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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第229話 改竄(かいざん)魔法の弱点
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「して、改竄魔法の使用魔力に関係するとはどういうなんだ?」
笑みを潜めた皇帝からの問いに、杖をマジックバックに戻したマーザスは再び片膝をつくと口を開いた。
「はい。陛下や宰相閣下もご存じかと思いますが、改竄魔法とは術者の魔力と対象者の魔力を使い、対象者の記憶を術者によって改竄される魔法。そして、その改竄する記憶というものが、多ければ多いほど使用される魔力が多くなるのです」
「ほう」
感心する皇帝と静かに話を聞いている宰相とレクシャを一瞥し、マーザスは話を続ける。
「また、対象者と術者が使用する魔力の塩梅も大事になってきます」
「塩梅とは?」
「はい。対象者が術者に使用される魔力が多ければ多い程、改竄された記憶と使用された魔力の多さに対象者は自我を保てなくなり……最悪の場合、廃人になってしまいます」
「『廃人』か……」
(帝国にとっても、王国にとっても、最も嫌いとする言葉だな)
小さく溜息をついた皇帝は、頭を下げているレクシャを一瞥するとマーザスに視線を戻した。
「もちろん、故意的にすることは可能です。実際、それで300年前の悲劇が起きたのですから」
「そうだな。だが、昨日届いた騎士達からの報告からして、レクシャ以外の王国の者達は誰一人として廃人にはなっていなかった」
「恐らく、何かしら目的があって意図的に廃人にしなかったのか、あるいは廃人にさせる前に対象者が違和感を覚える何かが起きたか」
「「違和感?」」
小首を傾げる皇帝と宰相に、マーザスは小さく頷いた。
「はい。改竄魔法において一番の弱点……それが、違和感なのです」
そう言うと、表を上げたマーザスは身振り手振りで改竄魔法の弱点について例え話を使って説明を始めた。
「例えば、術者が対象者の記憶に『目の前にいる術者は、生まれた時から皇帝だ』という改竄魔法をかけたとしましょう」
「ほう、改竄魔法如きで皇帝の地位を追いやられるとはな」
「陛下、私も魔法で自分の地位が追いやれるのが怖いので、そのくらいにしてください」
「分かっている」
宰相からの注意に、皇帝が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
そんな2人をよそに、マーザスは真剣な表情で話を続けた。
「しかし、皇帝として認識している術者は、皇帝としての仕事が一切出来ない。もちろん、そこから術者が更に改竄魔法を重ねれば良いだけの話ですが、記憶が改竄されればされるほど、対象者の中に『この人、本当に皇帝なのか?』という違和感が生まれる。その違和感こそが、改竄魔法の一番の弱点なのです」
「つまり、術者に対して対象者が違和感を覚えた瞬間、対象者にかけられた改竄魔法が解かれるというか?」
眉を顰めた皇帝に対し、マーザスは小さく頷いた。
「そうです。また、何もしていないのに魔力が急激に減れば、対象者には魔力消費特有の倦怠感が襲ってきます」
「それも、改竄魔法を解く違和感に繋がるのか?」
「もちろんです」
(何もしていないのにいきなり魔力消費特有の倦怠感が来れば、自ずと違和感を覚えるはず。それが例え、改竄魔法で消費された魔力だと分からなかったとしても)
「ですが、そうなる前に対象者よりも術者の使用する魔力を多く使えば良いだけの話ですよね?」
再び小首を傾げた宰相の問いに、マーザスは首を縦に振った。
「もちろん、術者の魔力を多くすれば問題無く魔法が発動します。ですが、対象者が国民全員となると、術者の魔力が枯渇して、却って魔法が正常に発動しなくなる可能性もあります」
「確かにそうですね」
すると、今まで黙って聞いていたレクシャが口を開いた。
「それに、ノルベルトはプライドが高いですから、自分の魔力は極力使いたくなかったのでしょう。だが、それで国民を廃人にしたくなかった。故に、ノルベルトは国民に対して違和感を与えることなく改竄魔法が使える地位を……爵位を欲していたということでしょう」
「そうですね。高い地位にいれば、対象者の改竄すべき記憶量も少なくなりますし、多少なりとも違和感は与えずに済むと思いますから」
「それにしては、爵位を賜った直後に改竄魔法をかけていたけどな」
笑みを潜めた皇帝からの問いに、杖をマジックバックに戻したマーザスは再び片膝をつくと口を開いた。
「はい。陛下や宰相閣下もご存じかと思いますが、改竄魔法とは術者の魔力と対象者の魔力を使い、対象者の記憶を術者によって改竄される魔法。そして、その改竄する記憶というものが、多ければ多いほど使用される魔力が多くなるのです」
「ほう」
感心する皇帝と静かに話を聞いている宰相とレクシャを一瞥し、マーザスは話を続ける。
「また、対象者と術者が使用する魔力の塩梅も大事になってきます」
「塩梅とは?」
「はい。対象者が術者に使用される魔力が多ければ多い程、改竄された記憶と使用された魔力の多さに対象者は自我を保てなくなり……最悪の場合、廃人になってしまいます」
「『廃人』か……」
(帝国にとっても、王国にとっても、最も嫌いとする言葉だな)
小さく溜息をついた皇帝は、頭を下げているレクシャを一瞥するとマーザスに視線を戻した。
「もちろん、故意的にすることは可能です。実際、それで300年前の悲劇が起きたのですから」
「そうだな。だが、昨日届いた騎士達からの報告からして、レクシャ以外の王国の者達は誰一人として廃人にはなっていなかった」
「恐らく、何かしら目的があって意図的に廃人にしなかったのか、あるいは廃人にさせる前に対象者が違和感を覚える何かが起きたか」
「「違和感?」」
小首を傾げる皇帝と宰相に、マーザスは小さく頷いた。
「はい。改竄魔法において一番の弱点……それが、違和感なのです」
そう言うと、表を上げたマーザスは身振り手振りで改竄魔法の弱点について例え話を使って説明を始めた。
「例えば、術者が対象者の記憶に『目の前にいる術者は、生まれた時から皇帝だ』という改竄魔法をかけたとしましょう」
「ほう、改竄魔法如きで皇帝の地位を追いやられるとはな」
「陛下、私も魔法で自分の地位が追いやれるのが怖いので、そのくらいにしてください」
「分かっている」
宰相からの注意に、皇帝が不機嫌そうに鼻を鳴らした。
そんな2人をよそに、マーザスは真剣な表情で話を続けた。
「しかし、皇帝として認識している術者は、皇帝としての仕事が一切出来ない。もちろん、そこから術者が更に改竄魔法を重ねれば良いだけの話ですが、記憶が改竄されればされるほど、対象者の中に『この人、本当に皇帝なのか?』という違和感が生まれる。その違和感こそが、改竄魔法の一番の弱点なのです」
「つまり、術者に対して対象者が違和感を覚えた瞬間、対象者にかけられた改竄魔法が解かれるというか?」
眉を顰めた皇帝に対し、マーザスは小さく頷いた。
「そうです。また、何もしていないのに魔力が急激に減れば、対象者には魔力消費特有の倦怠感が襲ってきます」
「それも、改竄魔法を解く違和感に繋がるのか?」
「もちろんです」
(何もしていないのにいきなり魔力消費特有の倦怠感が来れば、自ずと違和感を覚えるはず。それが例え、改竄魔法で消費された魔力だと分からなかったとしても)
「ですが、そうなる前に対象者よりも術者の使用する魔力を多く使えば良いだけの話ですよね?」
再び小首を傾げた宰相の問いに、マーザスは首を縦に振った。
「もちろん、術者の魔力を多くすれば問題無く魔法が発動します。ですが、対象者が国民全員となると、術者の魔力が枯渇して、却って魔法が正常に発動しなくなる可能性もあります」
「確かにそうですね」
すると、今まで黙って聞いていたレクシャが口を開いた。
「それに、ノルベルトはプライドが高いですから、自分の魔力は極力使いたくなかったのでしょう。だが、それで国民を廃人にしたくなかった。故に、ノルベルトは国民に対して違和感を与えることなく改竄魔法が使える地位を……爵位を欲していたということでしょう」
「そうですね。高い地位にいれば、対象者の改竄すべき記憶量も少なくなりますし、多少なりとも違和感は与えずに済むと思いますから」
「それにしては、爵位を賜った直後に改竄魔法をかけていたけどな」
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