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第4章 記憶と思惑のフィアンツ帝国
第249話 悪夢(前編)
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※レクシャ視点です。
あの日のことを、私は決して忘れはしない。
全てを奪われたあの日、私はいつもより少しだけ早く起きた。
そして、執事のインホルトが持ってきた前インベック伯爵様から届いた手紙を読んだ私は、一刻も早く陛下に伝えなければと馬車を使って急いで王城に向かった。
『近々、息子が本当に愚かなことをしでかすかもしれない。その前に、あなたに伝えておきたい』
届いた手紙には、ノルベルトが王国に点在している魔法陣で国に厄災をもたらそうとしていることと、それを阻止するために長男であるノルベルトに当主を継がせる代わりに、結界の維持管理だけは次男に継がせようとしていることが書かれていた。
(ノルベルトがきな臭い動きをしていることは、前インベック伯爵様から話を聞く前が知っていた。だから私は、インベック伯爵家を泳がせつつ、万が一に備えて国王陛下やシュタール辺境伯家、ヴィルマン侯爵家や引退したエドガスに協力を取り付けていた)
「それでも、陛下は『これは、国王である私の責任だ』と私からの贈り物を受け取らなかったが」
無効化魔法が付与された腕輪を受け取らなかった陛下を思い出し、顔を歪めた私は懐に入れていた手紙を取り出してもう一度読み返した。
「『叶わなかった場合、サザランス公爵家の名の下に、インベック伯爵家を潰して欲しい』か」
前インベック伯爵様の切実な願いに、思わず手紙に皺がつけてしまう。
(そんなこと出来るわけがない。例え、300年前に大きな過ちを犯した家だとしても、今は王国を裏から支えている立派な家ではないか)
「だからこそ、陛下に……ん?」
手紙を懐に戻した私は、策を練ろうと外に視線を移した時、ふと王城の前の門番がいないことに気づく。
(門番がいないだと?)
いつもとは違う光景を目にし、冷たい何かが背中を通った。
その時、御者を務めていたマーティスが険しい顔でこちらを見てきた。
「旦那様、お気づきでしょうが門にいるはずの門番が……」
「あぁ、分かっている」
(どういうことだ? こんなこと、今まで一度もなかった)
異常事態としか考えられない光景を目の当たりにし、気味の悪い恐怖が徐々に私を蝕む。
「いつもよりあっさりと王城に入れたが……見回りの騎士もいないな。それに、王城で働いている使用人達や文官達の姿もない」
「えぇ、そもそも人っ子1人いません。とても不気味ですね」
「そうだな」
(この時間なら、文官達や使用達が忙しなく歩いていても何ら不思議じゃない。なのに、王城に入ってから敷地内を歩いている人間の姿が見当たらない)
昨日とは明らかに違う王城の雰囲気に警戒心を強めた私は、いつものように王城の前で馬車を止めてもらう。
「旦那様、お気をつけて」
「あぁ、マーティスも気をつけ……」
御者に戻るよう命じた時、茂みに隠れていた騎士達が一斉に飛び掛かってきた。
「なっ!」
「旦那さ……うわっ!」
「マーティス!」
咄嗟のことで動けなかった私とマーティスは、あっさりと騎士達に取り押さえられた。
「君たち、一体何をしてい……っ!?」
拘束を解こうともがきながら後ろを振り返った瞬間、騎士達の虚ろな目とかち合い、思わず言葉を失う。
(何かに操られているような目……これは、もしかして!!)
その時、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「これはこれは、ようやく来ましたか。レクシャ・サザランス」
「っ!? ノルベルト・インベック!」
睨みつけた視線の先には、前インベック伯爵様の子息にして、現インベック伯爵のノルベルト・インベックが立っていた。
あの日のことを、私は決して忘れはしない。
全てを奪われたあの日、私はいつもより少しだけ早く起きた。
そして、執事のインホルトが持ってきた前インベック伯爵様から届いた手紙を読んだ私は、一刻も早く陛下に伝えなければと馬車を使って急いで王城に向かった。
『近々、息子が本当に愚かなことをしでかすかもしれない。その前に、あなたに伝えておきたい』
届いた手紙には、ノルベルトが王国に点在している魔法陣で国に厄災をもたらそうとしていることと、それを阻止するために長男であるノルベルトに当主を継がせる代わりに、結界の維持管理だけは次男に継がせようとしていることが書かれていた。
(ノルベルトがきな臭い動きをしていることは、前インベック伯爵様から話を聞く前が知っていた。だから私は、インベック伯爵家を泳がせつつ、万が一に備えて国王陛下やシュタール辺境伯家、ヴィルマン侯爵家や引退したエドガスに協力を取り付けていた)
「それでも、陛下は『これは、国王である私の責任だ』と私からの贈り物を受け取らなかったが」
無効化魔法が付与された腕輪を受け取らなかった陛下を思い出し、顔を歪めた私は懐に入れていた手紙を取り出してもう一度読み返した。
「『叶わなかった場合、サザランス公爵家の名の下に、インベック伯爵家を潰して欲しい』か」
前インベック伯爵様の切実な願いに、思わず手紙に皺がつけてしまう。
(そんなこと出来るわけがない。例え、300年前に大きな過ちを犯した家だとしても、今は王国を裏から支えている立派な家ではないか)
「だからこそ、陛下に……ん?」
手紙を懐に戻した私は、策を練ろうと外に視線を移した時、ふと王城の前の門番がいないことに気づく。
(門番がいないだと?)
いつもとは違う光景を目にし、冷たい何かが背中を通った。
その時、御者を務めていたマーティスが険しい顔でこちらを見てきた。
「旦那様、お気づきでしょうが門にいるはずの門番が……」
「あぁ、分かっている」
(どういうことだ? こんなこと、今まで一度もなかった)
異常事態としか考えられない光景を目の当たりにし、気味の悪い恐怖が徐々に私を蝕む。
「いつもよりあっさりと王城に入れたが……見回りの騎士もいないな。それに、王城で働いている使用人達や文官達の姿もない」
「えぇ、そもそも人っ子1人いません。とても不気味ですね」
「そうだな」
(この時間なら、文官達や使用達が忙しなく歩いていても何ら不思議じゃない。なのに、王城に入ってから敷地内を歩いている人間の姿が見当たらない)
昨日とは明らかに違う王城の雰囲気に警戒心を強めた私は、いつものように王城の前で馬車を止めてもらう。
「旦那様、お気をつけて」
「あぁ、マーティスも気をつけ……」
御者に戻るよう命じた時、茂みに隠れていた騎士達が一斉に飛び掛かってきた。
「なっ!」
「旦那さ……うわっ!」
「マーティス!」
咄嗟のことで動けなかった私とマーティスは、あっさりと騎士達に取り押さえられた。
「君たち、一体何をしてい……っ!?」
拘束を解こうともがきながら後ろを振り返った瞬間、騎士達の虚ろな目とかち合い、思わず言葉を失う。
(何かに操られているような目……これは、もしかして!!)
その時、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「これはこれは、ようやく来ましたか。レクシャ・サザランス」
「っ!? ノルベルト・インベック!」
睨みつけた視線の先には、前インベック伯爵様の子息にして、現インベック伯爵のノルベルト・インベックが立っていた。
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