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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第364話 婚約者の浮気
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※メスト視点です。
――俺が婚約者の浮気を初めて知ったのは、近衛騎士として王都に来てから半年後のことだった。
「おい、メスト。あれって……」
「っ!?」
カミルとの鍛錬や仕事にもようやく慣れ、いつものように街の巡回をしていると、珍しく険しい顔をするシトリンが立ち止まって俺を呼んで、ある方向を指さす。
そこには、俺の婚約者であるダリアが、俺と同じ身長の男の腕に両腕を絡め、その男の腕に胸を押し付けながら仲良く歩いていた。
「あれって確か、クレックス男爵家の次男だよね? 歳は僕らの3つ下だった気がするけど……ねぇ、メスト? 一応、聞いておくけどこのこと知っていた?」
「いや、ここ最近ダリアと会えていないから知らなかった」
「そう」
それにしては、2人の距離が近い。あれは、どう考えても婚約者とデートしている時の近さだ。
間違っても、知人の男と歩く時の距離じゃない。
「腕組んで歩いているってことは、もしかしなくても浮気だよね?」
「まぁ、そうだな」
「『そうだな』って、随分と他人事だね。僕だったら、真っ先に相手の男を問い詰めるよ」
「マヤ嬢じゃなくて、相手の男の方かよ」
「当たり前でしょう。お淑やかで人見知りのマヤが、自分から僕以外の男と腕を組むようなことをするわけ無いから」
「そ、そうか」
でも、ダリアに限ってそんなこと……
俄かに信じがたい光景に眉を顰めていると、こちらに気づいたダリアが、満面の笑みを浮かべると、男の耳元に何かを囁いた。
そして、彼の頬に別れのキスをし、こちらに走ってきた。
「なっ!?」
婚約者が見ている前で他の男にキスだと!? 一体何を考えているんだ!?
婚約者がいる令嬢の振る舞いとは思えない行動に唖然としていると、俺の体に柔らかいに何かが当たった。
「メスト様! お久しぶりです!」
人の往来が多いところで堂々と抱き着いてきたダリアは、心底嬉しそうな笑みを浮かべると可愛らしく小首を傾げる。
くっ! 今日も可愛いな! 俺の婚約者は!
久しぶりに会えた婚約者の可愛さに、先程のことが頭から吹き飛びそうになった時、柔和な笑みを浮かべたシトリンがダリアに声をかけた。
「こんにちは、ダリア嬢。お久しぶりです」
「これはこれは、シトリン様。ご無沙汰しております」
シトリンに気づいたダリアが、パッと俺から離れると、貴族令嬢らしい綺麗なカーテシーをした。
さすが宰相家令嬢、貴族の鏡のような美しいカーテシーだ。
そんなことを思っていると、シトリンが遠くの方に目を向けた。
「ところで、あの令息とはどういう関係? 随分と親しくしていたようだけど」
離れた場所でダリアのことを待っている男を見て、シトリンが棘のある言葉で問い質す。
すると、どう受け取ったのか、突然、妖艶な笑みを浮かべたダリアが、持っていた扇子を開いて口元を覆うと男の方に目を向けた。
「あぁ、あの方でしたら私のお友達ですわ」
「友達? 友達にしてはやけに距離が近い気がするが?」
『友達』という言葉に違和感を覚えた俺が思わず眉を潜ませて問い質すと、いきなり不機嫌になったダリアが、思い切り顔を歪めると扇子を閉じて俺に顔を近づけた。
「メスト様はご存じないかもしれませんが、王都ではお友達との距離はあれが普通なのです!」
「普通? それが例え、異性だとしても王都では友達としての普通の距離間なのか?」
「そうです!」
本当にそうなのか?
ダリアの言葉に信憑性を感じなかった俺は、そっとシトリンに目を向けるが、少しだけ笑みを潜めたシトリンが小さく首を横に振った。
どうやら、これはダリアの持論らしい。
すると、不機嫌顔のダリアが俺に向かって閉じた扇子を向けた。
「ともかく、婚約者だからと言って、私の交友関係に口を出さないでください! はっきり言って迷惑です!」
「そ、そうか。それは、すまな……」
「それと、今度ヴィルマン侯爵家が主催するお茶会ですが、急用が出来ましたので欠席させていただきます!」
「わ、分かった……俺から母上に伝えておく」
眉を吊り上げたダリアは、不機嫌なまま俺たちに背を向けると、待っている男の方に向かって駆けて行く。
そして、待っていた男の腕を取ると楽しそうに路地裏の方に歩いて行った。
「なぁ、シトリン」
「何?」
「もし、自分の婚約者が他の男の腕を組んだりキスをしたりしていたら?」
「さっきも言ったけど、相手の男を問い詰める。けど、キスをしたら相手の男を殺す。もちろん、誰にも見つからない場所で」
「そ、そうか……」
シトリンの過激な意見はともかく……あれが友達の距離間だというなら、婚約者はどういう距離間なんだ?
「それにあの2人、行き先からして男女交際が行われる宿が密集する繫華街に行ったね」
「やめてくれ、考えないようにしていたことだから」
あそこも一応、巡回対象になるが……鉢合わせたくない。
だが、そんな俺の願いは、それから1週間後にあっさり打ち砕かれた。
その後、宰相家からヴィルマン侯爵家に『娘の私生活に口を出さないでくれ』という抗議文が届き、父上と話し合ったうえでダリアの浮気を見過ごすことにした。
例え、胸元にたくさんのキスマークをつけたダリアが、たくさんの令息達と堂々と昼間の繫華街を歩いていたとしても。
――俺が婚約者の浮気を初めて知ったのは、近衛騎士として王都に来てから半年後のことだった。
「おい、メスト。あれって……」
「っ!?」
カミルとの鍛錬や仕事にもようやく慣れ、いつものように街の巡回をしていると、珍しく険しい顔をするシトリンが立ち止まって俺を呼んで、ある方向を指さす。
そこには、俺の婚約者であるダリアが、俺と同じ身長の男の腕に両腕を絡め、その男の腕に胸を押し付けながら仲良く歩いていた。
「あれって確か、クレックス男爵家の次男だよね? 歳は僕らの3つ下だった気がするけど……ねぇ、メスト? 一応、聞いておくけどこのこと知っていた?」
「いや、ここ最近ダリアと会えていないから知らなかった」
「そう」
それにしては、2人の距離が近い。あれは、どう考えても婚約者とデートしている時の近さだ。
間違っても、知人の男と歩く時の距離じゃない。
「腕組んで歩いているってことは、もしかしなくても浮気だよね?」
「まぁ、そうだな」
「『そうだな』って、随分と他人事だね。僕だったら、真っ先に相手の男を問い詰めるよ」
「マヤ嬢じゃなくて、相手の男の方かよ」
「当たり前でしょう。お淑やかで人見知りのマヤが、自分から僕以外の男と腕を組むようなことをするわけ無いから」
「そ、そうか」
でも、ダリアに限ってそんなこと……
俄かに信じがたい光景に眉を顰めていると、こちらに気づいたダリアが、満面の笑みを浮かべると、男の耳元に何かを囁いた。
そして、彼の頬に別れのキスをし、こちらに走ってきた。
「なっ!?」
婚約者が見ている前で他の男にキスだと!? 一体何を考えているんだ!?
婚約者がいる令嬢の振る舞いとは思えない行動に唖然としていると、俺の体に柔らかいに何かが当たった。
「メスト様! お久しぶりです!」
人の往来が多いところで堂々と抱き着いてきたダリアは、心底嬉しそうな笑みを浮かべると可愛らしく小首を傾げる。
くっ! 今日も可愛いな! 俺の婚約者は!
久しぶりに会えた婚約者の可愛さに、先程のことが頭から吹き飛びそうになった時、柔和な笑みを浮かべたシトリンがダリアに声をかけた。
「こんにちは、ダリア嬢。お久しぶりです」
「これはこれは、シトリン様。ご無沙汰しております」
シトリンに気づいたダリアが、パッと俺から離れると、貴族令嬢らしい綺麗なカーテシーをした。
さすが宰相家令嬢、貴族の鏡のような美しいカーテシーだ。
そんなことを思っていると、シトリンが遠くの方に目を向けた。
「ところで、あの令息とはどういう関係? 随分と親しくしていたようだけど」
離れた場所でダリアのことを待っている男を見て、シトリンが棘のある言葉で問い質す。
すると、どう受け取ったのか、突然、妖艶な笑みを浮かべたダリアが、持っていた扇子を開いて口元を覆うと男の方に目を向けた。
「あぁ、あの方でしたら私のお友達ですわ」
「友達? 友達にしてはやけに距離が近い気がするが?」
『友達』という言葉に違和感を覚えた俺が思わず眉を潜ませて問い質すと、いきなり不機嫌になったダリアが、思い切り顔を歪めると扇子を閉じて俺に顔を近づけた。
「メスト様はご存じないかもしれませんが、王都ではお友達との距離はあれが普通なのです!」
「普通? それが例え、異性だとしても王都では友達としての普通の距離間なのか?」
「そうです!」
本当にそうなのか?
ダリアの言葉に信憑性を感じなかった俺は、そっとシトリンに目を向けるが、少しだけ笑みを潜めたシトリンが小さく首を横に振った。
どうやら、これはダリアの持論らしい。
すると、不機嫌顔のダリアが俺に向かって閉じた扇子を向けた。
「ともかく、婚約者だからと言って、私の交友関係に口を出さないでください! はっきり言って迷惑です!」
「そ、そうか。それは、すまな……」
「それと、今度ヴィルマン侯爵家が主催するお茶会ですが、急用が出来ましたので欠席させていただきます!」
「わ、分かった……俺から母上に伝えておく」
眉を吊り上げたダリアは、不機嫌なまま俺たちに背を向けると、待っている男の方に向かって駆けて行く。
そして、待っていた男の腕を取ると楽しそうに路地裏の方に歩いて行った。
「なぁ、シトリン」
「何?」
「もし、自分の婚約者が他の男の腕を組んだりキスをしたりしていたら?」
「さっきも言ったけど、相手の男を問い詰める。けど、キスをしたら相手の男を殺す。もちろん、誰にも見つからない場所で」
「そ、そうか……」
シトリンの過激な意見はともかく……あれが友達の距離間だというなら、婚約者はどういう距離間なんだ?
「それにあの2人、行き先からして男女交際が行われる宿が密集する繫華街に行ったね」
「やめてくれ、考えないようにしていたことだから」
あそこも一応、巡回対象になるが……鉢合わせたくない。
だが、そんな俺の願いは、それから1週間後にあっさり打ち砕かれた。
その後、宰相家からヴィルマン侯爵家に『娘の私生活に口を出さないでくれ』という抗議文が届き、父上と話し合ったうえでダリアの浮気を見過ごすことにした。
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