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第5章 止まっていた運命が動き出す
第282話 ほっとけない
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「私のことですか?」
珍しく困惑しているカミルに、メストは小さく頷く。
「あぁ、俺は弟子として師匠であるカミルのことを助けたい。だから知りたいんだ」
(本当は『友人として救いたい』と言いたいが……貴族と平民ではさすがにカミルに迷惑をかけるよな)
カミルと出会って2年。
カミルを『師匠』として一緒に過ごしてから、メストの中でカミルのことを友人のような身近で大切な存在になっていた。
(まさか、メスト様がそんなことを思っていたなんて)
誠実なメストのアイスブルーの瞳とかち合あったカミルは、彼が心の底から知りたいと思っていることを汲み取る。
それでも、カミルは彼の誠実を裏切るように嘘をつく。
大切な彼を自分のことに巻き込みたくなかったから。
「すみません、私もどうして使えるのか分からないのです」
「……そうか、分かった」
(ごめんなさい、メスト様。これだけはどうしても言えないの)
申し訳なさそうに目線を下げたメストを見て、沸いてきた罪悪感から目を背けようとカミルは、視線を前に移して離していた手綱を握ろうとした。
その時、メストが再びカミルの手を握る。
「っ!?」
「カミル。これだけは言わせて欲しい」
目を見開くカミルに、メストは真剣な表情で口を開く。
「今の俺は、何があってもカミルの味方だ」
昼下がりの王都の路地裏で言われたメストの言葉。
その言葉に、彼に噓をつくことしか出来ないカミルは、思わず彼に縋り付きそうになった。
自分に課せられた約束も何もかも忘れて。
「それにしても珍しいですね。あなた様が私のことを聞くなんて」
メストの真剣な言葉にカミルが曖昧な返事をした後、馬車は路地裏から王都の大通りに戻り、次なる目的地に向けてひた走っていた。
(普段は、今のメスト様のことについての話や特訓や仕事での話ばかりだったから)
不思議そうに小首を傾げたカミルに、メストは思わず苦笑した。
「まぁ、俺も森での出来事が無ければ、今でもカミルが自分のことを話してくれるまで待っていただろうし」
「えっ? 待っていてくれたのですか?」
カミルが驚いたように目を見開くと、メストは優しそうな笑みを浮かべて小さく頷く。
「あぁ、勝手に待っていた。カミル、あまり自分のことを話したがらなそうだったから」
「まぁ、そうですね」
(今のあなた様に私のことを知って欲しくなかったから)
無意識に手綱を強く握ったカミルを見て、小さく拳を作ったメストは人知れず溜息をつくと真剣な表情でカミルの横顔を見つめる。
「だが、結果的に却ってカミルを傷つけてしまった。ごめん、勢いとはいえ傷つけるようなことを聞いてしまって」
「良いのです。私も大人気なことを言って傷つけてしまったのですから」
『家族だったら、何をしてくれるのですか?』
(あれは本当に大人気なかった。もう少し大人な答えが出てもおかしくないはずだった)
互いに互いのことが申し訳なくなり、少しだけ2人の間に気まずい空気が流れた時、ステインが軽く嘶いた。
それを聞いたカミルは、いつもの店を見つけて小さく笑みを零す。
「フフッ、ステインが『もうすぐでいつもの魔石屋に着くから、いい加減仲良くしろ』って言っていますよ」
「っ!?……そっ、そうだな! すまん、ステイン! もう仲良くなったから大丈夫だ!」
慌ててステインに言い訳をするメストに、ステインは機嫌よく嘶いた。
それを見て再び笑みを零したカミルは、店の近くにある少し広い路地裏に馬車を止めると、荷台に入れていた小さな袋を手に取る。
「では、メストさん。行きましょうか?」
「あっ、あぁ……そう、だな」
すっかり見慣れた無表情のカミルが、珍しく嬉しそうな声でメストの名前を呼んで御者台から降りる。
その一瞬の出来事に、メストは思わず胸を抑える。
(何だ、この気持ち……いや、俺はこの気持ちを知っている)
「メストさん、どうされましたか?」
「あっ、いや……何でもない。行こう」
いつもの冷たいカミルの声を聞いて、小さく首を振ったメストは御者台から降りるとカミルの隣に立つ。
(思えば俺、カミルから『メストさん』と呼ばれる度にこんな気持ちになっている気がする)
懐かしいようで、どこか切ない、甘くほろ苦い気持ち。
その気持ちがどうして抱いてしまうのか。
今のメストには分からなかった。
珍しく困惑しているカミルに、メストは小さく頷く。
「あぁ、俺は弟子として師匠であるカミルのことを助けたい。だから知りたいんだ」
(本当は『友人として救いたい』と言いたいが……貴族と平民ではさすがにカミルに迷惑をかけるよな)
カミルと出会って2年。
カミルを『師匠』として一緒に過ごしてから、メストの中でカミルのことを友人のような身近で大切な存在になっていた。
(まさか、メスト様がそんなことを思っていたなんて)
誠実なメストのアイスブルーの瞳とかち合あったカミルは、彼が心の底から知りたいと思っていることを汲み取る。
それでも、カミルは彼の誠実を裏切るように嘘をつく。
大切な彼を自分のことに巻き込みたくなかったから。
「すみません、私もどうして使えるのか分からないのです」
「……そうか、分かった」
(ごめんなさい、メスト様。これだけはどうしても言えないの)
申し訳なさそうに目線を下げたメストを見て、沸いてきた罪悪感から目を背けようとカミルは、視線を前に移して離していた手綱を握ろうとした。
その時、メストが再びカミルの手を握る。
「っ!?」
「カミル。これだけは言わせて欲しい」
目を見開くカミルに、メストは真剣な表情で口を開く。
「今の俺は、何があってもカミルの味方だ」
昼下がりの王都の路地裏で言われたメストの言葉。
その言葉に、彼に噓をつくことしか出来ないカミルは、思わず彼に縋り付きそうになった。
自分に課せられた約束も何もかも忘れて。
「それにしても珍しいですね。あなた様が私のことを聞くなんて」
メストの真剣な言葉にカミルが曖昧な返事をした後、馬車は路地裏から王都の大通りに戻り、次なる目的地に向けてひた走っていた。
(普段は、今のメスト様のことについての話や特訓や仕事での話ばかりだったから)
不思議そうに小首を傾げたカミルに、メストは思わず苦笑した。
「まぁ、俺も森での出来事が無ければ、今でもカミルが自分のことを話してくれるまで待っていただろうし」
「えっ? 待っていてくれたのですか?」
カミルが驚いたように目を見開くと、メストは優しそうな笑みを浮かべて小さく頷く。
「あぁ、勝手に待っていた。カミル、あまり自分のことを話したがらなそうだったから」
「まぁ、そうですね」
(今のあなた様に私のことを知って欲しくなかったから)
無意識に手綱を強く握ったカミルを見て、小さく拳を作ったメストは人知れず溜息をつくと真剣な表情でカミルの横顔を見つめる。
「だが、結果的に却ってカミルを傷つけてしまった。ごめん、勢いとはいえ傷つけるようなことを聞いてしまって」
「良いのです。私も大人気なことを言って傷つけてしまったのですから」
『家族だったら、何をしてくれるのですか?』
(あれは本当に大人気なかった。もう少し大人な答えが出てもおかしくないはずだった)
互いに互いのことが申し訳なくなり、少しだけ2人の間に気まずい空気が流れた時、ステインが軽く嘶いた。
それを聞いたカミルは、いつもの店を見つけて小さく笑みを零す。
「フフッ、ステインが『もうすぐでいつもの魔石屋に着くから、いい加減仲良くしろ』って言っていますよ」
「っ!?……そっ、そうだな! すまん、ステイン! もう仲良くなったから大丈夫だ!」
慌ててステインに言い訳をするメストに、ステインは機嫌よく嘶いた。
それを見て再び笑みを零したカミルは、店の近くにある少し広い路地裏に馬車を止めると、荷台に入れていた小さな袋を手に取る。
「では、メストさん。行きましょうか?」
「あっ、あぁ……そう、だな」
すっかり見慣れた無表情のカミルが、珍しく嬉しそうな声でメストの名前を呼んで御者台から降りる。
その一瞬の出来事に、メストは思わず胸を抑える。
(何だ、この気持ち……いや、俺はこの気持ちを知っている)
「メストさん、どうされましたか?」
「あっ、いや……何でもない。行こう」
いつもの冷たいカミルの声を聞いて、小さく首を振ったメストは御者台から降りるとカミルの隣に立つ。
(思えば俺、カミルから『メストさん』と呼ばれる度にこんな気持ちになっている気がする)
懐かしいようで、どこか切ない、甘くほろ苦い気持ち。
その気持ちがどうして抱いてしまうのか。
今のメストには分からなかった。
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