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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第337話 あなただけの罪じゃない
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「「「「っ!?」」」」
心底苦い顔をしたレクシャがノルベルトからの要求を口にすると、その場にいた家族全員が息を呑んで拳を握った。
(ノルベルトめ! お父様になんて酷い選択を!)
家族を大事にしていたレクシャにとって、家族そのものが弱点であり逆鱗であるということは、社交界では暗黙の了解だった。
そんな父の逆鱗を何のためらいもなく触れ、あまつさえそれを取引の条件にしたノルベルトにフリージアが苛立ちを募らせていると、怒りのあまり表情を消したロスペルが静かに口を開く。
「では、父さんはその条件を飲んだということですね」
「……そういうことだ」
顔を顰めながら答える父親を見て、フリージアの目から思わず涙が溢れ出そうになった時、リュシアンが突然ソファーから立ち上がった。
「リュシアン兄様?」
長兄の行動に、驚いて涙をひっこめたフリージアが小首を傾げて名前を呼ぶ。
だが、可愛い妹から名前を呼ばれたリュシアンは、何も聞こえなかったかのように、すたすたと部屋の壁に飾られていた剣を取ると、そのまま部屋を出て行こうとした。
「リュシアン、どこへ行く?」
レクシャの諫めるような声に、ようやく反応したリュシアンは、扉の前で立ち止まると振り返った。
「決まっています、王城です。今なら奴の企みを阻止出来ます」
『止めてくれるな』と言わんばかりに殺気を放つリュシアンに、父が眉を顰めて睨んでいると、今度はロスペルがソファーから立ち上がった。
「けれど、そんなことをしても無駄だというのは、兄さんだって分かっているでしょ?」
「だが! このままだとノルベルトの思い通りに……!」
「リュシアン」
「っ!」
ノルベルトの愚行を聞いて頭に血が上ったリュシアンを、レクシャは他人を威圧するような低い声で名前を呼んで、ソファーに座るように軽く首を横に振る。
「座りなさい。ここで動かれたら、私が引いた意味がなくなる」
「……すみませんでした、父さん」
(本当は、父さんが一番悔しいのは分かっていたはずなのに)
この中で一番悔しいのは父であることを思い出したリュシアンは、頭を冷やすと小さく頭を下げ、そのまま大人しくフリージアの隣に座った。
そんな兄の様子を見て、安堵のため息をついたロスペルは静かに腰を下ろすと、レクシャが椅子から立ち上がった。
「これは、この国の宰相であり、サザランス公爵家の当主である私の失態だ。私は、知っていて止めることが出来なかった」
「あなた」
「父さん」
「父上」
「お父様」
「だが、家族だけは、家族だけはどうしても守りたかったんだ」
「あなた……」
誰よりも傍で夫を見てきたティアーヌは、ソファーから離れて静かに夫の隣に立つと、優しく夫を抱き締めた。
「ティアーヌ」
「確かに、分かっていて止めることが出来なかったのは宰相として大きな失態よ。でもそれは、ノルベルトの野望を知っていたのは私たち家族だって同じ」
「っ!」
妻の言葉を聞いて目を見開くレクシャに、リュシアンとロスペルが揃ってレクシャの前に立った。
「そうだよ、父さん! 俺たちだって知っていて何も出来なかった。だから、これは父さんのせいだけじゃない!」
「そうです。僕は宮廷魔法師という立場でありながら、ノルベルトの尻尾すら掴むことが出来ませんでした。だから、僕も父上と同じです」
「リュシアン、ロスペル」
(妻だけじゃなくて、お前達までそんなことを言ってくれるのか)
声と胸を震わせたレクシャが真剣な表情をするリュシアンとロスペルを交互に見ていると、ソファーから離れたフリージアがロスペルの隣に立ってレクシャを見つめた。
「お父様、私も宰相家令嬢として貴族令嬢達からノルベルトに関する情報収集が出来ていませんでした。ですので、この事態を引き起こした一端を私も背負っています」
「フリージア……」
(そうよ、これはお父様1人の罪ではなく、サザランス公爵家全体の背負うべき罪。だから、お父様だけが背負っていいはずがないのよ)
頼もしい子ども達の姿を目の当たりし、レクシャは目元から零れ落ちた涙を拭うと険しい顔で愛する家族を見た。
「ありがとう、みんな。だが、これは私の責任だ」
「お父様、ですから……」
「許してくれなんて言わない。だが、皆の前で誓わせてくれ。必ずこの罪を晴らし、この国をノルベルトの手から奪還し、再びこの屋敷で再会すると」
「「「「っ!!」」」」
愛する家族の覚悟を聞いたレクシャは、この日、ノルベルトから全てを取り戻す覚悟を固めた。
心底苦い顔をしたレクシャがノルベルトからの要求を口にすると、その場にいた家族全員が息を呑んで拳を握った。
(ノルベルトめ! お父様になんて酷い選択を!)
家族を大事にしていたレクシャにとって、家族そのものが弱点であり逆鱗であるということは、社交界では暗黙の了解だった。
そんな父の逆鱗を何のためらいもなく触れ、あまつさえそれを取引の条件にしたノルベルトにフリージアが苛立ちを募らせていると、怒りのあまり表情を消したロスペルが静かに口を開く。
「では、父さんはその条件を飲んだということですね」
「……そういうことだ」
顔を顰めながら答える父親を見て、フリージアの目から思わず涙が溢れ出そうになった時、リュシアンが突然ソファーから立ち上がった。
「リュシアン兄様?」
長兄の行動に、驚いて涙をひっこめたフリージアが小首を傾げて名前を呼ぶ。
だが、可愛い妹から名前を呼ばれたリュシアンは、何も聞こえなかったかのように、すたすたと部屋の壁に飾られていた剣を取ると、そのまま部屋を出て行こうとした。
「リュシアン、どこへ行く?」
レクシャの諫めるような声に、ようやく反応したリュシアンは、扉の前で立ち止まると振り返った。
「決まっています、王城です。今なら奴の企みを阻止出来ます」
『止めてくれるな』と言わんばかりに殺気を放つリュシアンに、父が眉を顰めて睨んでいると、今度はロスペルがソファーから立ち上がった。
「けれど、そんなことをしても無駄だというのは、兄さんだって分かっているでしょ?」
「だが! このままだとノルベルトの思い通りに……!」
「リュシアン」
「っ!」
ノルベルトの愚行を聞いて頭に血が上ったリュシアンを、レクシャは他人を威圧するような低い声で名前を呼んで、ソファーに座るように軽く首を横に振る。
「座りなさい。ここで動かれたら、私が引いた意味がなくなる」
「……すみませんでした、父さん」
(本当は、父さんが一番悔しいのは分かっていたはずなのに)
この中で一番悔しいのは父であることを思い出したリュシアンは、頭を冷やすと小さく頭を下げ、そのまま大人しくフリージアの隣に座った。
そんな兄の様子を見て、安堵のため息をついたロスペルは静かに腰を下ろすと、レクシャが椅子から立ち上がった。
「これは、この国の宰相であり、サザランス公爵家の当主である私の失態だ。私は、知っていて止めることが出来なかった」
「あなた」
「父さん」
「父上」
「お父様」
「だが、家族だけは、家族だけはどうしても守りたかったんだ」
「あなた……」
誰よりも傍で夫を見てきたティアーヌは、ソファーから離れて静かに夫の隣に立つと、優しく夫を抱き締めた。
「ティアーヌ」
「確かに、分かっていて止めることが出来なかったのは宰相として大きな失態よ。でもそれは、ノルベルトの野望を知っていたのは私たち家族だって同じ」
「っ!」
妻の言葉を聞いて目を見開くレクシャに、リュシアンとロスペルが揃ってレクシャの前に立った。
「そうだよ、父さん! 俺たちだって知っていて何も出来なかった。だから、これは父さんのせいだけじゃない!」
「そうです。僕は宮廷魔法師という立場でありながら、ノルベルトの尻尾すら掴むことが出来ませんでした。だから、僕も父上と同じです」
「リュシアン、ロスペル」
(妻だけじゃなくて、お前達までそんなことを言ってくれるのか)
声と胸を震わせたレクシャが真剣な表情をするリュシアンとロスペルを交互に見ていると、ソファーから離れたフリージアがロスペルの隣に立ってレクシャを見つめた。
「お父様、私も宰相家令嬢として貴族令嬢達からノルベルトに関する情報収集が出来ていませんでした。ですので、この事態を引き起こした一端を私も背負っています」
「フリージア……」
(そうよ、これはお父様1人の罪ではなく、サザランス公爵家全体の背負うべき罪。だから、お父様だけが背負っていいはずがないのよ)
頼もしい子ども達の姿を目の当たりし、レクシャは目元から零れ落ちた涙を拭うと険しい顔で愛する家族を見た。
「ありがとう、みんな。だが、これは私の責任だ」
「お父様、ですから……」
「許してくれなんて言わない。だが、皆の前で誓わせてくれ。必ずこの罪を晴らし、この国をノルベルトの手から奪還し、再びこの屋敷で再会すると」
「「「「っ!!」」」」
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