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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第247話 行ってらっしゃい
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「っ!?」
「アハハハハッ!」
目を見開くラピスに対し、マーザスは大笑いすると満足そうに頷いた。
「さすがだよ、カトレア君。そう、その手紙は『王国の盾』と言われている人がお願いして王族印を使わせてもらったんだよ」
「でも、どうしてわざわざ王族印を使ったのでしょうか?」
「それは、記憶が戻った君ならすぐに分かるんじゃないかな?」
「えっ?」
マーザスの言葉に眉を顰めたカトレアが顎に手を添えて考え込んだ。
(手紙を送るだけなら、わざわざ王族印を使わなくても自分の名前を出せば……あっ)
「偽りの宰相の目を逃れるためですか?」
「正解。国の宰相とはいえ、王族印が押された手紙を検閲するなんて出来ないからね」
(確かに、王族印で手紙を検閲しようとものなら、それすなわち王族に対して不敬を働いたのと同じになる)
僅かに目を伏せたカトレアに対し、マーザスは優しく微笑みかけて手に持っている杖に視線を落とした。
「君の師匠からこの杖を預かった時、『もし、君たち二人が杖を取りに来たら改竄魔法のことを話して欲しい』と言っていた」
「っ!?」
「そして、手紙には『話を聞いた上で改竄魔法を解きたいとお願いされたら、俺の杖を使って解いて欲しい』と書いてあったのさ」
「師匠……」
(師匠、そこまで私やラピスのことを考えてくださったのですね)
師匠の優しさに触れて涙ぐむカトレアを一瞥し、感慨深げに杖を撫でたマーザスは、マジックバックから布を取り出して大事そうに杖をくるむと、そのままカトレアに差し出した。
「だから、君はもう分かっているんじゃないかい? 君の師匠がどこにいるかも……君がやりたいことも」
「っ!?」
(そうだ、記憶が戻った今なら、師匠がどこにいるかも分かる! そして、自分が成すべきことも!)
一瞬目を見開いたカトレアは、真剣な表情で軽く頷いた。
「えぇ、もちろんです。一先ず、王国の盾のところに行きたいと思います」
(あの方から聞かないといけないことがたくさんあるから)
杖を受け取ったカトレアが大事そうに抱えると、マーザスが小さく苦笑した。
「そうかい。でも、今は体のことを優先させた方が良い」
「えっ?」
意外そうな顔をするカトレアに、マーザスは一眠りしたはずなのに満身創痍な2人を見やった。
「魔法に長けている君だって分かっているはずだよ。一眠りしたところで、解呪魔法の副作用による体の酷く怠さが抜けていないのは」
「っ!? ですが、今はすっかり……」
「疲弊している君に、師匠は魔法の修行をつけようとするかい?」
「あっ」
『いいか、カトレア嬢。魔法師において、心身の状態は魔法の精度に大きく関わる。だから、体調が優れない時は必ず休むように』
師匠の言葉を思い出したカトレアは、杖を持っていない手を握った。
「それに、今の君と話したいなんてあの方も思っていないはずだ。実際、彼と別れる時、『今のカトレア嬢とラピス君の話がしたい』なんて口にされていなかったから」
「っ!? それって……」
驚いて目を見開くカトレアとラピスに、マーザスは申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
「ごめん、君たちのことはあの方に伝えたよ。手紙にも、『解呪魔法を使ったら、随行している下級文官に伝え欲しい』と書いてあったから」
(下級文官って、もしかしてレクシャ様のこと!?)
言葉を失っているカトレアとラピスを見て、再び笑みを零したマーザスは彼女に持たせた杖に優しく触れた。
「だから今は、体を休めて。大丈夫、あの方は改竄魔法のことも解呪魔法のことも分かっているから、君たちが回復するまでちゃんと待ってくれる。それに……」
カトレアに視線を戻したマーザスは、おどけたようにウインクをした。
「満身創痍の状態より、完全回復した状態で師匠や親友と再会したいでしょ?」
「っ!?」
『魔力操作が甘い! そんなことでは、いつまでも私のようにはなれないぞ!』
『カトレア! 今度はどんな魔法を見せてくれるの?』
(押しかけで弟子入りさせてくれた私を決して見捨てなかった師匠。そして、どんな私でも明るく接してくれている唯一無二の親友)
「えぇ、もちろんです!」
目から雫が零したカトレアの笑みに、満足そうに頷いたマーザスは、懐から四角い箱の魔道具を取り出すと、そのままカトレアの手に握らせた。
「マーザス様、これは?」
「認識阻害の魔法が付与された魔道具で、密閉された空間の中で使えば、空間の外にいる人達には違う会話が聞こえるよ」
「つまり、これを使えば内緒話も出来るということでしょうか?」
「そういうこと。今の君たちにはピッタリじゃないかな?」
「っ!」
(本当に、師匠の親友は尊敬すべき天才魔法師様だわ!)
手の中にある四角い魔道具を優しく握ったカトレアは、俯いていた顔を上げる。
「必ず、必ずお返しします」
「うん、その時は君の師匠も連れてきてね」
「もちろんです!」
力強く頷いたカトレアとラピスに、優しい笑みを浮かべたマーザスは2人の背中を叩いた。
「それじゃあ、行きなさい! そして、目的を果たしてきなさい!」
(そして、君の師匠と一緒に僕のところに遊びに来て。いつでも、歓迎してあげるからさ)
「はい、行ってきます!」
「お世話になりました」
2人の背中を押したマーザスは、カトレアが親友ロスペルを連れてくることを密かに願った。
「アハハハハッ!」
目を見開くラピスに対し、マーザスは大笑いすると満足そうに頷いた。
「さすがだよ、カトレア君。そう、その手紙は『王国の盾』と言われている人がお願いして王族印を使わせてもらったんだよ」
「でも、どうしてわざわざ王族印を使ったのでしょうか?」
「それは、記憶が戻った君ならすぐに分かるんじゃないかな?」
「えっ?」
マーザスの言葉に眉を顰めたカトレアが顎に手を添えて考え込んだ。
(手紙を送るだけなら、わざわざ王族印を使わなくても自分の名前を出せば……あっ)
「偽りの宰相の目を逃れるためですか?」
「正解。国の宰相とはいえ、王族印が押された手紙を検閲するなんて出来ないからね」
(確かに、王族印で手紙を検閲しようとものなら、それすなわち王族に対して不敬を働いたのと同じになる)
僅かに目を伏せたカトレアに対し、マーザスは優しく微笑みかけて手に持っている杖に視線を落とした。
「君の師匠からこの杖を預かった時、『もし、君たち二人が杖を取りに来たら改竄魔法のことを話して欲しい』と言っていた」
「っ!?」
「そして、手紙には『話を聞いた上で改竄魔法を解きたいとお願いされたら、俺の杖を使って解いて欲しい』と書いてあったのさ」
「師匠……」
(師匠、そこまで私やラピスのことを考えてくださったのですね)
師匠の優しさに触れて涙ぐむカトレアを一瞥し、感慨深げに杖を撫でたマーザスは、マジックバックから布を取り出して大事そうに杖をくるむと、そのままカトレアに差し出した。
「だから、君はもう分かっているんじゃないかい? 君の師匠がどこにいるかも……君がやりたいことも」
「っ!?」
(そうだ、記憶が戻った今なら、師匠がどこにいるかも分かる! そして、自分が成すべきことも!)
一瞬目を見開いたカトレアは、真剣な表情で軽く頷いた。
「えぇ、もちろんです。一先ず、王国の盾のところに行きたいと思います」
(あの方から聞かないといけないことがたくさんあるから)
杖を受け取ったカトレアが大事そうに抱えると、マーザスが小さく苦笑した。
「そうかい。でも、今は体のことを優先させた方が良い」
「えっ?」
意外そうな顔をするカトレアに、マーザスは一眠りしたはずなのに満身創痍な2人を見やった。
「魔法に長けている君だって分かっているはずだよ。一眠りしたところで、解呪魔法の副作用による体の酷く怠さが抜けていないのは」
「っ!? ですが、今はすっかり……」
「疲弊している君に、師匠は魔法の修行をつけようとするかい?」
「あっ」
『いいか、カトレア嬢。魔法師において、心身の状態は魔法の精度に大きく関わる。だから、体調が優れない時は必ず休むように』
師匠の言葉を思い出したカトレアは、杖を持っていない手を握った。
「それに、今の君と話したいなんてあの方も思っていないはずだ。実際、彼と別れる時、『今のカトレア嬢とラピス君の話がしたい』なんて口にされていなかったから」
「っ!? それって……」
驚いて目を見開くカトレアとラピスに、マーザスは申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
「ごめん、君たちのことはあの方に伝えたよ。手紙にも、『解呪魔法を使ったら、随行している下級文官に伝え欲しい』と書いてあったから」
(下級文官って、もしかしてレクシャ様のこと!?)
言葉を失っているカトレアとラピスを見て、再び笑みを零したマーザスは彼女に持たせた杖に優しく触れた。
「だから今は、体を休めて。大丈夫、あの方は改竄魔法のことも解呪魔法のことも分かっているから、君たちが回復するまでちゃんと待ってくれる。それに……」
カトレアに視線を戻したマーザスは、おどけたようにウインクをした。
「満身創痍の状態より、完全回復した状態で師匠や親友と再会したいでしょ?」
「っ!?」
『魔力操作が甘い! そんなことでは、いつまでも私のようにはなれないぞ!』
『カトレア! 今度はどんな魔法を見せてくれるの?』
(押しかけで弟子入りさせてくれた私を決して見捨てなかった師匠。そして、どんな私でも明るく接してくれている唯一無二の親友)
「えぇ、もちろんです!」
目から雫が零したカトレアの笑みに、満足そうに頷いたマーザスは、懐から四角い箱の魔道具を取り出すと、そのままカトレアの手に握らせた。
「マーザス様、これは?」
「認識阻害の魔法が付与された魔道具で、密閉された空間の中で使えば、空間の外にいる人達には違う会話が聞こえるよ」
「つまり、これを使えば内緒話も出来るということでしょうか?」
「そういうこと。今の君たちにはピッタリじゃないかな?」
「っ!」
(本当に、師匠の親友は尊敬すべき天才魔法師様だわ!)
手の中にある四角い魔道具を優しく握ったカトレアは、俯いていた顔を上げる。
「必ず、必ずお返しします」
「うん、その時は君の師匠も連れてきてね」
「もちろんです!」
力強く頷いたカトレアとラピスに、優しい笑みを浮かべたマーザスは2人の背中を叩いた。
「それじゃあ、行きなさい! そして、目的を果たしてきなさい!」
(そして、君の師匠と一緒に僕のところに遊びに来て。いつでも、歓迎してあげるからさ)
「はい、行ってきます!」
「お世話になりました」
2人の背中を押したマーザスは、カトレアが親友ロスペルを連れてくることを密かに願った。
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