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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第226話 前インベック伯爵
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「その場で、改竄魔法をかけたのですか?」
呆然とする宰相の横で、険しい顔をしながら玉座に座る皇帝に対し、レクシャは静かに首を縦に振った。
「はい。前インベック伯爵から聞いたので間違いないかと」
「はっ?」
(『前インベック伯爵から聞いた』? 息子の改竄魔法で傀儡になったはずなのに、どういうことだ?)
レクシャの言葉に皇帝が眉を顰めると、現実に帰ってきた宰相が同じく眉を顰めながら問い質した。
「レクシャ殿、前インベック伯爵様から聞いたとはどういうことでしょうか? 確か彼は、当主の座を息子に渡した瞬間、改竄魔法をかけられ、息子の駒に成り下がったのですよね?」
「そうですが」
「でしたら、どうして『彼から聞いた』ということが出来たのですか?」
(そうだ。改竄魔法で息子の駒になったということは、前インベック伯爵は改竄魔法にかかった時点で廃人になり、考える自我を無くしたということだ。だから、彼がこの腹黒宰相に何かを伝えるということ自体、不可能なはず)
険しい目で目の前にいる腹黒宰相を見つめる皇帝。
すると、レクシャは懐から手紙を取り出した。
「レクシャ殿、そちらは?」
「こちらは、インベック家の代替わりが行われる前の日に、前インベック伯爵が私宛に送った手紙であります」
「……本当に、そやつは息子の愚かさを分かっていたのだな」
「はい」
レクシャの取り出した手紙には、息子が当主の座についた瞬間、自分と次男に改竄魔法をかけ……そして、数日中にインベック家が管理している魔法陣を使い、国民全員に改竄魔法をかけることが記されていた。
「だが、そこまで分かっていてどうして食い止められなかった? 貴様のことだ、どうせそやつとは手紙が送られる前に何度もやり取りはしているのだろう?」
「はい、そうです」
「だとしたら、証拠だって大分揃っていたはずだ。そうなれば、手紙が届いた時にその愚か者を捕縛することくらい容易いことだろう?」
「そうですね……私が奴の狡猾さを見誤っていなければ」
「えっ?」
(そう、あの時の私は、ノルベルトの強欲さと狡猾さを甘くみていた)
表情を歪ませたレクシャは、拳を握ると大きく息を吐き、皇帝と宰相の方にゆっくりと視線を戻した。
「手紙を受け取った翌日、私は国王陛下にこのことを伝えた上で、ノルベルトを捕縛して尋問しようと、朝早くに王城へと向かいました」
「王城に? どうして真っ先に屋敷には行かなかった?」
「もちろん、そちらにいくことも考えました。ですが、使用人達も奴の改竄魔法で駒になっている可能性もありましたから、下手に屋敷に行くよりかは……」
「つまり、敵しかいない屋敷より、敵が少ない王城で奴を捕えようとしたのか?」
「そうです。それに、陛下もこのことを重く受け止めていらっしゃいましたから、真っ先にお伝えした方が良いかと判断しました。ですが……」
(それすらも、今にして思えば無駄だった)
その時のことを思い出したレクシャの目には、段々と憎悪が宿り始めた。
「私が王城に来た瞬間、城の警備をしていた騎士達が突然、私を捕縛したのです」
「なにっ!?」
(宰相であるレクシャを捕縛したということは、その時には既に……!?)
驚いた表情で玉座から立ち上がった皇帝に対し、レクシャは何かを堪えながら話を続けた。
「どうやらノルベルトは、当主の座を引き継ぐ前に、王城にいた者全員に改竄魔法をかけたらしく、私が来た頃にはもう……」
「そんな……」
(レクシャ殿が動かれる前に、王城が既に愚か者の手に落ちてしまったということなのか)
言葉を失う宰相の隣で、ゆっくりと腰を下ろした皇帝がひじ掛けに頬杖をついた。
「それで、改竄魔法にもかかっていない貴様が、こうして我々の前で無事でいるということは……レクシャ、貴様の身に何かあったのだろう?」
「はい。突然のことで抵抗できなかった私は、あっさりと騎士達に手足を拘束されました。その時、ノルベルトが私のもとに現れて、私に宰相の座を明け渡すように言ってきたのです」
『私に、宰相の座を明け渡してください』
レクシャの脳裏に蘇ったノルベルトの顔。
その下卑た笑みに、レクシャは奥歯を噛み締めた。
呆然とする宰相の横で、険しい顔をしながら玉座に座る皇帝に対し、レクシャは静かに首を縦に振った。
「はい。前インベック伯爵から聞いたので間違いないかと」
「はっ?」
(『前インベック伯爵から聞いた』? 息子の改竄魔法で傀儡になったはずなのに、どういうことだ?)
レクシャの言葉に皇帝が眉を顰めると、現実に帰ってきた宰相が同じく眉を顰めながら問い質した。
「レクシャ殿、前インベック伯爵様から聞いたとはどういうことでしょうか? 確か彼は、当主の座を息子に渡した瞬間、改竄魔法をかけられ、息子の駒に成り下がったのですよね?」
「そうですが」
「でしたら、どうして『彼から聞いた』ということが出来たのですか?」
(そうだ。改竄魔法で息子の駒になったということは、前インベック伯爵は改竄魔法にかかった時点で廃人になり、考える自我を無くしたということだ。だから、彼がこの腹黒宰相に何かを伝えるということ自体、不可能なはず)
険しい目で目の前にいる腹黒宰相を見つめる皇帝。
すると、レクシャは懐から手紙を取り出した。
「レクシャ殿、そちらは?」
「こちらは、インベック家の代替わりが行われる前の日に、前インベック伯爵が私宛に送った手紙であります」
「……本当に、そやつは息子の愚かさを分かっていたのだな」
「はい」
レクシャの取り出した手紙には、息子が当主の座についた瞬間、自分と次男に改竄魔法をかけ……そして、数日中にインベック家が管理している魔法陣を使い、国民全員に改竄魔法をかけることが記されていた。
「だが、そこまで分かっていてどうして食い止められなかった? 貴様のことだ、どうせそやつとは手紙が送られる前に何度もやり取りはしているのだろう?」
「はい、そうです」
「だとしたら、証拠だって大分揃っていたはずだ。そうなれば、手紙が届いた時にその愚か者を捕縛することくらい容易いことだろう?」
「そうですね……私が奴の狡猾さを見誤っていなければ」
「えっ?」
(そう、あの時の私は、ノルベルトの強欲さと狡猾さを甘くみていた)
表情を歪ませたレクシャは、拳を握ると大きく息を吐き、皇帝と宰相の方にゆっくりと視線を戻した。
「手紙を受け取った翌日、私は国王陛下にこのことを伝えた上で、ノルベルトを捕縛して尋問しようと、朝早くに王城へと向かいました」
「王城に? どうして真っ先に屋敷には行かなかった?」
「もちろん、そちらにいくことも考えました。ですが、使用人達も奴の改竄魔法で駒になっている可能性もありましたから、下手に屋敷に行くよりかは……」
「つまり、敵しかいない屋敷より、敵が少ない王城で奴を捕えようとしたのか?」
「そうです。それに、陛下もこのことを重く受け止めていらっしゃいましたから、真っ先にお伝えした方が良いかと判断しました。ですが……」
(それすらも、今にして思えば無駄だった)
その時のことを思い出したレクシャの目には、段々と憎悪が宿り始めた。
「私が王城に来た瞬間、城の警備をしていた騎士達が突然、私を捕縛したのです」
「なにっ!?」
(宰相であるレクシャを捕縛したということは、その時には既に……!?)
驚いた表情で玉座から立ち上がった皇帝に対し、レクシャは何かを堪えながら話を続けた。
「どうやらノルベルトは、当主の座を引き継ぐ前に、王城にいた者全員に改竄魔法をかけたらしく、私が来た頃にはもう……」
「そんな……」
(レクシャ殿が動かれる前に、王城が既に愚か者の手に落ちてしまったということなのか)
言葉を失う宰相の隣で、ゆっくりと腰を下ろした皇帝がひじ掛けに頬杖をついた。
「それで、改竄魔法にもかかっていない貴様が、こうして我々の前で無事でいるということは……レクシャ、貴様の身に何かあったのだろう?」
「はい。突然のことで抵抗できなかった私は、あっさりと騎士達に手足を拘束されました。その時、ノルベルトが私のもとに現れて、私に宰相の座を明け渡すように言ってきたのです」
『私に、宰相の座を明け渡してください』
レクシャの脳裏に蘇ったノルベルトの顔。
その下卑た笑みに、レクシャは奥歯を噛み締めた。
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