木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい

第358話 星空と君

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「メ、メストさん!?」
「おぉ!! 部屋の中から見える星空も美しかったが、改めて外に出て見てみると星空がより一層美しいな!」


 お風呂上がりのカミルの手を引いて、メストは闇に包まれた夜の森と雲一つない満点の星空が広がる外に出た。

 (王都で見る星空も綺麗だが、明かりがほとんどない場所で見る星空もまた綺麗だな!)

 毎日の仕事終わりに自己鍛錬をするメストは、夜でも明るい王都から見える星空を眺めるのが日々の癒しだった。
 そんな彼は、周囲を森で囲まれて民家の明かりがほとんどない場所で見る星空の美しさに心を奪われる。
 すると、横にいたカミルが困惑気味に声をかける。


「あの、メストさん。どうして外に出たのですか?」


 (というより私、今メスト様と手を繋いでいるじゃないの!)

 無表情でありながらも少しだけ困惑している雰囲気が出ているカミルに、手を離したメストが申し訳なさそうな顔で頭を下げた。


「いや、風呂に入っているカミルを待っていたら、ふと窓に見える星空の美しさに見惚れてな。それでまぁ、せっかくなら星空の綺麗な場所で話そうかなと。思い返せば、カミルと2人でゆっくりと星空を見たことが無かったし」
「っ!」


 (メスト様! どうしてそんな甘いことを申し訳なさそうに言ってしまわれるのですか! 思わず勘違いしそうになるではありませんか!)


「すまない、カミル。いきなり外に連れ出すような真似をして」
「い、いえ……それで話しやすくなるのならば別に構いません」
「そうか、ありがとうな」


 優しく微笑むメストに、カミルが少しだけ胸を高鳴らせると、不意にメストが持っている物が視界に入った。



「メストさん、その手に持っている物は?」
「あぁ、遠征用で使っている魔道ランタンと敷物だ。間違って遠征用の鞄を持ってきてしまってな」
「へ、へぇ……」


 照れくさそうに笑ったメストが持っていたのは、魔物除けの魔法が付与された魔道ランタンだった。
 それをカミルが物珍しそうに見ていると、小さく笑みを零したメストがログハウス横の芝生に敷物を広げ、靴を脱ぐとそのまま敷物の上で胡坐を掻いた。


「カミルも横に座ってくれ」
「あ、はい」


 メストに言われるがままいつも履いている木こり用のブーツを脱いだカミルは、メストの隣に座ると、すぐ近くにメストの吐息が聞こえた。

 (ち、近い!)

 メストが持ってきた敷物は大人2人分の広さしかなかったため、2人の距離が近くなるのは避けられないことだった。
 それでも、最近では食後、リビングのソファーにメストと隣同士で座り、お互い好きなことをしていたカミル。

 だが、『星空が見える夜の森で2人きりという』珍しいシチュエーションでメストの隣に座っている状況は、カミルの胸を否応なしに高鳴らせた。

 そんなカミルの心境など知る由もないメストは、両手を後ろにつくと真上に広がる夜空を見上げた。


「本当に綺麗だな」
「え、えぇ……本当に綺麗ですね」


 メストにつられて夜空を見上げたカミルは、夜闇に光る数多の星々に思わず目を細める。
 すると、カミルを横目で見たメストが羨ましそうに呟く。


「良いな、カミルは。毎日、この星空を見ているんだよな?」
「い、いいえ……むしろ、こうしてゆっくり星空を見上げたのは久しぶりです」
「えっ、そうなのか?」


 意外そうな顔をするメストを見て、僅かに口角を上げたカミルが静かに頷いた。


「はい。いつもは仕事の忙しさに疲れ、お風呂に入ったら明日に備えてすぐ寝ていますから」
「そう、だったな。だとしたら、俺のワガママに付き合わせてしまい本当にすまない」


 再び頭を下げるメストに、カミルが小さく首を横に振った。


「いえ、あなた様のワガママとはいえ、こういう時間も悪くないなと思いましたので」
「っ!」




 ランタンの明かりに照らされたカミルの綺麗な横顔に、なぜか胸が高鳴ったメストは思わず胸を掴む。

 (あれっ? 何だ、この胸の高鳴りは?)

 どこか覚えがある胸の高鳴りを感じたメストをよそに、カミルは久しぶりに見た夜空に懐かしさを感じる。

 (そう言えば、ここにきて間もない頃、家族と離れ離れになった悲しさで眠れない私を、エドガスが今みたいに夜空を見せて寄り添ってくれたのよね)


『お嬢様、見てください。今、お嬢様が見ている夜空は旦那様や奥様、リュシアン様やロスペル様も見上げている空でございます』
『グスッ、お父様もお母様もリュシアン兄様もロスペル兄様もこの星空を見上げているの?』『はい。ですから、忘れないで下さい。この美しい夜空はお嬢様と離れ離れになったご家族を繋ぐ空であることを』
『エドガス……!』


 (それと、エドガスが亡くなった日の夜も、こうしてステインと一緒に夜空を見上げたわね。あの時も、泣いてばかりの私をステインが優しく慰めてくれたのよね)

 在りし日のことを思い出し、懐かしさに浸っていたカミルを凝視する視線。
 それに気づいたカミルが、ふと横を見た。


「っ!?」


 そこには、温かな光に照らされたメストの綺麗なアイスブルーの瞳がカミルの方を向いていた。


「あ、あの……?」
「あ、す、すまん! つい、カミルのことを見惚れた!」
「っ!!」


 (見惚れる!? 『見惚れる』って、もしかしなくても今の私を!?)

 2人しかいない空間で、互いが互いを見ている状況に耐え切れなくなり、2人はサッと目を逸らすと早くなった心臓の鼓動を落ち着かせる。
 そして、アイマスクに付与された『鎮静』の効果でメストよりも先に冷静さを取り戻せたカミルが、わざとらしい大きい咳払いをしてメストに話を振る。


「それで、今日はどうして来られたのですか?」
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