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第3章 木こりは距離を縮め、宮廷魔法師は陥れられる
第183話 久しぶりの夜会で①
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メストがカミルに夜会のことを話した3日後の夜。
メスト・シトリン・ラピス・カトレアの4人は、王城の大ホールで開かれている夜会に参加していた。
「何か、久しぶりに夜会へ来たけど、こんなに煌びやかで賑やかだった?」
「さぁな、俺も久しぶりに来たからよく分からない」
「自分も久しぶりに来ましたので……」
ドレスコードに身を包んだ4人が会場に入ると、一際大きなシャンデリアの灯りが照らす豪華絢爛に装飾された大ホールと、贅を尽くしたドレスコードを着ている貴族達が王宮御用達の楽団の華やかな演奏を聞きながら談笑している様子が目に飛び込んできた。
細やかなところまで豪奢に装飾された会場に4人が圧倒されていると、ふとシトリンが心配そうな顔で呆然としているメストに目を向ける。
「でも、本当に良かったの? 主催者である彼女のエスコートをしなくても?」
「あ、あぁ……招待状に『私のエスコートは結構ですので、メスト様はカトレア達と一緒に来てください!』とご丁寧に書いてあった」
「あ、そういうこと」
(婚約者をエスコート役として呼ばないって、普通だったらありえないんだけどねぇ)
ダリアの非常識さにシトリンは思わず苦笑いを浮かべると、ラピスと一緒に呆然とした表情で会場を見つめるカトレアに視線を移す。
「確か、今回の夜会って、帝国に派遣されるラピスとカトレア嬢の壮行会を兼ねたものだよね?」
「はい。ダリアからの手紙にはそう書いてありました」
(急に言われたからとても驚いたけど……まさか、自分達のために夜会を開いてくれるなんて思いも寄らなかったわ)
「大方、夜会を開きたい口実が欲しかっただけなのでしょうけど」
そう呟いて、夜会の主催であるダリアが主役の迎えに来ていないことに、僅かながら怒りを覚えるカトレアが会場に視線を戻すと、シトリンの視線が再びメストに向けられる。
「それにしても、王城で一番大きいホールを貸し切って夜会を開くなんて……さすが、宰相家令嬢といったところ?」
「そ、そうだな」
(俺も招待状で会場の場所を目にした時は、思わず二度見をしてしまったが)
「でもさぁ、改めて思うけど夜会にしては随分と煌びやか……というより、ものすごく派手だよね」
「あ、それは自分もそう思いました。それと、ここに集まっている貴族の令息達や令嬢達の服も、貴族としての品よりも派手さに重きを置いているように感じました」
そう言って、貴族令息の3人は、夜会に参加している貴族達のドレスコードに思わず眉を顰める。
楽団の演奏を聞きながら貴族令嬢と談笑している貴族令息は皆、首元をだらしなく緩めて着崩し、派手な色や豪華に装飾されたフロックコートに身を包んでいた。
そして、そんな貴族令息と話している貴族令嬢達は皆、宝石が散りばめられ、フリルがふんだんに使われた膝丈でノースリーブの派手なドレスを着ていた。
「その結果、随分と品の無い夜会に見えるのだが」
「メスト。仮にもここは王城で、今回の夜会を主催は君の婚約者なんだから少しは口を慎んだ方が良いと思うよ」
「副隊長……いえ、シトリン殿。『仮』ではなく、ここは間違いなく王城です」
貴族の夜会とは思えない品の無い服に身を包む貴族達に、メスト達が辛辣な感想を口にしている中、ラピスの隣で金色の刺繡が施された瑠璃色の肌をほどんど見せない上品なドレスを着ていたカトレアは、自分の知っている夜会とは明らかに違う夜会に不快感を示す。
◇◇◇◇◇
「本当、何これ?」
(紳士らしい誠実さを示さないといけないはずの貴族令息が首元をだらしなく緩めていたり、婚約者以外みだらに肌を見せてはいけないはずの貴族令嬢が何の恥じらいも無く膝丈のドレスを着ていたり……こんなの、こんなの私が知っている夜会じゃないわ!)
貴族らしい品が無い夜会に、カトレアがメスト達と同様に眉を顰めると、人混みの中から夜会の主催が現れる。
「『何これ?』って、帝国に行くカトレアとラピスを激励するための夜会よ!」
「「ダリア!!」」
思わず声を上げたメストとカトレアの視線の先には、膝丈で胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着こなすダリアがいた。
「お久しぶりです、メスト様。わざわざ私の主催する夜会に来て下さり、ありがとうございます」
「あ、あぁ……婚約者が主催の夜会に呼ばれたからな、婚約者としては当たり前だろ?」
「まぁ、そうでしたわ~!」
(『そうでしたわ』って、俺はダリアの婚約者じゃなかったのか?)
思い出したかのように手を叩いて嬉しそうに笑うダリアに、メストは益々眉を顰める。
だが、彼女が着ているドレスを視界に入り、メストは『見てはいけない!』と慌てて視線を逸らす。
「そ、それにしてもダリア」
「何でしょう? メスト様?」
「今回のドレスは……何と言うか、少々派手ではないのか? 一応、今回の主役はカトレアとラピスなのだから」
「もちろん、知っていますよ! ですから、今回は割と地味なドレスを選んだのです!」
「そ、そうなのか?」
(どこからどう見ても派手にしか見えないのだが……そもそも)
「だがこの前、婚約者として夜会に参加するから、インベック公爵家に夜会用のドレスを送ったのだが……もしかして、届いていなかったのか?」
「いえ、ちゃんと届きましたよ」
「だったら、どうしてそれを着て来なかったんだ?」
(婚約者が参加しているのだから、ここで2人の仲の良さを見せて周囲の貴族を牽制するためにも、婚約者の色に合わせたドレスやアクセサリーを着るのが普通じゃないのか? 俺だって、ダリアの髪と瞳の色に合わせて喪服にならない程度の黒の礼服に赤のカフスボタンをつけているのに)
送ったドレスを着て来なかったダリアに、僅かに苛立ちを覚えたメストは咎めるような声で静かに問い質す。
すると、贈られたドレスを思い出したのか、『あっ』とダリアが小さな声を上げると、メストが贈っていたドレスを着なかった理由をあっけらかんとした表情で答える。
「あれでしたら、あまりにも色味が地味すぎて、着ていくのが恥ずかしかったので着ませんでした」
「…………」
(目の前にいる女は、本当に俺の婚約者なのだろうか?)
これが『直前になってドレスが破けたから着てこられなかった』という理由なら、メストも『それなら仕方ない』と納得しただろう。
だが、『色味が地味ながら着てこなかった』という婚約者がいる貴族令嬢にしてはあまりにも身勝手すぎる理由に、さすがのメストも怒りを通り越して疑問を覚えてしまった。
メスト・シトリン・ラピス・カトレアの4人は、王城の大ホールで開かれている夜会に参加していた。
「何か、久しぶりに夜会へ来たけど、こんなに煌びやかで賑やかだった?」
「さぁな、俺も久しぶりに来たからよく分からない」
「自分も久しぶりに来ましたので……」
ドレスコードに身を包んだ4人が会場に入ると、一際大きなシャンデリアの灯りが照らす豪華絢爛に装飾された大ホールと、贅を尽くしたドレスコードを着ている貴族達が王宮御用達の楽団の華やかな演奏を聞きながら談笑している様子が目に飛び込んできた。
細やかなところまで豪奢に装飾された会場に4人が圧倒されていると、ふとシトリンが心配そうな顔で呆然としているメストに目を向ける。
「でも、本当に良かったの? 主催者である彼女のエスコートをしなくても?」
「あ、あぁ……招待状に『私のエスコートは結構ですので、メスト様はカトレア達と一緒に来てください!』とご丁寧に書いてあった」
「あ、そういうこと」
(婚約者をエスコート役として呼ばないって、普通だったらありえないんだけどねぇ)
ダリアの非常識さにシトリンは思わず苦笑いを浮かべると、ラピスと一緒に呆然とした表情で会場を見つめるカトレアに視線を移す。
「確か、今回の夜会って、帝国に派遣されるラピスとカトレア嬢の壮行会を兼ねたものだよね?」
「はい。ダリアからの手紙にはそう書いてありました」
(急に言われたからとても驚いたけど……まさか、自分達のために夜会を開いてくれるなんて思いも寄らなかったわ)
「大方、夜会を開きたい口実が欲しかっただけなのでしょうけど」
そう呟いて、夜会の主催であるダリアが主役の迎えに来ていないことに、僅かながら怒りを覚えるカトレアが会場に視線を戻すと、シトリンの視線が再びメストに向けられる。
「それにしても、王城で一番大きいホールを貸し切って夜会を開くなんて……さすが、宰相家令嬢といったところ?」
「そ、そうだな」
(俺も招待状で会場の場所を目にした時は、思わず二度見をしてしまったが)
「でもさぁ、改めて思うけど夜会にしては随分と煌びやか……というより、ものすごく派手だよね」
「あ、それは自分もそう思いました。それと、ここに集まっている貴族の令息達や令嬢達の服も、貴族としての品よりも派手さに重きを置いているように感じました」
そう言って、貴族令息の3人は、夜会に参加している貴族達のドレスコードに思わず眉を顰める。
楽団の演奏を聞きながら貴族令嬢と談笑している貴族令息は皆、首元をだらしなく緩めて着崩し、派手な色や豪華に装飾されたフロックコートに身を包んでいた。
そして、そんな貴族令息と話している貴族令嬢達は皆、宝石が散りばめられ、フリルがふんだんに使われた膝丈でノースリーブの派手なドレスを着ていた。
「その結果、随分と品の無い夜会に見えるのだが」
「メスト。仮にもここは王城で、今回の夜会を主催は君の婚約者なんだから少しは口を慎んだ方が良いと思うよ」
「副隊長……いえ、シトリン殿。『仮』ではなく、ここは間違いなく王城です」
貴族の夜会とは思えない品の無い服に身を包む貴族達に、メスト達が辛辣な感想を口にしている中、ラピスの隣で金色の刺繡が施された瑠璃色の肌をほどんど見せない上品なドレスを着ていたカトレアは、自分の知っている夜会とは明らかに違う夜会に不快感を示す。
◇◇◇◇◇
「本当、何これ?」
(紳士らしい誠実さを示さないといけないはずの貴族令息が首元をだらしなく緩めていたり、婚約者以外みだらに肌を見せてはいけないはずの貴族令嬢が何の恥じらいも無く膝丈のドレスを着ていたり……こんなの、こんなの私が知っている夜会じゃないわ!)
貴族らしい品が無い夜会に、カトレアがメスト達と同様に眉を顰めると、人混みの中から夜会の主催が現れる。
「『何これ?』って、帝国に行くカトレアとラピスを激励するための夜会よ!」
「「ダリア!!」」
思わず声を上げたメストとカトレアの視線の先には、膝丈で胸元が大胆に開いた真っ赤なドレスを着こなすダリアがいた。
「お久しぶりです、メスト様。わざわざ私の主催する夜会に来て下さり、ありがとうございます」
「あ、あぁ……婚約者が主催の夜会に呼ばれたからな、婚約者としては当たり前だろ?」
「まぁ、そうでしたわ~!」
(『そうでしたわ』って、俺はダリアの婚約者じゃなかったのか?)
思い出したかのように手を叩いて嬉しそうに笑うダリアに、メストは益々眉を顰める。
だが、彼女が着ているドレスを視界に入り、メストは『見てはいけない!』と慌てて視線を逸らす。
「そ、それにしてもダリア」
「何でしょう? メスト様?」
「今回のドレスは……何と言うか、少々派手ではないのか? 一応、今回の主役はカトレアとラピスなのだから」
「もちろん、知っていますよ! ですから、今回は割と地味なドレスを選んだのです!」
「そ、そうなのか?」
(どこからどう見ても派手にしか見えないのだが……そもそも)
「だがこの前、婚約者として夜会に参加するから、インベック公爵家に夜会用のドレスを送ったのだが……もしかして、届いていなかったのか?」
「いえ、ちゃんと届きましたよ」
「だったら、どうしてそれを着て来なかったんだ?」
(婚約者が参加しているのだから、ここで2人の仲の良さを見せて周囲の貴族を牽制するためにも、婚約者の色に合わせたドレスやアクセサリーを着るのが普通じゃないのか? 俺だって、ダリアの髪と瞳の色に合わせて喪服にならない程度の黒の礼服に赤のカフスボタンをつけているのに)
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すると、贈られたドレスを思い出したのか、『あっ』とダリアが小さな声を上げると、メストが贈っていたドレスを着なかった理由をあっけらかんとした表情で答える。
「あれでしたら、あまりにも色味が地味すぎて、着ていくのが恥ずかしかったので着ませんでした」
「…………」
(目の前にいる女は、本当に俺の婚約者なのだろうか?)
これが『直前になってドレスが破けたから着てこられなかった』という理由なら、メストも『それなら仕方ない』と納得しただろう。
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