木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国

第208話 手紙と約束

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「ねぇ、それ本気で言っている?」
「「っ!?」」


 鋭い目つきで冷たい表情をするマーザスを見て、カトレアとラピスが揃って顔を強張らせた。
 そんな2人の表情に、マーザスが深く溜息とつくと纏っていた剣吞とした雰囲気を一気に緩ませた。


「まぁ、今の君たちの言葉が、君たちの言葉じゃないのは分かっているんだけど……あまりいい気分はしないね」
「「もっ、申し訳ございませんでした……」」


 深々と頭を下げたカトレアとラピスに、小さく溜息をついたマーザスが片手をひらひらさせた。


「良いよ、別に。でもまぁ、カトレア君の方は……はっきり言ってだね」
「えっ?」


 (私のどこが重症なのよ!?)

 マーザスの何かを憐れむような視線とかち合ったカトレアは、僅かに眉を顰めた。
 すると、再び小さく溜息をついたマーザスが姿勢を正した。


「それよりも、君たちは確か、僕宛の手紙を預かっているよね?」
「あっ、はい」


 (それにしても、さっきのマーザス様のピリつくような雰囲気は何だったの? 魔道具のことで怒ったのは間違いないけど……真っ当な意見を言っただけなのに、どうして怒ったのかしら?)

 先程のマーザスの豹変ぶりをカトレアは内心不思議に思いつつ、懐からマクシェルから預かった封筒を取り出して、そのままマーザスに差し出した。


「こちらです」
「ありがとう……へぇ~、ペトロート王国の王族にしか使えない刻印付きとは、これはまた随分とをしたね」


 封筒を受け取ったマーザスは、とても楽しそうな笑みを浮かべながら、テーブルの上にあるペーパーナイフで開封した。
 そして、手紙を取り出したマーザスは、笑みを浮かべたまま目を通した。


「ふむふむ……ふ~ん、なるほどねぇ~」


 時折カトレアとラピスを一瞥しつつ、楽しそうに読むマーザス。
 そんな彼を見て、カトレアは思わず眉を顰めた。


 (一体、何が書かれていたのかしら? もちろん、1宮廷魔法師でしかない私が、王族印が押された手紙を見れないのは分かっているけど)


「……うん、分かった。がそう言うのなら、あの日、僕が君から預かった物を彼らに託して返そう。でもまぁ、僕が持っていても宝の持ち腐れなんだけど」


 手紙を一通り読み終えたマーザスは、綺麗に手紙を封に戻すと真剣な面持ちで待っていたカトレアとラピスに目を向けた。


「さて、君たちは僕が預かっている杖を取りにここに来たんだったね?」
「はい、そうです」


 軽く頷いたカトレアに、マーザスは優しく微笑むとソファーから立ち上がった。


「了解。それじゃあ、君たちに託そう……僕のであり、大事なから預かった大事な杖を」




「え~っと、確か……あった! これだこれ!」


 部屋の奥に置かれていた、鉄製の細長いクローゼットから何かを取り出したマーザスは、魔力を通してクローゼットと閉じると、そのまま杖を持ってソファーに戻った。


「あの、マーザス様。こちらが……」
「うん、僕の大親友であり弟弟子から預かった杖さ」


 満足げな笑みを浮かべたマーザスが持ってきたのは、片手で振るうにはとても大きすぎる銀色の杖だった。

 (普段使い出来ないような大きさの杖ね。だけど……


「魔法陣がたくさん刻まれていますね?」


 マーザスが膝の上で横に置いてもソファーから余裕ではみ出している杖には、いくつもの魔法陣が刻まれていた。

 (見たことがない魔法陣もあるけど、見たことがある魔法陣はどれも……)

 杖に熱い視線を向けるカトレアに、マーザスは膝の上にある杖を優しく撫でた。


「そうだね。君も宮廷魔法師なら当然気づいているとは思うけど……これは、非属性魔法がたくさん付与された杖なんだよ」
「っ!?」


 絶句しているラピスの隣で、カトレアは険しい表情で杖に刻まれている魔法陣を凝視した。


「収納魔法に転移魔法に治癒魔法……確かに、どれも非属性魔法ですね」
「でしょう! 僕も初めて見た時はとても驚いたよ!」


 横にしていた杖を自慢げに立てたマーザスに対し、カトレアは更に杖を観察した。


「それに、これだけの魔法陣が刻まれているにも関わらず、反発が一切起きないなんて……普通、相性の悪い魔法陣が近くにある場合、反発が起きて魔道具として成立しませんよね?」
「そうだね。でも、弟弟子が作ったこの杖は、反発が一切起きていない。つまり、何かしら細工を施して、反発を起きないようにしているってわけだよ! 本当にすごい! 魔道具に携わっている者としては、是非ともこの杖の作り方を教えて欲しい!」
「私も、是非とも教えて欲しいです」


 (あわよくば、この杖を作った人に弟子入りしたい!)

 いつの間にか目を輝かせているカトレアに、マーザスの表情が少しだけ寂しいものなった。
 そうして、小さく呟いた。


「君は、そのなんだけどね」
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