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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第351話 彼を突き放せなかった理由
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「ねぇ、フリージア」
「何?」
一通り話を終え、口の中を潤すために紅茶を飲んだフリージアに、真剣な表情のカトレアが静かに問い質す。
「1つだけ聞いていい?」
「良いわよ」
「今までの話で、あなたが私たちを大切に思って冷たく突き放したことも、エドガス様の意志を引き継いで1人孤独に立ち向かっていたことも理解出来たわ。それならどうして、メスト様を突き放さなかったの?」
「カトレア!」
声を荒げて立ち上がったラピスに、鋭い目を向けたカトレアは、視線をフリージアに戻すと木こりの仕事ですっかりかさついてしまった彼女の手を取った。
「心優しいあんたなら分かっていたはずよ。このままだと、彼をご家族の事情に巻き込ませるかもしれないって」
「…………」
それは、レクシャから現状を聞き、ラピスからメストとフリージアの関係を聞いたカトレアは、フリージアを再会するまでずっと考えていたことだった。
お転婆でお人好しでありつつも、宰相家令嬢として矜持を忘れていないフリージアが、なぜメストを突き放すようなことをしなかったのか。
そして、フリージアから話を聞いたカトレアは、より一層メストを突き放さなかったフリージアに益々疑問を覚えた。
(我ながら酷いことを聞いていると思う。けれど、そうでもしないとこの子から本心を聞くことは出来ないから)
「おい、カトレア。それはさすがに……」
「再会した時」
「えっ?」
カトレアを諌めようとしたラピスの言葉を遮り、静かに口を開いたフリージアは、握られたカトレアの手を優しく離すと酷く苦しそうな顔で視線を落とした。
「3年前。メスト様と再会した時、私のせいで危険な目に遭わせたくないと彼を冷たく突き放したわ」
『関係ないなら取り調べに行かなくて良いですよね』
『ハッキリって迷惑なのでこれ以上関わらないでください』
『それを知って、何だというのですか?』
「そして、再会した後も彼に会う度に対して酷い言葉を浴びせて容赦なく突き放したわ」
脳裏に蘇る罵声の数々に、小さく拳を握ったフリージアは、今まで抑えて誰にも言えなかった胸の内を2人に明かす。
「分かっていたわ。『このままではメスト様を巻き込むかもしれない』と。だから、彼を突き放さないといけないことも。そして……あなた達にも関わってはいけないと」
「「…………」」
『フリージア、これから会う人達は全員お前のことを知らない人たちだ』
父親であるレクシャから言われた言葉を思い出し、顔を上げたフリージアは、目の前で眉を顰める2人に悲しそうな笑みを零す。
「けれど、いくら突き放してもメスト様は私に関わろうとした」
『待ってくれ!』
『だったら、俺と一騎打ちしてくれないか?』
『頑張っている君を知りたいんだ』
「どんなに私が酷い言葉を浴びせても、冷たい態度をとっても、メスト様はこんな私の手を握って、1人になってしまった私に寄り添おうと、めげずに声をかけてくれた」
握っていた拳が段々と震え、再び俯いたフリージアの声が涙交じりの震え声に変わる。
「彼の優しい声を聞くたびに、彼の真剣な顔を見る度に、彼の変わらない真摯な態度を目の当たりにする度に、凍り付いてしまった心が少しずつ温かさ取り戻し、いつしか彼を突き放すことが出来なくなった」
両手を組んだフリージアは、そのまま額に添えた。
「自分でも愚かなことしていると分かっているわ。それでも……それでも、私は彼がくれる優しさを無下にすることは無理だった」
「フリージア、あなたもしかして……」
「そうよ」
俯いた顔を上げたフリージアの顔は悔しさと悲しさが入り混じり、淡い緑色の瞳から涙が出そうになっていた。
「私はメスト様のことが好きよ。ノルベルトに何もかも奪われた平民として生き、彼には私に代わる婚約者がいると分かっていても、どうしようもなく彼のことが好きなの。だから、今の私に……メスト様と再会して、彼の優しさに触れてしまった私に、彼を突き放すなんて出来ないの!」
(思えば、王都の広場で再会した時から私はメスト様のことに想いを寄せていたのかもしれないわね)
大切してきたものを全て奪われ、自分を匿ってくれた人を失い、それでも家族の約束を果し、目の前にいる大切な人達を守るために、他人と一線を引きつつも、不条理に晒される平民をレイピアとたった1つの魔法で守ってきた。
そんなフリージアだからこそ、昼間の王都で再会した騎士とて凛々しくいるメストの姿に、恋に落ちてしまった。
だからこそ、好きな人から与えられる優しさを突き放すことが出来なかった。
そしてそれは、ラピスやカトレアにも言えた。
「フリージア……」
「だからでしょうね」
零れそうになった涙を拭いたフリージアは、明らかに無理をしたぎこちない笑みを浮かべた。
「あなた達とこうして面と向かって会おうと思ったのも」
「何?」
一通り話を終え、口の中を潤すために紅茶を飲んだフリージアに、真剣な表情のカトレアが静かに問い質す。
「1つだけ聞いていい?」
「良いわよ」
「今までの話で、あなたが私たちを大切に思って冷たく突き放したことも、エドガス様の意志を引き継いで1人孤独に立ち向かっていたことも理解出来たわ。それならどうして、メスト様を突き放さなかったの?」
「カトレア!」
声を荒げて立ち上がったラピスに、鋭い目を向けたカトレアは、視線をフリージアに戻すと木こりの仕事ですっかりかさついてしまった彼女の手を取った。
「心優しいあんたなら分かっていたはずよ。このままだと、彼をご家族の事情に巻き込ませるかもしれないって」
「…………」
それは、レクシャから現状を聞き、ラピスからメストとフリージアの関係を聞いたカトレアは、フリージアを再会するまでずっと考えていたことだった。
お転婆でお人好しでありつつも、宰相家令嬢として矜持を忘れていないフリージアが、なぜメストを突き放すようなことをしなかったのか。
そして、フリージアから話を聞いたカトレアは、より一層メストを突き放さなかったフリージアに益々疑問を覚えた。
(我ながら酷いことを聞いていると思う。けれど、そうでもしないとこの子から本心を聞くことは出来ないから)
「おい、カトレア。それはさすがに……」
「再会した時」
「えっ?」
カトレアを諌めようとしたラピスの言葉を遮り、静かに口を開いたフリージアは、握られたカトレアの手を優しく離すと酷く苦しそうな顔で視線を落とした。
「3年前。メスト様と再会した時、私のせいで危険な目に遭わせたくないと彼を冷たく突き放したわ」
『関係ないなら取り調べに行かなくて良いですよね』
『ハッキリって迷惑なのでこれ以上関わらないでください』
『それを知って、何だというのですか?』
「そして、再会した後も彼に会う度に対して酷い言葉を浴びせて容赦なく突き放したわ」
脳裏に蘇る罵声の数々に、小さく拳を握ったフリージアは、今まで抑えて誰にも言えなかった胸の内を2人に明かす。
「分かっていたわ。『このままではメスト様を巻き込むかもしれない』と。だから、彼を突き放さないといけないことも。そして……あなた達にも関わってはいけないと」
「「…………」」
『フリージア、これから会う人達は全員お前のことを知らない人たちだ』
父親であるレクシャから言われた言葉を思い出し、顔を上げたフリージアは、目の前で眉を顰める2人に悲しそうな笑みを零す。
「けれど、いくら突き放してもメスト様は私に関わろうとした」
『待ってくれ!』
『だったら、俺と一騎打ちしてくれないか?』
『頑張っている君を知りたいんだ』
「どんなに私が酷い言葉を浴びせても、冷たい態度をとっても、メスト様はこんな私の手を握って、1人になってしまった私に寄り添おうと、めげずに声をかけてくれた」
握っていた拳が段々と震え、再び俯いたフリージアの声が涙交じりの震え声に変わる。
「彼の優しい声を聞くたびに、彼の真剣な顔を見る度に、彼の変わらない真摯な態度を目の当たりにする度に、凍り付いてしまった心が少しずつ温かさ取り戻し、いつしか彼を突き放すことが出来なくなった」
両手を組んだフリージアは、そのまま額に添えた。
「自分でも愚かなことしていると分かっているわ。それでも……それでも、私は彼がくれる優しさを無下にすることは無理だった」
「フリージア、あなたもしかして……」
「そうよ」
俯いた顔を上げたフリージアの顔は悔しさと悲しさが入り混じり、淡い緑色の瞳から涙が出そうになっていた。
「私はメスト様のことが好きよ。ノルベルトに何もかも奪われた平民として生き、彼には私に代わる婚約者がいると分かっていても、どうしようもなく彼のことが好きなの。だから、今の私に……メスト様と再会して、彼の優しさに触れてしまった私に、彼を突き放すなんて出来ないの!」
(思えば、王都の広場で再会した時から私はメスト様のことに想いを寄せていたのかもしれないわね)
大切してきたものを全て奪われ、自分を匿ってくれた人を失い、それでも家族の約束を果し、目の前にいる大切な人達を守るために、他人と一線を引きつつも、不条理に晒される平民をレイピアとたった1つの魔法で守ってきた。
そんなフリージアだからこそ、昼間の王都で再会した騎士とて凛々しくいるメストの姿に、恋に落ちてしまった。
だからこそ、好きな人から与えられる優しさを突き放すことが出来なかった。
そしてそれは、ラピスやカトレアにも言えた。
「フリージア……」
「だからでしょうね」
零れそうになった涙を拭いたフリージアは、明らかに無理をしたぎこちない笑みを浮かべた。
「あなた達とこうして面と向かって会おうと思ったのも」
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