木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第391話 誤解と真相

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「どういうこと?」


 (『ノルベルトに植え付けられた貴族然とした態度』って、そういうことじゃないの?)

 大好きな親友が大好きな家族に酷い扱いをしていたと言われ、カトレアを軽蔑するような冷たい目を向けるフリージア。
 そんな彼女に対し、ラピスはカトレアに対しての誤解を解こうと話始める。


「確かに、改竄魔法にかけられていた時のカトレアは、ロスペル様を小間使いとして雑に扱った。だが決して、馬鹿騎士達のような理不尽な暴力は振るわなかった! むしろ、カトレアは理不尽な暴力を振るおうとしたのはダリア嬢から守っていたんだ!」
「えっ?」


 (カトレアがダリアからロスペル兄様を守っていた? そもそも、どうしてここでダリアの名前が出てくるのよ?)

 必死の形相のラピスからダリアの名前が出て、冷気を放っていたフリージアが言葉を失うと、今まで黙っていたカトレアが自嘲気味な笑みを浮かべながら口を開く。


「そう言えば、まだ話していなかったわね。どうして私が『稀代の天才魔法師』なんて恐れ多い二つ名を授かっているかを」
「それは、カトレアの実力が宮廷魔法師団の中でずば抜けているからじゃないの?」
「それは今の宮廷魔法師団ならあるかもしれないけど……もう1つあるのよ」
「もう1つの理由?」


 (実力以外の理由ってあるの?)

 すっかり怒りが収まったフリージアに、カトレアは気まずそうに顔を背けると二つ名を賜っている理由を端的に答えた。


「私が、あの女の……今の宰相家令嬢の親友だからよ」
「っ!?」


 カトレアから理由を聞いたフリージアは悟ってしまった。

 カトレアが『稀代の天才魔法師』という二つ名を授かったのは、魔法師としての実力が宮廷魔法師団内でずば抜けてことに加え、宰相家令嬢であるダリアと親友だったから。

 だから、カトレアはロスペルと同じ『稀代の天才魔法師』という二つ名が与えられた。

 ついでに言うと、カトレアに二つ名を授けたのは他でもないノルベルトだ。


「それじゃあ、あなたがロスペル兄様と同じ二つ名を賜ったのは……」
「半分実力、半分コネってところね」
「っ!」


 (そんなことをしなくても、カトレアはとても優秀な魔法師よ! そもそも、カトレアにその二つ名を賜ったのって……)

 カトレアの話を聞いたフリージアは、ノルベルトの思惑に辿り着く。


「もしかして、ノルベルトはカトレアをダリアの護衛兼アクセサリーに仕立て上げるために、カトレアにその二つ名をあげたの?」
「それもあるわね。一応、子爵家だけど『王国の主砲』と謳われるほど魔法には精通しているし、私自身、両親からそう言われて育ったから、宰相家に目をかけてやるくらいには実力はあるはずよ」


 火属性の魔法において、他の追随を許さない程の威力を誇る魔法師を排出しているティブリー子爵家は、300年前、その圧倒的な威力で帝国に攻撃をしていたことから『王国の主砲』と謳われた。

 そのことを知っていたノルベルトは、王国全土に改竄魔法をかけた際、フリージアの穴を埋めるという意味だけでなく、ティブリー子爵家を取り込むという意味でも、カトレアとダリアの記憶に『2人は親友である』という虚実を改竄魔法で事実として刻んだ。


「私は……私は、そんな邪な理由であなたと仲良くなっていないわ!」


 (私は、自信に満ち溢れているけど、実は涙もろくて誰よりも優しいカトレアが良いと思って仲良くなったのよ!)


「ウフフッ、分かっているわよ」


 (あんたは純粋に私という人間を見て、仲良くしてくれたのよね)

 声を荒げて悔しそうに顔を歪めるフリージアに、優しく微笑んだカトレアは項垂れている親友の頭をそっと撫でる。
 すると、恥ずかしそうにフリージアが顔を上げると慌てて話を戻す。


「で、でも! どうしてダリアがロスペル兄様を虐めるのよ?」


 (今のダリアは確か、平民をゴミとして扱っていないとしか……っ?!)


「ま、まさか……!」
「どうやら、分かったみたいね」


 沸々と怒りがこみ上げるフリージアを見て、静かに目を伏せたカトレアが答え合わせをするように遠い目をしながら話をする。


「あの女、こちらのことなんかお構いなしにずかずかと執務室に来て、我が物顔でソファーに座ると、私に向かって『話し相手をしなさい』と命令するのよ」
「『ロスペル兄様を虐めていた』という時点で何となく分かっていたけど……どうして、宰相家令嬢が我が物顔でカトレアの執務室に来るのよ」


 (宰相家令嬢として、やるべきことがそれなりにあるんじゃないの?)

 ダリアの自由奔放ぶりに頭を痛めるフリージアをよそに、カトレアは執務室でのことを思い出し、思わず眉を顰める。


「そして、ダリアがテオ……師匠を見かける度に面白い半分で魔法を撃つのよ。『どうせ、平民なのだから魔法を撃っても良いわよね』って」
「っ!」


 (許せない。平民を……この国の土台を支えている国民を無下に扱うなんて!)

 王都での出来事でダリアのことを嫌でも理解出来たフリージアは、兄に向かって魔法を撃つダリアの下卑た笑みが想像出来た。
 静かに殺気を放つフリージアに、小さく溜息をついたカトレアはニヤリと笑みを浮かべた。


「まぁ、本物の『稀代の天才魔法師様』である師匠は、ダリアの貴族特有のちんちくりんな魔法が放たれる度に、魔力を軽く練った初級魔法でダリアにバレずにあっさりと打ち消したんだけどね」
「さ、さすが、ロスペル兄様」


 (『稀代の天才魔法師』って言われるだけあるわ)

 引き攣った顔をするフリージアとは反対に、カトレアは得意げな笑みを浮かべた。
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