木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第5章 止まっていた運命が動き出す

第261話 召喚魔法

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「そうだな。ここには2人の団長と2人の近衛騎士がいる。それを相手にして戦うというのか?」


 ジルの言葉に同意したルベルがジルの隣に立つ。
 その後ろで騎士4人は静かに剣の柄に手をかける。
 すると、口角を上げたリアンが得意げに鼻を鳴らした。


「フン! 貴様達下民共に、高貴な俺が自ら手を下すわけがないだろうが」


 そう言って、リアンが目の前にいる6人に向かって手を伸ばすと黒い魔法陣を展開した。


「っ!? おい、ザール! 彼は確か、闇魔法を使えないのではなかったのか!?」


 慌てて後ろを向いて声を荒げたジルに対し、護衛騎士としてジルを守ろうとジルを後ろに下がらせたザールは、背丈程の大剣を構えると静かに口を開く。


「えぇ、聞いた話では確かに彼は闇魔法が使えません」
「では、どうして彼の魔法陣は黒く染まっている!」


 肩を掴んできたジルを一瞥したザールは、視線をリアンに向けると両手で大剣を強く握った。


「恐らく、魔法の種類としては非属性魔法に分類されますが、使う魔法の中身は闇魔法そのものなのでしょう」
「どういう……」
「ともかくジル様、早くお下がりください。今の彼は、間違いなく闇魔法を使います」
「わっ、分かった!」


 (魔法の種類は非属性魔法だが、中身は闇魔法そのもの……一体、どういうことだ?)

 ザールの言葉に納得出来ないジルが、ザールの言う通りに後ろへ下がった瞬間、下卑た笑みを浮かべたリアンが黒い魔法陣をそのまま地面に当てた。


「《テイム》!」


 その瞬間、大きく目を見開いたルベルが慌ててザールの隣に立った。


「まさか、召喚魔法か!?」
「そうだ! だが、俺の召喚魔法はただの召喚魔法じゃない!」


 得意げな笑みを浮かべるリアンが、自分の周りに複数の黒い魔法陣を展開すると、魔法陣から禍々しい気配と共に異形の物が現れ、険しい顔をした6人が各々得物を構えた。


「この気配、もしかしなくても……」
「ギャハハハッ! その通り! 俺の召喚魔法は、魔物を召喚することが出来る魔法なんだ!」


 下品な笑い声と共に召喚されたのは、動物とは異なる形を持ち、魔力を持つ生きとし生けるものなら何でも食ってしまう魔物だった。


「どうだ、驚いたか! 家族には言っていないが、これでもれっきとした闇魔法なんだぞ!」
「……あぁ、そのようですね」


 ペトロート王国では、召喚魔法は人間に害を与えない動物を召喚したり、その場にいた動物を一時的に手懐けたりする魔法として非属性魔法に分類されていた。
 だが、ごく稀に悪魔や魔物などを召喚出来る人間がおり、その場はその人物が使う召喚魔法だけ闇魔法として制限をつけるのだが……

 (親父もダリアも俺の召喚魔法を闇魔法として認めてくれなかった。お陰で、家族での立ち位置は一番低く、屋敷の使用人達からはどんな目で見られたか……)

 家族や使用人達から向けられる嘲笑を思い出し、思わず拳を握るリアン。
 しかし、大小様々な魔物を目の当たりしてその場にいる騎士や魔法師が警戒する光景に、溜飲が下がったリアンは再び下卑た笑みを浮かべた。


「でもまぁ、これだけで驚いてくれては困るなぁ」
「どういうことだ」
「それは、すぐに分かる」


 愉しそうに嗤うリアンが黒い魔法陣を展開すると、召喚した魔物に向かって命令を下す。


「《コール・ユア・フレンズ》!」


 リアンの命令に従い、召喚された魔物達が一斉に咆哮を上げる。
 その咆哮に、リアンやザールを除いた5人が咄嗟に耳を塞ぐと、森の奥から魔物の大群が近づいてくる。


「ジル様、森の奥から……」
「あぁ、間違いなく今の咆哮で呼んだのだろう」


 咆哮が止んだタイミングで耳を塞ぐのを止めたジルは、嗤っているリアンを睨みつけると森の奥に目をやった。
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