木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第5章 止まっていた運命が動き出す

第299話 悪友との連携

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「おいおい、本気かよ?」


 (魅了魔法って、操った奴の魔法も使えるのかよ。それに、騎士全員が一斉に魔法を撃ったら俺たちだけじゃなく、周りにいる野次馬達も巻き込むぞ)

 黄金の騎士達が一斉に魔法陣を展開し、ラピスが顔を引き攣らせていると、周囲に目を配っていたカミルがラピスの前に立った。


「フリージア嬢?」
「ラピスさん、私の後ろにいて」
「あっ」


 (なるほど、『帝国の悪魔』と呼ばれた力を使うんだな?)

 凛々しい背中で透明な魔力を纏わせるカミルに、兜の下で笑みを零したラピスは双剣を鞘に収めた。


「奴らの魔法を打ち消したらすぐさま魔法を撃つ。それでいいか?」
「えぇ、大丈夫です。あと、私の魔法を覚えていてくれたのですね」
「当たり前だろ?」


 得意げに笑うラピスを一瞥したカミルは、透明な魔法を纏わせたレイピアを地面に突き刺す。


「《範囲干渉》」


 小声でカミルが詠唱した瞬間、黄金の騎士達の展開した数多の魔法陣が一瞬で消えた。


「なっ!?」


 遠くで啞然とするダリアに対し、ラピスはニヤリと笑みを零すとすぐさま双剣を引き抜いて魔法陣を展開した。


「《ライトニング》!」
「「「「「ぐがぁ!!!!!」」」」


 澄み渡る青空から落ちた雷に、黄金の騎士達は再び地面に這いつくばった。


「さすがね。タイミングもバッチリ。でも、的を騎士達のみに絞っているので、わざわざ剣を鞘に収めなくても良かったのよ?」


 (《範囲干渉》は宙に展開された複数の魔法陣を打ち消す魔法。だから、双剣や鎧に付与された魔法までは打ち消すことは出来ない)


「まぁ、念には念だ。それにしても、さすが天才魔法師の妹。魔力操作は完璧じゃねぇか」
「いえ。それよりも、魅了魔法が解けたわけじゃないから気を引き締めて」
「了解!」


 真剣な表情でレイピアを構えたカミルに、笑みを深めたラピスが双剣を構えると、不機嫌そうに鼻を鳴らしたダリアが2人に向かって手を伸ばす。


「フン、それなら私自らが魔法で屠ってあげるわ」


 2人を見て、なぜか勝ち誇ったような笑みを浮かべたダリアは、手のひらで赤い魔法陣を展開する。

 (展開された魔法陣の大きさからして、さっきから撃っているふざけた中級魔法で間違いなさそうね。だったら……!)

 魔力を練るのに時間がかかっているダリアを一瞥すると、カミルはラピスの横に移動してそのまま耳元に口を寄せる。


「ラピス様、あの女が魔法を放ったら雷属性の初級魔法を打って。それも、剣を使わずに」
「はあっ!?」


 (『剣を使わず』って、つまり大した威力の無い初級魔法を放てってことかよ)

 突然のカミルからの無茶ぶりに近い指示に、声を荒げたラピスはすかさず反論する。


「お前、どうみてもあれは火属性の中級魔法じゃねぇか! そもそも、雷と火の相性は最悪だから、火じゃなくて水を打った方が……!」
「大丈夫。私の見立てでは、雷属性の初級魔法で打ち消せるから」
「本当か?」
「えぇ、本当よ」


 (さっき、無効化する時に初級魔法を無効化する程度に魔力を絞ったら問題無く無効化出来た。だったら、ラピス様の騎士として洗練された魔法なら、初級魔法でもあのふざけた魔法を打ち消せる!)

 力強く頷いたカミルの意思の宿った強い瞳に、大きく溜息をついたラピスは双剣に纏わせていた魔力を離散させると、再び双剣を鞘に収めた。


「はぁ、分かった。そこまで言うなら信じる。だが、もし打ち消せなかったら……」
「その時は、私ので打ち消すわ」
「それは頼もしい」


 レイピアを軽く掲げたカミルを見て、ラピスが安堵の笑みを浮かべた時、魔力を練り終えたダリアが魔法を唱えた。


「《ルビーボール》!」
「はあっ!?」


 (『ルビーボール』!? 何だ、そのふざけた魔法は!?)


「ラピスさん」
「あっ」


 (そうだった、雷の初級魔法だったよな!)

 カミルから名前を呼ばれたラピスは、目の前に迫った火球に向かって魔法陣を展開すると初級魔法を放つ。


「《ライトニング》!」


 すると、火球と雷が相打ちし、白い魔力となって消えた。


「チッ、こうも私の美しい魔法が消えるなんて本当にむかつくわね! あんた達!」


 貴族令嬢らしからぬ舌打ちと罵りを口にするダリアを他所に、啞然した表情で手を伸ばしていたラピスはカミルに詰め寄るとダリアを指さした。


「おい! 何だよ、あのふざけた魔法は! いくら何でもあれは無いだろう! あれは!」
「ちょっと! 高貴な私の魔法を『あれ』呼ばわりしないで頂戴!」


 ラピスの言葉が耳に届いたダリアは、顔を真っ赤にしてラピスに向かって扇子を向ける。
 その貴族令嬢らしからぬ態度を見て、カミルが呆れたように溜息をつくとラピスに小声で囁く。


「『高貴な私には、ありきたりな魔法は相応しくない』だと」
「……カトレアとロスペル様が聞いたら、間違いなく全力の上級魔法が飛んでくるな」
「それに関しては同意するわ」


 (それと、ロスペル兄様の場合は上級じゃなくて超級を放つと思うわ)
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