木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第5章 止まっていた運命が動き出す

第274話 では、特訓を始めましょう

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「……なるほど、ではマーザスに解呪魔法をかけてもらったのですね?」
「そうです」


 泣き止んで落ち着いたカトレアに帝国でのことを聞いたロスペルは、背もたれに体を預けると片手で目を覆った。

 (まぁ、我が兄弟子であり悪友が好奇心よりも約束を優先してくれただけでも良しとしましょう)


「あと、父上にも感謝しなくてはなりませんね」
「師匠?」


 (作戦通りとはいえ、2人をマーザスに引き合わせたのは父上の手腕に他ならないのだから)

 思わず笑みを浮かべたロスペルは、背もたれに体を預けるのを止めると、小首を傾げているカトレアに向かって片手を差し出す。


「それよりも、帝国から帰ってきたということは、私の杖を持って帰ってきているということですね?」
「もちろんです! 師匠!」


 満面の笑みで元気よく返事をしたカトレアは、腰に携えているマジックバックから銀色の杖を取り出すとロスペルに渡した。


「こちらです、師匠」
「ありがとう。よく頑張りましたね」


 嬉しそうに微笑んだロスペルは、ようやく帰ってきた銀色の杖を見つめると感触を確かめる。


「マーザスが毎日手入れをしてくれたのか、刻まれた魔法陣が消えていませんし、あの頃と同じようにすんなりと手に馴染みます」


 じっくりと確認した後、縦や横に小さく振ったロスペルは、瞬時に自分の魔力を練るとそのまま杖に魔力を流す。
 すると、杖全体が白い光に包まれた。


「どうやら問題なさそうですね」


 (さすが、帝国の筆頭宮廷魔法師といったところでしょうか)

 満足げに頷いたロスペルは、ソファーの端に立てかけた。
 そして、カトレアがつけている銀色の腕輪を一瞥すると、険しい顔でカトレアに視線を戻す。


「カトレア嬢。その銀色の腕輪を付けているということは……」
「はい、私も師匠と同じく計画に加わります」


 銀色の腕輪ごと手首を包み、真剣な表情で答えるカトレアに、ロスペルは静かに目を細める。


「良いのですか? 今の君は、それなりに守らないといけない人達がいるのではないのですか?」


 (今の彼女には『稀代の天才魔法師』。それ故に、国に楯突くような真似はしては……)


「でも、師匠はお父上と同じように大勢の国民を傷つけるつもりはありませんよね?」
「そ、それは……」


 僅かに目を泳がせたロスペルを見て、カトレアは少しだけ顔を寄せる。


「師匠。私は、この国の宮廷魔法師として、1人孤独に戦っている親友を助けたいのです!」
「っ!?……それは、フリージアのことを言っているのですか?」
「もちろんです!」


 (そのために私は、この銀色の腕輪を付けているのだから!)


「本当に、良いのですね?」
「はい!!」


 親友を助けるためなら、今の地位を捨てても良いし、親しくしている人達を敵に回しても構わない。
 そんな弟子の揺るぎない覚悟を目の当たりにしたロスペルは、少しだけ目を伏せると考え込んだ。

 (本当は止めた方が良いのでしょう。ですが、ここまで覚悟が決まっているのなら……)

 覚悟を宿した薄紫色の瞳とかち合い、呆れたように笑ったロスペルは徐に立ち上がる。
 そして、カトレアに再び手を差し出した。


「ならば、今から私とあなたは同志です。よろしくお願いしますね。カトレア・ティブリーさん」
「は、はい! よろしくお願い致します! ロスペル・サザランス師匠!」


 慌てて立ち上がったカトレアと握手を交わしたロスペルは、彼女がつけている銀色の腕輪に視線を落とす。

 (恐らく、父上もカトレア嬢の頑固さに負けたのでしょうね)

 小さく笑みを浮かべたロスペルは、カトレアから手を離すと立てかけたあった杖を取る。


「では、早速特訓をしないといけないですね」
「特訓ですか?」
「そう、来るべき日に備えて、あの頃と同じように全属性が使える特訓をしなくては」
「うぐっ!」
「おや? 出来ないのですか? それでは、フリージアを救うなんて夢のまた夢ですよ?」
「ううっ……やります! やってみせます!」


 (それで、フリージアが助けられるのならば!)

 師匠から煽られて貴族令嬢らしからぬやけくそになったカトレア。
 それを見て、ロスペルは安堵の笑みを零すと小さく拳を握った。
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