木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第5章 止まっていた運命が動き出す

第308話 メストVSラピス

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「さて、あなた様のお仲間様は全員気を失っていますが、どうされますか? 俺的にはこのまま撤退して欲しいのですが」


 カミルがメイド達を無力化した頃、メストと合流したラピスは、ダリアに冷たい視線を向けながら撤退を促していた。

 (まぁ、丁度フリージア嬢がメイド達を大人しくしてくれたし、あとはこのまま引き下がって欲しいのだが)

 双剣を構えたラピスがダリアの返事を待っていると、悔しそうな顔をしたダリアの視線がメストに移り、途端に下卑た笑みを浮かべる。


「あら、まだいるじゃない」
「っ!」


 (まさか!)


「隊長! 今すぐ俺の後ろに……」
「《チャーム》」


 ダリアの思惑に気づいたラピスが、慌てて首元からネックレスを取り出すとメストを後ろに引き下がらせようとした。
 しかし、それよりも早く、ダリアが人差し指に灯した黒い魔力をメストの額に当たり、目にハイライトを失ったメストがゆっくりとダリアの前に立った。


「クソッ!」
「アハハハッ! さぁ、そこにいる下民を殺しなさい!」


 高笑いをするダリアから命じられたメストは、片手剣を構えるとラピスに向かって素早い一撃を与える。


「うぐっ!」


 (あの女の影響下にあるとはいえ、日頃鍛錬を積んでいる隊長の一撃はさっきの騎士共とは明らかに違う!)

 メストの一撃を双剣で防いだラピスは、体勢を立て直そうと後ろに下がる。
 だが、それを許さないメストは、ラピスとの距離を一気に詰めると隙を与えない追撃を繰り出す。


「うっ!」


 (まともに食らっていてはこちらが負ける。だが、隊長の洗練された攻撃から隙を作ることが出来ない!)


「アハハハッ!! まさか、下民同士の醜い戦いがここまで面白いなんてね!」
「ぐっ!」


 (仕方ない、こうなったら強引に隙を作ってやる!)

 メストの隙を与えない連撃を双剣で食らいついているラピスは、顔を歪ませると強化魔法を使って思い切り大きく後ろに下がる。
 それに合わせてメストも強化魔法で一気に距離を詰めた時、ラピスは黄色い魔石が嵌め込まれた剣をメストの方に突き出し、切っ先から魔法陣を展開した。


「っ!」
「《ライトニング》!」


 接敵する直前に気づいたメストは、雷が当たる直前で後ろに下がる。


「さすが隊長。操られていても、反射神経は鈍りませんね」


 無言で睨みつけるメストに、満足げに笑ったラピスは黄色い魔石が嵌め込まれた剣を肩に担ぐ。
 すると、メストの後ろから火球が飛んできた。


「《ルビーボール》!」
「《ウォーターショット》」


 火球を水の弾で打ち消したラピスは、メストで苦々しい顔をするダリアに目を向ける。


「なぁ、俺にその魔法が効かないっていい加減学習してくれませんか?」
「チッ! 下民の分際でこの高貴な私を愚弄するなんて!」
「いやいや、至って当たり前のことを指摘しただけですが」


 (というかこいつ、こんなに学習能力が無かったか? 前に会った時はまともに会話出来程度の頭はあったはずだが)


「これも改竄魔法の影響なのか……って、うおっ!」


 ダリアの頭の悪さに違和感を覚えたラピスが首を傾げた時、突進してきたメストの攻撃を辛うじて避けた。


「あの、隊長。今少しだけ考え事をしていて……って、やっぱり聞く耳もたねぇよな!」


 (完全に油断した俺が悪いので!)

 ラピスの言葉を無視して連撃を繰り出すメストは、不意に足を止めるとラピスに向かって手を翳し水色の魔法陣を展開した。
 同時に、ダリアも赤色の魔法陣を展開する。


「っ!」


 (立ち位置からして、2人の魔法がぶつかることはない)


「あの女の魔法はどうにかなるが、問題は洗練されている隊長の魔法だ」


 苦い顔をしたラピスは、双剣に黄色い魔法陣と青色の魔法陣を展開する。

 (水と氷では相性がいまいちではあるが、こうなったら水属性の中級魔法で強引に氷属性の魔法を打ち消すしかないか)


「《アイスショット》」
「《ルベライトショット》!」


 ダリアとメストが同時に魔法を放たれた時、木こりの姿をした平民が腹を括ったラピスの前に現れ、火と氷の弾を透明な魔力で打ち消した。
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