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第5章 止まっていた運命が動き出す
第293話 弱点と制約
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「アハハハハッ! ほらほら、私を倒したければまずはその肉壁をどうにかしなさいよ!」
「…………」
(ごめんなさい、私の魔法が間に合わなかったばっかりに)
下卑た笑い声を上げるダリアをよそに、魅了魔法にかかった侍女を見て、小さく下唇を噛んだカミルは静かにレイピアを構えると透明な魔力を纏わせる。
すると、待っていましたとばかりにダリアがニヤリと歪に口角を上げる。
「あらあら、愚民如きが貴族を傷つけてもいいのかしら?」
「…………」
(そう言えば、今のペトロート王国ではこの魔法は、忘れ去られた魔法だったわね)
ニヤニヤと嗤うダリアの言葉を聞いて、怒りで沸騰しかけていた頭が一気に冷えたカミルは、勝利を確信したように口角を上げた。
「いえ、愚民である私がお貴族様を傷つけるようなことはしませんよ」
「そうなの!? だったら、そこの肉壁に殺される? それはそれで一興なんだけど!」
「っ!!」
(あなた、それでも宰相家令嬢なの!?)
貴族としてあるまじき言葉を堂々と口にしたダリアに、カミルは再燃しそうになる怒りを抑えようとレイピアに力を込める。
そんな平民を見たダリアは、面白くなさそうに舌打ちを打った。
「チッ! 貴族の中で一番慈悲深い私が、わざわざ忠告してあげているのに……本当愚民の考えていることは理解出来ないわ」
「私も、貴族の中で一番下品であるあなたの考えることは理解出来ないわ」
「何ですって!?」
(しまった、また本音が!)
咄嗟に口元を抑えたカミルだったが、プライドの塊であるダリアには遅かった。
「許さない! 許さない! 許さない! そこの肉壁! さっさとあの愚民に制裁を下しなさい!」
「かしこまりました、お嬢様」
宝石が散りばめられたハイヒールで地団駄を踏んだダリアは、怒りで顔を真っ赤にしたまま目の前にいる侍女に命令を下す。
すると、魅了魔法にかかった侍女がカミルに向かって手を伸ばすと緑色の魔法陣を展開した。
(ごめん、今からあなたを救うから)
自我を失った侍女を見て深く息を吐いたカミルは、レイピアに魔力を纏わせると切っ先を侍女に向けた。
「《ウインドカ……》」
「《直接干渉》」
侍女が魔法を唱える前に魔法陣を打ち消したカミルは、すぐさま足元とレイピアに魔力を纏わせた。
「何しているのよ! さっさと愚民を殺し……」
「させないわよ」
(これ以上、この綺麗な侍女に罪を着させない!)
足元の魔力を弾け飛ばしたカミルは、一直線に侍女のところに飛んだ。
「少し痛いけど我慢してね」
「うっ!」
透明な魔力を纏わせたレイピアの切っ先で侍女の腹を突くと、呻き声を上げた侍女がカミルに向かって倒れ込んだ。
「アハハハッ! やっぱり殺したんじゃ……」
「言っておくけど、殺してないわよ」
「はぁ?」
レイピアを横に振って纏わせていた魔力を離散させたカミルは、倒れ込んできた侍女をゆっくりと下ろす。
すると、先程から心配そうな顔で見ていた別の侍女が、カミルのところに駆けよってくると、下ろされた侍女の顔を覗き込んだ。
「本当だわ。お腹から血を流していない」
そこには、顔から血を流しているだけで、レイピアで突いたお腹から血を流していない侍女が目を閉じて眠っていた。
すると、カミルが駆け寄ってきた別の侍女の肩を掴んだ。
「それよりも、この人に早く治癒魔法をかけてどこかへ運んでもらえるかしら?」
「はっ、はい!」
カミルの頼みを聞いた別の侍女が、遠くで控えている他の侍女達を呼ぶと、持っていた魔道具で侍女の綺麗な顔に負った怪我を治癒する。
そして、控えていた他の侍女達が来ると機敏な動きで倒れている侍女をその場から離れさせた。
「ねぇ、そこの愚民。一体どういうことか説明してくれるかしら?」
「それは、貴族であるあなたが知ることではありません」
「っ!!!!」
(むしろ、パパの傀儡であるあなたに知られるわけにはいかないわ)
怒りで眉を引き攣らせているダリアを一瞥し、小さく溜息をついたカミルは使い込まれたレイピアに目を向ける。
(火属性魔法の弱点が水属性魔法であるように、どんな魔法にも弱点がある。そして、私が使っている無効化魔法にも弱点がある)
透明な魔力であらゆる魔法を無効化する無効化魔法には、『あらゆる魔法を無効化する代わりに、魔力を纏わせた状態での物理攻撃はほぼほぼ極端に低くなる』という弱点を持っている。
故に、レイピアを持ったカミルが侍女に対して全力の物理攻撃をしても、透明な魔力を纏った状態では女性1人を気絶する程度の攻撃力しか出ないのだ。
そのため、物理攻撃で相手を打ちのめす際は、必ず魔力を纏わせていない状態でしないといけない。
また、『発動する際、必ず無機物の媒介を使わなければならない』という制約がある。
だから、カミルは無効化魔法を使う時は必ずレイピアを媒介にしている。
(それに、相手の意識を刈り取れば魅了魔法はあっという間に解けるのよね)
ダリアの魅了魔法にもまた弱点と制約がある。
それは、『相手の意識がこちらに向いている時でしか魔法をかけられない』というものである。
つまり、相手の意識が逸れたり、相手が意識を失ったりすれば、魅了魔法の効果が解けるのだ。
(まぁ、多少強引な手段をとってあの侍女に痛い思いをさせてしまったのだけど)
レイピアで攻撃をした侍女を内心申し訳思いつつ、カミルが冷たい目でダリアを見ていると、突然、ダリアが再び下卑た笑みを浮かべた。
「ウフフッ、それならこうするしかないわね!」
(一体、何をしようと……)
不審がるカミルが目を細めた瞬間、黒い魔力を指先に纏わせたダリアが空に向かって意気揚々と指を鳴す。
すると、今まで大人しくしていた野次馬達から急にざわめき始めた。
「…………」
(ごめんなさい、私の魔法が間に合わなかったばっかりに)
下卑た笑い声を上げるダリアをよそに、魅了魔法にかかった侍女を見て、小さく下唇を噛んだカミルは静かにレイピアを構えると透明な魔力を纏わせる。
すると、待っていましたとばかりにダリアがニヤリと歪に口角を上げる。
「あらあら、愚民如きが貴族を傷つけてもいいのかしら?」
「…………」
(そう言えば、今のペトロート王国ではこの魔法は、忘れ去られた魔法だったわね)
ニヤニヤと嗤うダリアの言葉を聞いて、怒りで沸騰しかけていた頭が一気に冷えたカミルは、勝利を確信したように口角を上げた。
「いえ、愚民である私がお貴族様を傷つけるようなことはしませんよ」
「そうなの!? だったら、そこの肉壁に殺される? それはそれで一興なんだけど!」
「っ!!」
(あなた、それでも宰相家令嬢なの!?)
貴族としてあるまじき言葉を堂々と口にしたダリアに、カミルは再燃しそうになる怒りを抑えようとレイピアに力を込める。
そんな平民を見たダリアは、面白くなさそうに舌打ちを打った。
「チッ! 貴族の中で一番慈悲深い私が、わざわざ忠告してあげているのに……本当愚民の考えていることは理解出来ないわ」
「私も、貴族の中で一番下品であるあなたの考えることは理解出来ないわ」
「何ですって!?」
(しまった、また本音が!)
咄嗟に口元を抑えたカミルだったが、プライドの塊であるダリアには遅かった。
「許さない! 許さない! 許さない! そこの肉壁! さっさとあの愚民に制裁を下しなさい!」
「かしこまりました、お嬢様」
宝石が散りばめられたハイヒールで地団駄を踏んだダリアは、怒りで顔を真っ赤にしたまま目の前にいる侍女に命令を下す。
すると、魅了魔法にかかった侍女がカミルに向かって手を伸ばすと緑色の魔法陣を展開した。
(ごめん、今からあなたを救うから)
自我を失った侍女を見て深く息を吐いたカミルは、レイピアに魔力を纏わせると切っ先を侍女に向けた。
「《ウインドカ……》」
「《直接干渉》」
侍女が魔法を唱える前に魔法陣を打ち消したカミルは、すぐさま足元とレイピアに魔力を纏わせた。
「何しているのよ! さっさと愚民を殺し……」
「させないわよ」
(これ以上、この綺麗な侍女に罪を着させない!)
足元の魔力を弾け飛ばしたカミルは、一直線に侍女のところに飛んだ。
「少し痛いけど我慢してね」
「うっ!」
透明な魔力を纏わせたレイピアの切っ先で侍女の腹を突くと、呻き声を上げた侍女がカミルに向かって倒れ込んだ。
「アハハハッ! やっぱり殺したんじゃ……」
「言っておくけど、殺してないわよ」
「はぁ?」
レイピアを横に振って纏わせていた魔力を離散させたカミルは、倒れ込んできた侍女をゆっくりと下ろす。
すると、先程から心配そうな顔で見ていた別の侍女が、カミルのところに駆けよってくると、下ろされた侍女の顔を覗き込んだ。
「本当だわ。お腹から血を流していない」
そこには、顔から血を流しているだけで、レイピアで突いたお腹から血を流していない侍女が目を閉じて眠っていた。
すると、カミルが駆け寄ってきた別の侍女の肩を掴んだ。
「それよりも、この人に早く治癒魔法をかけてどこかへ運んでもらえるかしら?」
「はっ、はい!」
カミルの頼みを聞いた別の侍女が、遠くで控えている他の侍女達を呼ぶと、持っていた魔道具で侍女の綺麗な顔に負った怪我を治癒する。
そして、控えていた他の侍女達が来ると機敏な動きで倒れている侍女をその場から離れさせた。
「ねぇ、そこの愚民。一体どういうことか説明してくれるかしら?」
「それは、貴族であるあなたが知ることではありません」
「っ!!!!」
(むしろ、パパの傀儡であるあなたに知られるわけにはいかないわ)
怒りで眉を引き攣らせているダリアを一瞥し、小さく溜息をついたカミルは使い込まれたレイピアに目を向ける。
(火属性魔法の弱点が水属性魔法であるように、どんな魔法にも弱点がある。そして、私が使っている無効化魔法にも弱点がある)
透明な魔力であらゆる魔法を無効化する無効化魔法には、『あらゆる魔法を無効化する代わりに、魔力を纏わせた状態での物理攻撃はほぼほぼ極端に低くなる』という弱点を持っている。
故に、レイピアを持ったカミルが侍女に対して全力の物理攻撃をしても、透明な魔力を纏った状態では女性1人を気絶する程度の攻撃力しか出ないのだ。
そのため、物理攻撃で相手を打ちのめす際は、必ず魔力を纏わせていない状態でしないといけない。
また、『発動する際、必ず無機物の媒介を使わなければならない』という制約がある。
だから、カミルは無効化魔法を使う時は必ずレイピアを媒介にしている。
(それに、相手の意識を刈り取れば魅了魔法はあっという間に解けるのよね)
ダリアの魅了魔法にもまた弱点と制約がある。
それは、『相手の意識がこちらに向いている時でしか魔法をかけられない』というものである。
つまり、相手の意識が逸れたり、相手が意識を失ったりすれば、魅了魔法の効果が解けるのだ。
(まぁ、多少強引な手段をとってあの侍女に痛い思いをさせてしまったのだけど)
レイピアで攻撃をした侍女を内心申し訳思いつつ、カミルが冷たい目でダリアを見ていると、突然、ダリアが再び下卑た笑みを浮かべた。
「ウフフッ、それならこうするしかないわね!」
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