェビルとグレアを射貫く。
「うちからカトレアを出す。だから、そっちからは彼女の婚約者であらせられるラピス君を出して欲しい」
「ラピスを、ですか?」
「あぁ、そうだ」
真剣な表情で頼み込むルベルに、フェビルは少しだけ考え込む。
(ラピスは、今いる近衛騎士達の中で一番の若手であるが、『水と雷の中級魔法が使える』という剣ばかり優れている騎士団では珍しい逸材。だから、他の先輩騎士達を同じように文官の護衛任務はこなせるはず。しかし……)
「ルベル団長。返事をする前に、1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、良いぞ」
「どうして、ラピスなのでしょうか? 確かに、彼に護衛任務を与えても問題無いのですが」
「俺がラピス君を指名した意味が分からないということか?」
「おっしゃる通りです」
目の前にいる御仁の思惑が分からないフェビルは、表情を一切崩さないルベルに対して問い質す。
すると、ルベルが小さく笑みを浮かべて答える。
「まぁ、端的に言えば『年寄りのお節介』みたいなやつなんだが、実は……」
そこから、ルベルはフェビルと彼の傍でずっと控えていたグレアに、カトレアに護衛の任を与えた経緯について話す。
◇◇◇◇◇
「……なるほど。つまり、噂の渦中の人物にいるカトレア嬢も守るという意味で、うちのラピスを指名したってわけですね?」
「そういうことだ」
ルベルの話を聞いて納得したフェビル。
それを見て、ルベルは安堵の溜息をつく。
「まぁ、こちらとしては文官につく近衛騎士なら誰でも良いんだが……先の一件で、カトレアもそれなりに精神的に参っていてな」
そう言うと、ルベルはここ2週間のカトレアの様子を振り返る。
(なにせ、噂が出回り始めてから、カトレアを見れば誰もが彼女を見て噂する始末。一応、カトレア以外の部下達に噂に関する緘口令を布いているが……それも、ここ最近になって限界に来つつある)
険しい顔をしたルベルは、フェビルに懇願する。
「そう言う意味で、婚約者であるラピス君にカトレアの護衛役として彼女の傍にいて欲しい」
「そういうことでしたら、こちらとしては一向に構いません。なぁ、グレア?」
「はい。メストには私の方から説明します」
フェビルと同じくルベルの話に納得したグレアが頷くと、フェビルは小さく首を横に振る。
「いや、ラピスには俺から説明する。そっちの方が、あいつも気合が入るだろ」
「かしこまりました」
深々と頭を下げるグレアを見て、姿勢を正したグレアはフェビルに向かって頭を下げる。
「ありがとう、フェビル。感謝する」
「い、いえ……このくらい、たいしたことではありませんよ」
フェビルの気遣いに、再び安堵の笑みを浮かべたルベルはスッと笑みを潜める。
「それで、もう1つの頼み事なんだが……」
それは、フェビルとグレアにとって素直に頷けないものだった。
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