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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第234話 銀色の腕輪
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「マーザス、落ち着け。こいつに掴みかかったところで、事態が変わるわけが無いだろうが」
「はっ!」
(隣国の宰相に対して、怒り任せに何と無礼なことを)
「……申し訳ございませんでした、レクシャ殿」
皇帝の周囲を凍てつかせるような低い声で正気を取り戻したマーザスは、レクシャからそっと離れると深々と頭を下げた。
「良いのですよ。私の次男も、この事実を聞いた時は『父さん、今からそいつに火の超級魔法をぶっ放してくる』と珍しく殺気立っていましたから」
「さすが、お前の息子だな」
「陛下、それはどういうことでしょうか?」
衣服の乱れを直したレクシャが、黒い笑みを浮かべて皇帝の方を見ると、隣にいた宰相が何かを察してわざとらしい咳払いをした。
「コホン。一先ず、魔法陣についてですが……無効化魔法を使い、魔法陣の中に流れる闇魔法の魔力を打ち消すとなると、それなりに時間がかかりますよね?」
「そうですね。そもそも、闇魔法の魔力を知覚するにも、それなりに時間と集中力を要します」
「となると、闇魔法の魔力を無効化している間、術者は完全に無防備になるということか?」
「そういうことになりますね」
深く溜息をついた皇帝が、頬杖をつきながら宰相に目を向けた。
「そうなれば、護衛用として帝国の騎士も派遣しないといけなくなるな?」
「そうですね。ですが、大人数で隣国に渡った場合、あちらに気づかれる可能性も……」
「そのことでしたら、ご安心ください」
「なに?」
目つきを鋭くした皇帝が、宰相からレクシャに視線を移した。
すると、レクシャが小さく笑みを浮かべた。
「今回の計画に伴い、護衛はこちらで引き受けさせていただきます」
「ほう、ただの下級文官風情が護衛を手配できるというのか?」
(それも、あのバカの改竄魔法がかかっている状況で?)
挑戦的な笑みを浮かべる皇帝に対し、笑みを崩さないレクシャが頷いた。
「当然です。これでも、『切れ者宰相』と言われた私です。国民に改竄魔法がかけられると分かれば、最低限の保険をかけておくくらい容易いことです」
「ほう? では、その保険からどうやって護衛を手配するというのだ?」
ニヤリと笑う皇帝に、レクシャは笑みを深めると懐から銀色の腕輪を取り出した。
「レクシャ殿、これは?」
「これは、無効化魔法が付与された腕輪でございます」
「「「っ!?」」」
(((無効化魔法が付与された腕輪だと!?)))
「レクシャ殿、その腕輪はどうやって作られたのですか!?」
(無効化魔法が付与された魔道具というのは、その独特な特性ゆえに不可能とされていた。だが……)
興奮気味のマーザスが、レクシャの持っている腕輪を食い入るように見つめた。
そんな彼に、レクシャは微笑みな答えた。
「簡単な話です。私の魔力……無効化魔法を使える魔力には、無効化魔法の魔法式が直接刻まれています。だから、腕輪に直接魔力を流し込んだのです」
「なるほど、確かにそれなら無効化魔法が付与出来ますね」
レクシャの説明を聞いて、マーザスは納得したように頷いた。
古の時代、大陸の遥か東にあった島国で大規模な戦乱が起きた時、保身に走った当時の王族達は、自らの身を守るために自分たちの魔力にあらゆる魔法を無効化する魔法の魔法式を直接刻み、国を捨てて他国へ亡命したそうだ。
それが、無効化魔法の始まりとされている。
「ノルベルトが不穏な動きをしていると知った時、私は万が一のために陛下を通して私が信頼を置く者達に手紙とこの腕輪を送るよう手筈を整えていました」
「そして、その愚か者が行動を起こす前に、その者達に腕輪を渡したというわけか?」
「そういうことです」
(残された時間は僅かであったが、ロスペルの転移魔法で陛下への火急の謁見を済ませると、ロスペルに手紙と腕輪を送ってもらった)
『ロスペル、これを頼んだ』
『分かりました、父さん』
手紙と腕輪を託した時のことを思い出したレクシャは、手の中にある銀色の腕輪に視線を落とした。
「はっ!」
(隣国の宰相に対して、怒り任せに何と無礼なことを)
「……申し訳ございませんでした、レクシャ殿」
皇帝の周囲を凍てつかせるような低い声で正気を取り戻したマーザスは、レクシャからそっと離れると深々と頭を下げた。
「良いのですよ。私の次男も、この事実を聞いた時は『父さん、今からそいつに火の超級魔法をぶっ放してくる』と珍しく殺気立っていましたから」
「さすが、お前の息子だな」
「陛下、それはどういうことでしょうか?」
衣服の乱れを直したレクシャが、黒い笑みを浮かべて皇帝の方を見ると、隣にいた宰相が何かを察してわざとらしい咳払いをした。
「コホン。一先ず、魔法陣についてですが……無効化魔法を使い、魔法陣の中に流れる闇魔法の魔力を打ち消すとなると、それなりに時間がかかりますよね?」
「そうですね。そもそも、闇魔法の魔力を知覚するにも、それなりに時間と集中力を要します」
「となると、闇魔法の魔力を無効化している間、術者は完全に無防備になるということか?」
「そういうことになりますね」
深く溜息をついた皇帝が、頬杖をつきながら宰相に目を向けた。
「そうなれば、護衛用として帝国の騎士も派遣しないといけなくなるな?」
「そうですね。ですが、大人数で隣国に渡った場合、あちらに気づかれる可能性も……」
「そのことでしたら、ご安心ください」
「なに?」
目つきを鋭くした皇帝が、宰相からレクシャに視線を移した。
すると、レクシャが小さく笑みを浮かべた。
「今回の計画に伴い、護衛はこちらで引き受けさせていただきます」
「ほう、ただの下級文官風情が護衛を手配できるというのか?」
(それも、あのバカの改竄魔法がかかっている状況で?)
挑戦的な笑みを浮かべる皇帝に対し、笑みを崩さないレクシャが頷いた。
「当然です。これでも、『切れ者宰相』と言われた私です。国民に改竄魔法がかけられると分かれば、最低限の保険をかけておくくらい容易いことです」
「ほう? では、その保険からどうやって護衛を手配するというのだ?」
ニヤリと笑う皇帝に、レクシャは笑みを深めると懐から銀色の腕輪を取り出した。
「レクシャ殿、これは?」
「これは、無効化魔法が付与された腕輪でございます」
「「「っ!?」」」
(((無効化魔法が付与された腕輪だと!?)))
「レクシャ殿、その腕輪はどうやって作られたのですか!?」
(無効化魔法が付与された魔道具というのは、その独特な特性ゆえに不可能とされていた。だが……)
興奮気味のマーザスが、レクシャの持っている腕輪を食い入るように見つめた。
そんな彼に、レクシャは微笑みな答えた。
「簡単な話です。私の魔力……無効化魔法を使える魔力には、無効化魔法の魔法式が直接刻まれています。だから、腕輪に直接魔力を流し込んだのです」
「なるほど、確かにそれなら無効化魔法が付与出来ますね」
レクシャの説明を聞いて、マーザスは納得したように頷いた。
古の時代、大陸の遥か東にあった島国で大規模な戦乱が起きた時、保身に走った当時の王族達は、自らの身を守るために自分たちの魔力にあらゆる魔法を無効化する魔法の魔法式を直接刻み、国を捨てて他国へ亡命したそうだ。
それが、無効化魔法の始まりとされている。
「ノルベルトが不穏な動きをしていると知った時、私は万が一のために陛下を通して私が信頼を置く者達に手紙とこの腕輪を送るよう手筈を整えていました」
「そして、その愚か者が行動を起こす前に、その者達に腕輪を渡したというわけか?」
「そういうことです」
(残された時間は僅かであったが、ロスペルの転移魔法で陛下への火急の謁見を済ませると、ロスペルに手紙と腕輪を送ってもらった)
『ロスペル、これを頼んだ』
『分かりました、父さん』
手紙と腕輪を託した時のことを思い出したレクシャは、手の中にある銀色の腕輪に視線を落とした。
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