木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい

第345話 突然の別れ(前編)

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 ――それは、突然の別れだった。


「おはよう……って、あれっ? エドガス?」


 平民としての生活にもようやく慣れ、いつもの時間に起きたフリージアは、先に起きているはずのエドガスがいないことに小首を傾げた。


「いつもなら私より先に起きてご飯を作っているのに……もしかして、寝坊?」


 (エドガスにしては珍しくけど……まぁ、たまにはそんな日があっても良いわよね)

 普段は完璧なエドガスの人間らしい部分が久しぶりに見れて、思わず笑みを零したフリージアは冷蔵庫から食材を取り出すと最近覚えた料理を作り、それをテーブルに並べた。
 しかし、二階からエドガスが降りてくる気配がない。

 (珍しいわね。エドガスがこの時間になっても起きないなんて)

 今までもフリージアの後にエドガスが起きてくる時は何度かあった。
 だが、必ず朝ごはんが出来る時までには起きてきて、一緒にテーブルについてご飯を食べていた。


「全く、仕方ないわね。起こしに起こしてあげるわ」


 朝ごはんが出来ても尚、起きて来ないエドガスに呆れたフリージアは、どこか嬉しそうな顔をしながら2階に上がって、彼が使っている部屋のドアをノックする。


「エドガス、朝よ」
「…………」


 (あれっ? 返事がない。気配に敏感なエドガスなら、これで起きると思うんだけど)

 部屋の奥から返事がないことに眉を顰めたフリージアは、今度は強めにノックする。


「エドガス! 朝ご飯が出来たから起きなさい!」


 大声でエドガスを呼ぶが返事来ない。

 (おかしい、エドガスがこれで起きないなんて……)


「まさか!」


 フリージアの脳裏に嫌な予感が過り、思わずノックで握っていた手が震える。


「嘘よ、だって、昨日まであんなに元気に納品作業をしていたじゃない」


『お嬢様、平民の生活に大分慣れましたね』
『まぁ、1年もこんなことを続けていれば慣れるってものよ』
『ホホホッ、それもそうですね』


 危なげなく木こりの仕事をこなすフリージアに、満足げな笑みを浮かべるエドガス。
 そんな彼の笑顔が頭の中で蘇り、フリージアはこみ上げてくる不安を抑えようと下唇を噛む。

 (そうよ、最近体を崩すことがあっても、翌日にはいつものように仕事をしていた。だから……だから、ありえないわよ)

 そう自分に言い聞かせても、胸の中にある不安は消えてくれない。


「ここは、腹を括るしかない」


 目を閉じて深く息を吐いたフリージアは、そっと目を開けると未だに震えが止められない手をドアノブにかける。


「エドガス、入るわよ」


 (大丈夫、部屋に入ればタイミングよくエドガスが起き上がってくれるはず)

 心を支配する嫌な胸騒ぎがどうか杞憂であって欲しい。

 そうフリージアは心の中で祈りながら、ゆっくりとドアを開け、照明をつけるための魔石をセットして部屋を明るくした。
 その瞬間、大きく目を見開いたフリージアは、ドアを開けっぱなしにすると彼が眠るベッドに駆け寄った。


「エドガス!!」


 慌てて駆け寄ったフリージアの視線の先には、今にも息絶えそうな血色を感じさせない顔色をしたエドガスが目を閉じて眠る姿だった。
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