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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第349話 元宰相家令嬢は剣をとる
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「それで、たった1人でそのバカ騎士に立ち向かったのか?」
「えぇ、そうよ」
「くっ!」
(そんな時から、こいつはたった1人であのバカ共と立ち向かっていたのか!)
当時第二騎士団に所属していたラピスは、王都の現状を良く知らず、フリージアが1人孤独に戦っていたことに苦虫を噛んだ顔で拳を握った。
そんな彼の怒りで震える肩に、白く柔らかい小さな手を置かれる。
「カトレア?」
「ラピス、悔しい気持ちは分かるわ。私も、あなたが近衛騎士団に来るまで知らなかったのだから」
そう言って、綺麗な顔を歪めたカトレアもまた、通常業務や魔物討伐、加えてダリアの接待など、宮廷魔法師としての仕事に追われ、フリージアの存在や悪徳騎士が蔓延っている事実を知らなかった。
今になって悔しさを滲ませる2人に、フリージアは初めてレイピアを引き抜き、悪徳騎士と対峙した時のことを思い出す。
『大丈夫ですか?』
悪徳騎士達に虐げられ、座り込んでしまった平民の傍に駆け寄ったフリージアは、怯えて動けなくなっている細身の平民の女性に声をかける。
『あなたは、もしかしてエドガスさんのところの?』
『そうです。あなたを助けに来ました』
悪徳騎士に怯えていた平民が、実はフリージアの得意先の従業員で、何度かフリージアを見かけていたが、フリージアがエドガスのように戦っているところを見たことが無かった。
当然である。フリージアは一度も鞘からレイピアを抜くことが一度も無かったのだから。
『あぁ!? なんだてめぇ!!』
お楽しみのところ邪魔されたフリージアに圧をかける悪徳騎士。
だが、そんな圧を一切ものともしないフリージアは、目の前に彼女に怪我が無いか確認し、淡々と、けれどどこか気遣うような優しさが混じった声を発する。
『早く行ってください。その間、私があの騎士様を引き留めます』
『っ!? でも、あなただけではあの騎士様には……』
『大丈夫です』
(この時、エドガスなら絶対にこういうはず)
静かに立ち上がったフリージアは、ゆっくりと悪徳騎士を対峙すると、護身用として使っていた銀色のレイピアを鞘から引き抜く。
そして、背後にいる平民に向かって、安心させるように僅かに口角を上げた。
『あなたが逃げられる時間は稼げます』
『っ!』
フリージアの言葉を聞いて、人伝で『つい最近、エドガスが亡くなった』と知っていた平民は、助けに来たフリージアの姿が生前のエドガスと重なり、思わず目を見開く。
その直後、眉を顰めた悪徳騎士が戦斧を構えると、強化魔法をかけて突進してきた。
『そんなことさせるわけねぇだろうが!!』
砂塵を巻き上げながら細見のフリージアに突進する悪徳騎士に、周囲から悲鳴が上がる。
そんな中、静かにレイピアを構えたフリージアは、悪徳騎士の強烈な一撃を受け止めると、そのまま綺麗に受け流した。
『なっ!!』
(こいつ、俺の攻撃を受け流しただと!?)
唖然とする悪徳騎士に冷たい目を向けたフリージアは、レイピアを構え直すと平民に向かって声を張り上げる。
『さぁ、早く行って!!』
『は、はい!!』
フリージアの切羽詰まった声に押され、慌てて立ち上がった平民は逃げるようにその場から走り去った。
『お、おい待て!! てめぇには俺とぶつかった報いを受けなくちゃならねぇんだからよ!』
逃げた平民を追うように悪徳騎士が足元に強化魔法をかけた瞬間、地面にレイピア突き刺したフリージアが透明の魔力を流す。
『《範囲干渉》』
『なっ!!』
誰にも聞こえない小声でフリージアが唱えると、魔法文字が刻まれた透明な魔力が辺り一帯を包み込み、瞬く間に強化魔法が打ち消され、走り出した勢いを殺し切れなかった悪徳騎士は前のめりに倒れた。
『痛っっ!! お前! 一体何をしやがった!!』
怒りで顔を真っ赤にしながら立ち上がる悪徳騎士に対し、涼しい顔をしたフリージアはレイピアを構えたまま冷たい目を向ける。
『さぁ、何もやっていませんが?』
(ただ、あなた達が忘れてしまった魔法を使っただけよ)
『てめぇ!!』
堂々と嘘をついたフリージアに、悪徳騎士の敵意が平民の女性から木こりの恰好をした平民に移った。
戦斧を振り上げた悪徳騎士に、レイピアを強く握ったフリージアは無表情で見据える。
(エドガス、見ていて。私も、あなたのように理不尽な目に遭っている人達を守るわ。それが、平民にも優しかったお父様のしたかったことだと信じて)
『死ねぇぇぇぇ!!』
獣のように突進してきた悪徳騎士と相手をしたフリージアは、その後、体力切れを起こした悪徳騎士が逃げたことで事なきを得た。
しかし、この1件で王都を出る時間が遅れたため、待っていた村人達から罵詈雑言を浴びせられた。
こうして、不条理に全てを奪われた宰相家令嬢は、大切な人の遺志を引き継ぎ、大切なものを守るために剣をとった。
「えぇ、そうよ」
「くっ!」
(そんな時から、こいつはたった1人であのバカ共と立ち向かっていたのか!)
当時第二騎士団に所属していたラピスは、王都の現状を良く知らず、フリージアが1人孤独に戦っていたことに苦虫を噛んだ顔で拳を握った。
そんな彼の怒りで震える肩に、白く柔らかい小さな手を置かれる。
「カトレア?」
「ラピス、悔しい気持ちは分かるわ。私も、あなたが近衛騎士団に来るまで知らなかったのだから」
そう言って、綺麗な顔を歪めたカトレアもまた、通常業務や魔物討伐、加えてダリアの接待など、宮廷魔法師としての仕事に追われ、フリージアの存在や悪徳騎士が蔓延っている事実を知らなかった。
今になって悔しさを滲ませる2人に、フリージアは初めてレイピアを引き抜き、悪徳騎士と対峙した時のことを思い出す。
『大丈夫ですか?』
悪徳騎士達に虐げられ、座り込んでしまった平民の傍に駆け寄ったフリージアは、怯えて動けなくなっている細身の平民の女性に声をかける。
『あなたは、もしかしてエドガスさんのところの?』
『そうです。あなたを助けに来ました』
悪徳騎士に怯えていた平民が、実はフリージアの得意先の従業員で、何度かフリージアを見かけていたが、フリージアがエドガスのように戦っているところを見たことが無かった。
当然である。フリージアは一度も鞘からレイピアを抜くことが一度も無かったのだから。
『あぁ!? なんだてめぇ!!』
お楽しみのところ邪魔されたフリージアに圧をかける悪徳騎士。
だが、そんな圧を一切ものともしないフリージアは、目の前に彼女に怪我が無いか確認し、淡々と、けれどどこか気遣うような優しさが混じった声を発する。
『早く行ってください。その間、私があの騎士様を引き留めます』
『っ!? でも、あなただけではあの騎士様には……』
『大丈夫です』
(この時、エドガスなら絶対にこういうはず)
静かに立ち上がったフリージアは、ゆっくりと悪徳騎士を対峙すると、護身用として使っていた銀色のレイピアを鞘から引き抜く。
そして、背後にいる平民に向かって、安心させるように僅かに口角を上げた。
『あなたが逃げられる時間は稼げます』
『っ!』
フリージアの言葉を聞いて、人伝で『つい最近、エドガスが亡くなった』と知っていた平民は、助けに来たフリージアの姿が生前のエドガスと重なり、思わず目を見開く。
その直後、眉を顰めた悪徳騎士が戦斧を構えると、強化魔法をかけて突進してきた。
『そんなことさせるわけねぇだろうが!!』
砂塵を巻き上げながら細見のフリージアに突進する悪徳騎士に、周囲から悲鳴が上がる。
そんな中、静かにレイピアを構えたフリージアは、悪徳騎士の強烈な一撃を受け止めると、そのまま綺麗に受け流した。
『なっ!!』
(こいつ、俺の攻撃を受け流しただと!?)
唖然とする悪徳騎士に冷たい目を向けたフリージアは、レイピアを構え直すと平民に向かって声を張り上げる。
『さぁ、早く行って!!』
『は、はい!!』
フリージアの切羽詰まった声に押され、慌てて立ち上がった平民は逃げるようにその場から走り去った。
『お、おい待て!! てめぇには俺とぶつかった報いを受けなくちゃならねぇんだからよ!』
逃げた平民を追うように悪徳騎士が足元に強化魔法をかけた瞬間、地面にレイピア突き刺したフリージアが透明の魔力を流す。
『《範囲干渉》』
『なっ!!』
誰にも聞こえない小声でフリージアが唱えると、魔法文字が刻まれた透明な魔力が辺り一帯を包み込み、瞬く間に強化魔法が打ち消され、走り出した勢いを殺し切れなかった悪徳騎士は前のめりに倒れた。
『痛っっ!! お前! 一体何をしやがった!!』
怒りで顔を真っ赤にしながら立ち上がる悪徳騎士に対し、涼しい顔をしたフリージアはレイピアを構えたまま冷たい目を向ける。
『さぁ、何もやっていませんが?』
(ただ、あなた達が忘れてしまった魔法を使っただけよ)
『てめぇ!!』
堂々と嘘をついたフリージアに、悪徳騎士の敵意が平民の女性から木こりの恰好をした平民に移った。
戦斧を振り上げた悪徳騎士に、レイピアを強く握ったフリージアは無表情で見据える。
(エドガス、見ていて。私も、あなたのように理不尽な目に遭っている人達を守るわ。それが、平民にも優しかったお父様のしたかったことだと信じて)
『死ねぇぇぇぇ!!』
獣のように突進してきた悪徳騎士と相手をしたフリージアは、その後、体力切れを起こした悪徳騎士が逃げたことで事なきを得た。
しかし、この1件で王都を出る時間が遅れたため、待っていた村人達から罵詈雑言を浴びせられた。
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