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第6章 待ち望んだ再会と星降る夜の語らい
第385話 改竄魔法の代償
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ノルベルトが建国祭の余興を決めて数日後、シュタール辺境伯領の森の中にある隠れ家で、カトレアはルベルから聞いた謁見の間でのことをレクシャとロスペルに話していた。
「……そうか、ルベル殿がそんなことを」
「はい」
(まさか、ノルベルトが国王しか座れない玉座に座るだけでなく、暗黙の了解で禁止とされている玉座の間で魔法を使うとは……本気で奴はこの国を乗っ取ろうとしているようだな。いや、もしかするとこれもまた、忌み嫌われる改竄魔法の力なのかもしれない)
応接用ソファーに座っているカトレアの話を一通り聞き、彼女の対面のソファーに座っていたレクシャが深刻そうな顔で溜息をついた。
すると、レクシャの隣で顔を顰めていたロスペルが口を開いた。
「父さん、もしかしなくてもこれは改竄魔法の影響ですね?」
「あぁ、正確には代償だな」
「えっ?」
(代償ってどういうこと?)
マーザスから改竄魔法のことをある程度聞いていたカトレアだったが、改竄魔法に代償があるとは聞いておらず、隣に座っていたラピスと一緒に首を傾げる。
それを見たレクシャは、2人に改竄魔法のことについて簡単におさらいする。
「改竄魔法は、対象者と術者の魔力を使って対象者の記憶を改竄する魔法だ。これは君たちも知っているね?」
「はい」
「だが、この魔法には重大な欠点があるのは知っているかな?」
「欠点ですか?」
カトレアが思わず眉を顰めると、難しい顔をした彼女の師匠が改竄魔法の重大な欠点を言い当てた。
「……改竄魔法を使い過ぎると、術者の記憶すらも改竄されてしまうということですね?」
「えっ!?」
「その通りだ。さすが、ロスペルだな」
「恐れ入ります」
深々と頭を下げるロスペルに対し、改竄魔法の欠点を初めて聞いたカトレアとラピスは言葉を失う。
そんな彼らに、レクシャは改竄魔法の欠点であり代償について語り始めた。
「1日に1回だけ使えば、他の魔法を同じように魔力消費特有の倦怠感が襲うだけだ。しかし、1日に何回も使用した場合、もしくは1回で大勢の人間の記憶を改竄した場合、術者は魔力以外の代償を支払うことになる」
「その代償が、術者自身の記憶ということでしょうか?」
「そういうことだ。そしてそれは、ノルベルトも例外ではない」
『本来、国王陛下しか座ることが許されない玉座に、あの宰相閣下が座っていたんだ』
「つまり、ノルベルトは改竄魔法を使い過ぎた代償として『この国で1番偉いのは自分である』と自身の記憶を改竄された。だから、謁見の間で正気を疑うようなことをしていたということですか?」
「状況からしてそういうことになるだろう」
「「っ!?」」
(本当に恐ろしい魔法ね。改竄魔法という闇魔法は)
改竄魔法を使い過ぎすぎると、代償として術者自身の記憶も改竄される。
初めて聞いた恐ろしい代償に、カトレアとラピスは揃って神妙そうな顔で口を噤むと、ロスペルがレクシャから話の続きを引き継いだ。
「これは密偵調査で分かっていることだけど、ノルベルトは毎日同じ時間に、結界魔法の核となっている水晶のある部屋で改竄魔法を使っている」
「それはつまり、ノルベルトは水晶と結界魔法の魔法陣を利用して、大勢の人間の記憶を改竄しているということでしょうか?」
「そういうこと」
(あの黒い魔法陣を通して、ノルベルトが好き勝手に改竄魔法を……!)
悔しそうに小さく拳を握ったラピスは、王都に帰ってきた後、カトレアと共にロスペルの案内でとある森の奥にあった禍々しい黒い魔法陣を見せてもらった時のことを思い出した。
すると、小さくと息を吐いたレクシャが、毅然とした態度でその場にいた3人に指示を出す。
「まぁ、奴もバカではないから建国祭前に国民全員を廃人にするような真似はしないと思うが……ロスペル、引き続きインホルトと共に潜入調査を頼む」
「はい、父さん」
「それとカトレア嬢とラピス君。君たちも無理のない範囲で内部調査を頼む。ここで君たち2人が倒れてしまっては、フリージアを救う機会を失ってしまうからね」
「分かりましたわ」
「ハッ!」
(そのために、私はここにいるのだから)
レクシャの言葉に、ラピスと共にカトレアが決意を新たにすると、突然部屋の端から男性の声が聞こえた。
「そのフリージア様についてのことなのですが」
「「っ!?」」
(あなたは、もしかして!?)
男性の声に驚いたカトレアとラピスが入口を見ると、そこには燕尾服に身を包んだ男性が静かに佇んでいた。
その男の顔を見たレクシャは、安堵した笑みで彼の名前を呼ぶ。
「インホルト。君がこのタイミング戻ってくるなんて珍しいな」
「はい、急ぎ旦那様の耳に入れたい情報を入手いたしましたので」
「……何があった?」
サザランス公爵家の現執事であるインホルトは、現在国王直属の陰に紛れて王城や王都の様子を調査していた。
そんな彼は常に冷静沈着で表情をあまり表に出さないのだが、この時は少しだけ険しい顔をしていて、嫌な胸騒ぎがしたレクシャが静かに問い質す。
すると、インホルトはレクシャ以外の3人に即座に目配せをした。
「その前に旦那様、今から話すことをロスペル様やお嬢様のご友人のお2人にも聞かせてもよろしいでしょうか?」
「構わない。遅かれ早かれ、フリージアに関することなら、この3人にも言わなければならない」
「かしこまりました」
深々と頭を下げたインホルトは、4人に向かって先程手に入れた情報を公開した。
「ノルベルトは建国祭当日の余興として、平民として暮らしているフリージアお嬢様を公開処刑するそうです」
「……そうか、ルベル殿がそんなことを」
「はい」
(まさか、ノルベルトが国王しか座れない玉座に座るだけでなく、暗黙の了解で禁止とされている玉座の間で魔法を使うとは……本気で奴はこの国を乗っ取ろうとしているようだな。いや、もしかするとこれもまた、忌み嫌われる改竄魔法の力なのかもしれない)
応接用ソファーに座っているカトレアの話を一通り聞き、彼女の対面のソファーに座っていたレクシャが深刻そうな顔で溜息をついた。
すると、レクシャの隣で顔を顰めていたロスペルが口を開いた。
「父さん、もしかしなくてもこれは改竄魔法の影響ですね?」
「あぁ、正確には代償だな」
「えっ?」
(代償ってどういうこと?)
マーザスから改竄魔法のことをある程度聞いていたカトレアだったが、改竄魔法に代償があるとは聞いておらず、隣に座っていたラピスと一緒に首を傾げる。
それを見たレクシャは、2人に改竄魔法のことについて簡単におさらいする。
「改竄魔法は、対象者と術者の魔力を使って対象者の記憶を改竄する魔法だ。これは君たちも知っているね?」
「はい」
「だが、この魔法には重大な欠点があるのは知っているかな?」
「欠点ですか?」
カトレアが思わず眉を顰めると、難しい顔をした彼女の師匠が改竄魔法の重大な欠点を言い当てた。
「……改竄魔法を使い過ぎると、術者の記憶すらも改竄されてしまうということですね?」
「えっ!?」
「その通りだ。さすが、ロスペルだな」
「恐れ入ります」
深々と頭を下げるロスペルに対し、改竄魔法の欠点を初めて聞いたカトレアとラピスは言葉を失う。
そんな彼らに、レクシャは改竄魔法の欠点であり代償について語り始めた。
「1日に1回だけ使えば、他の魔法を同じように魔力消費特有の倦怠感が襲うだけだ。しかし、1日に何回も使用した場合、もしくは1回で大勢の人間の記憶を改竄した場合、術者は魔力以外の代償を支払うことになる」
「その代償が、術者自身の記憶ということでしょうか?」
「そういうことだ。そしてそれは、ノルベルトも例外ではない」
『本来、国王陛下しか座ることが許されない玉座に、あの宰相閣下が座っていたんだ』
「つまり、ノルベルトは改竄魔法を使い過ぎた代償として『この国で1番偉いのは自分である』と自身の記憶を改竄された。だから、謁見の間で正気を疑うようなことをしていたということですか?」
「状況からしてそういうことになるだろう」
「「っ!?」」
(本当に恐ろしい魔法ね。改竄魔法という闇魔法は)
改竄魔法を使い過ぎすぎると、代償として術者自身の記憶も改竄される。
初めて聞いた恐ろしい代償に、カトレアとラピスは揃って神妙そうな顔で口を噤むと、ロスペルがレクシャから話の続きを引き継いだ。
「これは密偵調査で分かっていることだけど、ノルベルトは毎日同じ時間に、結界魔法の核となっている水晶のある部屋で改竄魔法を使っている」
「それはつまり、ノルベルトは水晶と結界魔法の魔法陣を利用して、大勢の人間の記憶を改竄しているということでしょうか?」
「そういうこと」
(あの黒い魔法陣を通して、ノルベルトが好き勝手に改竄魔法を……!)
悔しそうに小さく拳を握ったラピスは、王都に帰ってきた後、カトレアと共にロスペルの案内でとある森の奥にあった禍々しい黒い魔法陣を見せてもらった時のことを思い出した。
すると、小さくと息を吐いたレクシャが、毅然とした態度でその場にいた3人に指示を出す。
「まぁ、奴もバカではないから建国祭前に国民全員を廃人にするような真似はしないと思うが……ロスペル、引き続きインホルトと共に潜入調査を頼む」
「はい、父さん」
「それとカトレア嬢とラピス君。君たちも無理のない範囲で内部調査を頼む。ここで君たち2人が倒れてしまっては、フリージアを救う機会を失ってしまうからね」
「分かりましたわ」
「ハッ!」
(そのために、私はここにいるのだから)
レクシャの言葉に、ラピスと共にカトレアが決意を新たにすると、突然部屋の端から男性の声が聞こえた。
「そのフリージア様についてのことなのですが」
「「っ!?」」
(あなたは、もしかして!?)
男性の声に驚いたカトレアとラピスが入口を見ると、そこには燕尾服に身を包んだ男性が静かに佇んでいた。
その男の顔を見たレクシャは、安堵した笑みで彼の名前を呼ぶ。
「インホルト。君がこのタイミング戻ってくるなんて珍しいな」
「はい、急ぎ旦那様の耳に入れたい情報を入手いたしましたので」
「……何があった?」
サザランス公爵家の現執事であるインホルトは、現在国王直属の陰に紛れて王城や王都の様子を調査していた。
そんな彼は常に冷静沈着で表情をあまり表に出さないのだが、この時は少しだけ険しい顔をしていて、嫌な胸騒ぎがしたレクシャが静かに問い質す。
すると、インホルトはレクシャ以外の3人に即座に目配せをした。
「その前に旦那様、今から話すことをロスペル様やお嬢様のご友人のお2人にも聞かせてもよろしいでしょうか?」
「構わない。遅かれ早かれ、フリージアに関することなら、この3人にも言わなければならない」
「かしこまりました」
深々と頭を下げたインホルトは、4人に向かって先程手に入れた情報を公開した。
「ノルベルトは建国祭当日の余興として、平民として暮らしているフリージアお嬢様を公開処刑するそうです」
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