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第5章 止まっていた運命が動き出す
第254話 ワケアリ執事と護衛騎士
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カトレアとラピスがマーザスに会っていた頃、宮廷魔法師団団長ルベルと近衛騎士団団長フェビルは、宮廷魔法師団内にある転移陣を使い、近衛騎士であるメストとシトリンと共にとある森に転移した。
「ルベル団長。この森で先日、大規模な魔物討伐が行われたのですか?」
「あぁ、王都からはそれほど離れていない場所だ」
魔物討伐の時のことを思い出して眉を顰めるルベルの横で、木漏れが差す森の中を見回しているフェビル。
そんな彼の後ろに控えていたシトリンが、隣にいるメストに小声で話しかけた。
「ねぇ、この近くって確か……」
「あぁ、カミルが住んでいるリアスタ村がある」
「そうだよね」
(しかも、この場所は1年前の特別訓練で起きた魔物討伐とは反対の場所にある)
「ここに来るなら、カミルからこの周辺についてもう少し聞いておけば良かった」
「そうだね。もし、この周辺のことを聞いておけば魔物の発生と何か関係が……」
「おや、これはこれは」
「っ!?」
(どうして、あなた方がここに!?)
後ろから男の声が聞こえたフェビルは、言葉を失いながら何も知らずに警戒する3人と共にゆっくり振り向く。
そこには、燕尾服に身を包み、金色の長髪を一纏めにした長身で細身の男性が立っていた。
「ん? どうしたフェビル?」
「いえ、何も……」
(まさか、ここにあの方々がいるなんて……)
「本当か?」
「はい、何もありません」
「そうか。それなら良いのだが……それで、あなた方は一体誰ですか?」
(ここに誰かが来るなんて聞いていないのだが)
2人を見た途端、明らかに挙動不審になったフェビルをよそに、警戒心を強めたルベルが慎重に問い質す。
すると、燕尾服をきた男性が紺碧の瞳でルベルとフェビルを見やると、紳士的な笑みを浮かべて深々とお辞儀をした。
「初めまして、ルベル団長にフェビル団長」
「っ!? どうして、俺たちの名前を?」
マジックバックから杖を取り出したルベルを見て、燕尾服を着た男性が頭を上げると胸に手を当てた。
「もちろん、今回の案内役を務めますので存じ上げていても何ら不思議ではないかと」
「案内役? そんなものがあると聞いていなかったのだが……フェビル、何か聞いているか?」
「あっ、いえ……私も何も」
困惑するルベルとフェビルに、燕尾服を着た男性が片手を上げるとそのまま森の方に向ける。
「実は、この森は我が家が管理しているのでございます」
「我が家?」
「はい」
そうして、笑みを浮かべた燕尾服を着た男性が改めて挨拶をする。
「改めてご挨拶を。私は、ヴィルマン侯爵領の屋敷で執事をしておりますジルと申します」
「ヴィルマン侯爵領……ということは、ここはヴィルマン侯爵領なのですか?」
疑問を口にするルベルの少し後ろで、シトリンがメストに再び小声で聞いた。
「メスト、ヴィルマン侯爵領ってここじゃないよね?」
「あぁ、ここは確か王国の直轄領だったはず」
幼い頃から騎士としての鍛錬と次期当主としての勉強をしていたメストは、今いる場所がどのような場所なのか知っていた。
ゆえに、どうしてここに侯爵領の屋敷で働いている執事が案内役としているのか分からないでいた。
すると、笑みを潜めたジルが小さく首を横に振る。
「いえ、ここは王国の直轄領なのですが……実は3年前、宰相閣下から『この土地はヴィルマン侯爵家が管理しろ』とお達しがありまして、そこから我がヴィルマン侯爵家が管理しているのです」
「つまり、宰相閣下の指示でここの管理をしていると?」
「さようでございます」
ジルの返事を聞いたルベルは、思わず目を細める。
(全く、どこまで好き勝手すれば気が済むのだ……待てよ)
「では今回、あなた方が来たのは……」
「はい。お2人方がこの場所を調査することをどこかで嗅ぎ付けた宰相閣下が、旦那様に2人の案内役にするよう命じられたのです。ですが、仕事で多忙を極める旦那様が王都を離れるわけにはいきませんので、僭越ながら侯爵領の屋敷で執事をしております私が案内役を仰せつかったのです」
「つまり、ジル様は案内役という名の監視役ということでしょうか?」
「そのように捉えていただいても構わないかと」
優雅に頭を下げるジルを見て、ルベルとフェビルは揃って苦い顔をすると、頭を上げたジルが安心させるように微笑んだ。
「ですがご心配なく。監視役といっても、お2人を自由にさせるだけの名目だと旦那様から伺っておりますので」
「要は、名ばかり監視役ってことで良いんですね?」
「はい。ですから、私のことは物見遊山に来た、ただの傍迷惑な観光客と思っていただいてください」
「いやいや、いくらなんでもそれはさすがに父上が許さ……」
「分かりました」
「フェビル団長!?」
フェビルの返事を聞いて、声を上げて驚いたメスト。
そんな彼を見たフェビルが小さく溜息をついた。
「ヴィルマン侯爵様が、俺たちを自由にするために執事を寄こしたって言うならそれで良いじゃねぇか。それに、そちらの執事さんだって、丸腰で来たってわけではないだろう?」
「さすが、フェビル団長ですね」
「……まぁ、後ろに控えている騎士に気づかない騎士は、さっさと辞めちまった方が良い」
そう言って、気まずそうにジルから視線を逸らしたフェビルは、そのままジルの後ろに広がる森に目を移す。
そして、フェビルの視線に気づいたジルが後ろを振り向いた時、森の奥から使い込まれた全身鎧に身を包んだ男が現れた。
「ご紹介します。彼の名はザール。今回、私の護衛役として同行しているヴィルマン侯爵家の私兵でございます。これでも一応、腕は立ちますのでご安心を」
「……まぁ、そうでしょうね」
(何せ、その人はあの方の長男なのですから)
ジルの護衛騎士が背負っている銀色の大剣に、フェビルは一瞬下唇を噛むと、小さく息を吐いたルベルが後ろにいるシトリンに視線を向ける。
「ルベル団長。この森で先日、大規模な魔物討伐が行われたのですか?」
「あぁ、王都からはそれほど離れていない場所だ」
魔物討伐の時のことを思い出して眉を顰めるルベルの横で、木漏れが差す森の中を見回しているフェビル。
そんな彼の後ろに控えていたシトリンが、隣にいるメストに小声で話しかけた。
「ねぇ、この近くって確か……」
「あぁ、カミルが住んでいるリアスタ村がある」
「そうだよね」
(しかも、この場所は1年前の特別訓練で起きた魔物討伐とは反対の場所にある)
「ここに来るなら、カミルからこの周辺についてもう少し聞いておけば良かった」
「そうだね。もし、この周辺のことを聞いておけば魔物の発生と何か関係が……」
「おや、これはこれは」
「っ!?」
(どうして、あなた方がここに!?)
後ろから男の声が聞こえたフェビルは、言葉を失いながら何も知らずに警戒する3人と共にゆっくり振り向く。
そこには、燕尾服に身を包み、金色の長髪を一纏めにした長身で細身の男性が立っていた。
「ん? どうしたフェビル?」
「いえ、何も……」
(まさか、ここにあの方々がいるなんて……)
「本当か?」
「はい、何もありません」
「そうか。それなら良いのだが……それで、あなた方は一体誰ですか?」
(ここに誰かが来るなんて聞いていないのだが)
2人を見た途端、明らかに挙動不審になったフェビルをよそに、警戒心を強めたルベルが慎重に問い質す。
すると、燕尾服をきた男性が紺碧の瞳でルベルとフェビルを見やると、紳士的な笑みを浮かべて深々とお辞儀をした。
「初めまして、ルベル団長にフェビル団長」
「っ!? どうして、俺たちの名前を?」
マジックバックから杖を取り出したルベルを見て、燕尾服を着た男性が頭を上げると胸に手を当てた。
「もちろん、今回の案内役を務めますので存じ上げていても何ら不思議ではないかと」
「案内役? そんなものがあると聞いていなかったのだが……フェビル、何か聞いているか?」
「あっ、いえ……私も何も」
困惑するルベルとフェビルに、燕尾服を着た男性が片手を上げるとそのまま森の方に向ける。
「実は、この森は我が家が管理しているのでございます」
「我が家?」
「はい」
そうして、笑みを浮かべた燕尾服を着た男性が改めて挨拶をする。
「改めてご挨拶を。私は、ヴィルマン侯爵領の屋敷で執事をしておりますジルと申します」
「ヴィルマン侯爵領……ということは、ここはヴィルマン侯爵領なのですか?」
疑問を口にするルベルの少し後ろで、シトリンがメストに再び小声で聞いた。
「メスト、ヴィルマン侯爵領ってここじゃないよね?」
「あぁ、ここは確か王国の直轄領だったはず」
幼い頃から騎士としての鍛錬と次期当主としての勉強をしていたメストは、今いる場所がどのような場所なのか知っていた。
ゆえに、どうしてここに侯爵領の屋敷で働いている執事が案内役としているのか分からないでいた。
すると、笑みを潜めたジルが小さく首を横に振る。
「いえ、ここは王国の直轄領なのですが……実は3年前、宰相閣下から『この土地はヴィルマン侯爵家が管理しろ』とお達しがありまして、そこから我がヴィルマン侯爵家が管理しているのです」
「つまり、宰相閣下の指示でここの管理をしていると?」
「さようでございます」
ジルの返事を聞いたルベルは、思わず目を細める。
(全く、どこまで好き勝手すれば気が済むのだ……待てよ)
「では今回、あなた方が来たのは……」
「はい。お2人方がこの場所を調査することをどこかで嗅ぎ付けた宰相閣下が、旦那様に2人の案内役にするよう命じられたのです。ですが、仕事で多忙を極める旦那様が王都を離れるわけにはいきませんので、僭越ながら侯爵領の屋敷で執事をしております私が案内役を仰せつかったのです」
「つまり、ジル様は案内役という名の監視役ということでしょうか?」
「そのように捉えていただいても構わないかと」
優雅に頭を下げるジルを見て、ルベルとフェビルは揃って苦い顔をすると、頭を上げたジルが安心させるように微笑んだ。
「ですがご心配なく。監視役といっても、お2人を自由にさせるだけの名目だと旦那様から伺っておりますので」
「要は、名ばかり監視役ってことで良いんですね?」
「はい。ですから、私のことは物見遊山に来た、ただの傍迷惑な観光客と思っていただいてください」
「いやいや、いくらなんでもそれはさすがに父上が許さ……」
「分かりました」
「フェビル団長!?」
フェビルの返事を聞いて、声を上げて驚いたメスト。
そんな彼を見たフェビルが小さく溜息をついた。
「ヴィルマン侯爵様が、俺たちを自由にするために執事を寄こしたって言うならそれで良いじゃねぇか。それに、そちらの執事さんだって、丸腰で来たってわけではないだろう?」
「さすが、フェビル団長ですね」
「……まぁ、後ろに控えている騎士に気づかない騎士は、さっさと辞めちまった方が良い」
そう言って、気まずそうにジルから視線を逸らしたフェビルは、そのままジルの後ろに広がる森に目を移す。
そして、フェビルの視線に気づいたジルが後ろを振り向いた時、森の奥から使い込まれた全身鎧に身を包んだ男が現れた。
「ご紹介します。彼の名はザール。今回、私の護衛役として同行しているヴィルマン侯爵家の私兵でございます。これでも一応、腕は立ちますのでご安心を」
「……まぁ、そうでしょうね」
(何せ、その人はあの方の長男なのですから)
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