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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第209話 弟弟子の弟子
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※途中でカトレア視点が入ります。
「私が、マーザス様の弟弟子様の弟子?」
(この私に、師匠がいたの?)
マーザスの言葉に啞然するカトレア。
そんな彼女を見て、マーザスはどこか憂いを含んだ笑みを浮かべて頷いた。
「うん、今の君には信じてもらえないかもしれないけど……君は、僕の親友であり弟弟子の弟子だったんだよ」
「私の、師匠……」
(『王国の主砲』と謳われたティブリー家は、代々当主から魔法を教わる。だから、私が父以外の誰かに魔法を教わることは無いはず……)
愕然とした表情で銀色の杖を視界に入れたカトレアは、静かに俯くと片手で顔の半分を覆った。
「いや~、初めて聞いた時は本当に驚いたよ。まさか、あの魔法と家族にしか興味がない親友が、弟子を取るなんて信じられ……」
「いつ」
「ん?」
「いつ、その方から魔法を教わったのでしょうか?」
ゆっくりと顔を上げたカトレアに、マーザスは思い出すように顎に手を添えて小首を傾げた。
「親友から聞いた話だと、確か……彼が10歳時、とあるお茶会で彼の妹さんに幼い君が絡んでいた時に知り合ったって」
「私が、お茶会で妹さんに絡んでいた?」
「うん。彼の妹さんと君は同い年だったみたいだけど……幼い時の君、本当に恐れ知らずだったらしいね。何せ、公爵令嬢って知っていて、尊大な態度ととって絡んだらしいから」
「ええっ!?」
幼い頃の自分の行動に、カトレアは顔を引き攣らせた。
(公爵令嬢に対して、尊大な態度をとっていた!? 小さい頃の私、バカじゃないの!? というか……)
「私の師匠、公爵家の方だったのですか?」
「あぁ、そうだよ。公爵家の次男だったはず」
すると、顎に手をあてるのを止めたマーザスが、カトレアに意味深の笑みを向けた。
「そして、王国では『稀代の天才魔法師』って呼ばれていたよ」
「稀代の、天才魔法師?」
「そう、彼はその2つ名を随分と嫌がっていたけど、家族は大層喜んでいたみたいだよ」
聞き覚えのある2つ名に、カトレアは不快を示すように眉を顰めた。
(その肩書って、私が国王陛下から賜った……)
その時、眉を顰めたカトレアの脳裏に在りし日の記憶が蘇った。
『師匠! 最年少での宮廷魔法師団入り、おめでとうございます!』
『ありがとう』
淡い緑色の長い髪を一纏めにしていたその人は、真っ白なローブを身に纏い、いつもの生真面目な顔を崩すと、少しだけ照れくさそうな顔で私からのお祝いの言葉を受け取っていた。
『すごいですね! 師匠! 宮廷魔法師団入りのみならす、『稀代の天才魔法師』という2つ名を国王陛下から賜ったなんて!』
『やめてくれ、その2つ名は好きじゃないんだ』
国王陛下から賜った2つ名に、銀色の瞳を細めたその人は心底嫌そうな顔をした。
そんな彼に、拳を握った私は魔法師としての誓いを立てた。
『私、いつか絶対、師匠のような宮廷魔法師になります! だって、師匠の一番弟子ですら!』
私の立派な誓いを聞いたその人は、再び表情を崩した。
『フッ、そうか。それならまずは、苦手な属性魔法の魔力を安定させないと』
『うっ!!』
いつもは眉間に皺を寄せている師匠の小さな笑みに、私は酷く嫌な顔をしつつも少しだけ口角を上げた。
そうだ、私には師匠がいて……
「うっ!!」
「カトレア!!」
「っ!?」
突如襲った頭が割れるような痛みに、苦悶の表情を浮かべたカトレアは咄嗟に頭を抑えた。
そして、隣にいたラピスが、前のめりに倒れそうになったカトレアの体を支えた。
(どうしてだ? どうして、カトレア君にかけられた魔法が解けかかっているんだ? あいつからは、家族の誰かがカトレア君に接触したなんて報告を受けていない。それに、杖が無い状態で、あいつが危険を省みずに魔法を解かすとは思えない。だとしたら、この状態は一体……)
「って、今は考えている場合じゃないね!」
激しい頭痛に苦しみカトレアに、一瞬気を取られていたマーザスは、手に持っていた杖を強く握りしめると、そのままカトレアに向けて構えた。
「マーザス殿!! カトレアに対して、一体何を……」
「ごめん、カトレア君を救いたいなら少しだけ黙って」
「っ!?」
真剣な表情で杖を構えるマーザスの有無を言わせない雰囲気に、一瞬体を強張らせたラピスは静かに口を閉じると、痛みに耐えるカトレアの体を支えた。
「全く、こんな扱いづらいことこの上ない物は、制作者である彼にしか使えないんだけど……行くよ、《ヒール》」
杖に刻まれた無数の魔法陣の1つが淡く光ると、冷や汗を掻いて苦しんでいたカトレアの表情を次第に緩んでいった。
「ふぅ、何とか成功したみたいだね」
「あり、がとう、ござい、ます。マーザス、様」
「良いよ、無理して喋らなくても。しばらくは、隣にいる騎士……ラピス君に支えてもらって」
「はっ、はい……」
ラピスに体を預けたカトレアを見て、安堵の溜息をついたマーザスは持っていた杖を膝の上に置いた。
(それにしても……)
ラピスに体を預けているカトレアに対し、マーザスは前かがみの姿勢になると、カトレアのことを観察するように凝視した。
「あの、マーザス殿……」
「それにしても、本当にすごいね。君たちにかけられている『改竄《かいざん》魔法』は」
「「っ!?」」
マーザスが何気なく放った一言は、2人の表情が一気に強張らせるには十分だった。
「私が、マーザス様の弟弟子様の弟子?」
(この私に、師匠がいたの?)
マーザスの言葉に啞然するカトレア。
そんな彼女を見て、マーザスはどこか憂いを含んだ笑みを浮かべて頷いた。
「うん、今の君には信じてもらえないかもしれないけど……君は、僕の親友であり弟弟子の弟子だったんだよ」
「私の、師匠……」
(『王国の主砲』と謳われたティブリー家は、代々当主から魔法を教わる。だから、私が父以外の誰かに魔法を教わることは無いはず……)
愕然とした表情で銀色の杖を視界に入れたカトレアは、静かに俯くと片手で顔の半分を覆った。
「いや~、初めて聞いた時は本当に驚いたよ。まさか、あの魔法と家族にしか興味がない親友が、弟子を取るなんて信じられ……」
「いつ」
「ん?」
「いつ、その方から魔法を教わったのでしょうか?」
ゆっくりと顔を上げたカトレアに、マーザスは思い出すように顎に手を添えて小首を傾げた。
「親友から聞いた話だと、確か……彼が10歳時、とあるお茶会で彼の妹さんに幼い君が絡んでいた時に知り合ったって」
「私が、お茶会で妹さんに絡んでいた?」
「うん。彼の妹さんと君は同い年だったみたいだけど……幼い時の君、本当に恐れ知らずだったらしいね。何せ、公爵令嬢って知っていて、尊大な態度ととって絡んだらしいから」
「ええっ!?」
幼い頃の自分の行動に、カトレアは顔を引き攣らせた。
(公爵令嬢に対して、尊大な態度をとっていた!? 小さい頃の私、バカじゃないの!? というか……)
「私の師匠、公爵家の方だったのですか?」
「あぁ、そうだよ。公爵家の次男だったはず」
すると、顎に手をあてるのを止めたマーザスが、カトレアに意味深の笑みを向けた。
「そして、王国では『稀代の天才魔法師』って呼ばれていたよ」
「稀代の、天才魔法師?」
「そう、彼はその2つ名を随分と嫌がっていたけど、家族は大層喜んでいたみたいだよ」
聞き覚えのある2つ名に、カトレアは不快を示すように眉を顰めた。
(その肩書って、私が国王陛下から賜った……)
その時、眉を顰めたカトレアの脳裏に在りし日の記憶が蘇った。
『師匠! 最年少での宮廷魔法師団入り、おめでとうございます!』
『ありがとう』
淡い緑色の長い髪を一纏めにしていたその人は、真っ白なローブを身に纏い、いつもの生真面目な顔を崩すと、少しだけ照れくさそうな顔で私からのお祝いの言葉を受け取っていた。
『すごいですね! 師匠! 宮廷魔法師団入りのみならす、『稀代の天才魔法師』という2つ名を国王陛下から賜ったなんて!』
『やめてくれ、その2つ名は好きじゃないんだ』
国王陛下から賜った2つ名に、銀色の瞳を細めたその人は心底嫌そうな顔をした。
そんな彼に、拳を握った私は魔法師としての誓いを立てた。
『私、いつか絶対、師匠のような宮廷魔法師になります! だって、師匠の一番弟子ですら!』
私の立派な誓いを聞いたその人は、再び表情を崩した。
『フッ、そうか。それならまずは、苦手な属性魔法の魔力を安定させないと』
『うっ!!』
いつもは眉間に皺を寄せている師匠の小さな笑みに、私は酷く嫌な顔をしつつも少しだけ口角を上げた。
そうだ、私には師匠がいて……
「うっ!!」
「カトレア!!」
「っ!?」
突如襲った頭が割れるような痛みに、苦悶の表情を浮かべたカトレアは咄嗟に頭を抑えた。
そして、隣にいたラピスが、前のめりに倒れそうになったカトレアの体を支えた。
(どうしてだ? どうして、カトレア君にかけられた魔法が解けかかっているんだ? あいつからは、家族の誰かがカトレア君に接触したなんて報告を受けていない。それに、杖が無い状態で、あいつが危険を省みずに魔法を解かすとは思えない。だとしたら、この状態は一体……)
「って、今は考えている場合じゃないね!」
激しい頭痛に苦しみカトレアに、一瞬気を取られていたマーザスは、手に持っていた杖を強く握りしめると、そのままカトレアに向けて構えた。
「マーザス殿!! カトレアに対して、一体何を……」
「ごめん、カトレア君を救いたいなら少しだけ黙って」
「っ!?」
真剣な表情で杖を構えるマーザスの有無を言わせない雰囲気に、一瞬体を強張らせたラピスは静かに口を閉じると、痛みに耐えるカトレアの体を支えた。
「全く、こんな扱いづらいことこの上ない物は、制作者である彼にしか使えないんだけど……行くよ、《ヒール》」
杖に刻まれた無数の魔法陣の1つが淡く光ると、冷や汗を掻いて苦しんでいたカトレアの表情を次第に緩んでいった。
「ふぅ、何とか成功したみたいだね」
「あり、がとう、ござい、ます。マーザス、様」
「良いよ、無理して喋らなくても。しばらくは、隣にいる騎士……ラピス君に支えてもらって」
「はっ、はい……」
ラピスに体を預けたカトレアを見て、安堵の溜息をついたマーザスは持っていた杖を膝の上に置いた。
(それにしても……)
ラピスに体を預けているカトレアに対し、マーザスは前かがみの姿勢になると、カトレアのことを観察するように凝視した。
「あの、マーザス殿……」
「それにしても、本当にすごいね。君たちにかけられている『改竄《かいざん》魔法』は」
「「っ!?」」
マーザスが何気なく放った一言は、2人の表情が一気に強張らせるには十分だった。
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