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第7章 余興と奇貨の建国祭
第396話 それでも私は……
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「っ!?」
息を呑むラピスに対し、カトレアは険しい顔をする。
「フリージア、それがどういう意味か分かって……」
「分かっているわよ」
カトレアの言葉を遮ったフリージアの淡い緑色の瞳には、何物にも揺るがない決意が宿っていた。
「ダリアに剣を向けた時点で、『私はいずれ、宰相家令嬢に危害を加えたとして処刑される』と思っていたから」
「だったら、どうして……!!」
(どうしてあなたは逃げないのよ!)
椅子から立ちあがったカトレアを見て、フリージアは優しく微笑んだ。
「私が、サザランス公爵家の人間だからよ」
そう言うと、フリージアは笑みを潜めて小さく拳を握った。
(私が平民として暮らしている間、お父様やロスペル兄様はノルベルトから国を取り戻すため水面下に動いていた。そして、リュシアン兄様は殿下の護衛をしていた。お母様だってきっと、シュタール辺境伯夫妻の護衛をしていたはず。あの人も正義感が強いから)
家族と離れ離れになり、絶望していたフリージアはエドガスの頼もしい背中を見て、サザランス公爵家としての矜持を思い出し、民のために剣を振るった。
一方、レクシャは国を取り戻すために奔走し、ロスペルはインホルトと共に諜報活動をし、リュシアンは幼馴染である殿下の護衛をこなして、ティアーヌはシュタール辺境伯に身を寄せつつ、ノルベルトが夫妻に危害が加えないように陰で立ち回っていた。
そのことを2人から聞いて、フリージアは自分の知らないところで他の家族が国を取り戻すために動いていた事実が堪らなく悔しかった。
『自分だって、王国の盾を賜る家の一員なのに』と。
「エドガスの背中を見て、私は『王国の盾』として戦う術の無い平民の盾として、悪徳騎士や魔物達を渡り合った。けれど、あなた達の話を聞いて、『本当はお父様やお兄様達のように国を守るために動くべきだった』と今になって気づいて、とても悔しい」
顔を歪ませて俯くフリージアの手を、カトレアがそっと包み込んだ。
「でも、あなたが剣を振るってくれたお陰で、流さなくてもいい血が流れなかったし、失わなくてもいい命が失われずに済んだ。それだけでも、あなたは『王国の盾』として十分な働きをしているわ」
「本当に?」
ゆっくりと顔を上げたフリージアに、真剣な顔をしたラピスが深く頷いた。
「あぁ、公爵様も『フリージアは、この国を支える人達を守って、『王国の盾』としての務めを果たしている』と仰っていた」
「お父様」
(そんな風に思っていたのね)
ラピスの言葉を聞いて、フリージアが少しだけ涙ぐむと、カトレアはフリージアの手を包んでいた手に力を入れる。
「だからこそ、フリージアには逃げて欲しいの。国民を守ってくれたあなたに生きていて欲しいから」
「カトレア……」
涙を溜めながら真剣な表情で説得するカトレアに、フリージアもまた涙を溜めながら笑みを浮かべる。
「それに、今のあなたは誰もが手本にしたい高貴な貴族令嬢じゃない。かなり奇抜な平民よ」
「ウフフッ、確かに今の私は貴族令嬢じゃなくて平民ね」
ノルベルトによって国民の記憶が改竄された今、公爵令嬢フリージア・サザランスを知る者はごく一部の人間しかいない。
大半の人間は、今のフリージアのことを、銀色のレイピアを携えて平民を守っている特殊な平民だと思っている。
茶目っ気たっぷりに言ったカトレアは笑みを潜めると、楽しそうに笑うフリージアに懇願する。
「だから、あなたは逃げても良いの。ご家族の約束があるから離れられない気持ちは少しだけ理解出来る。それでも、逃げて欲しいの。今なら、あなたは逃げられるわ」
「そうだ。だから、公爵様はこの通行証をフリージア嬢に渡してくれと俺たちに託したんだ」
『生きてまた会うんだ!』
ノルベルトに全てを奪われた日に言われたレクシャの言葉が脳裏に蘇り、笑みを潜めたフリージアは再び俯く。
(確かに、お父様は『生きてまた会おう』と約束してくださった。だから、この2人の提案に載って帝国に逃げることも出来る。それでも……)
「ありがとう、2人とも」
「フリージア」
「フリージア嬢」
顔を上げたフリージアは、親友と悪友からの提案に笑みを零し、それを見た2人は安堵の笑みを浮かべる。
けれど、フリージアは『王国の盾』の賜った家に生まれた者として、この国から逃れようと思わなかった。
例え、当主であり実の父親であるレクシャ『逃げても良い』と逃げることを許されたとしても。
ゆっくりと笑みを潜めたフリージアは、持っていた通行証をカトレアの方に向けると、再び淡い緑色の瞳に揺るがない決意を宿す。
「でも私、この国の宰相家令嬢として……『王国の盾』を賜ったサザランス公爵家の娘として、建国祭当日にノルベルトとダリアがいる場所に立つわ」
それが、宰相家令嬢フリージア・サザランスが成すべきことであり、父レクシャが宰相としてフリージアに望んでいることだと理解したから。
息を呑むラピスに対し、カトレアは険しい顔をする。
「フリージア、それがどういう意味か分かって……」
「分かっているわよ」
カトレアの言葉を遮ったフリージアの淡い緑色の瞳には、何物にも揺るがない決意が宿っていた。
「ダリアに剣を向けた時点で、『私はいずれ、宰相家令嬢に危害を加えたとして処刑される』と思っていたから」
「だったら、どうして……!!」
(どうしてあなたは逃げないのよ!)
椅子から立ちあがったカトレアを見て、フリージアは優しく微笑んだ。
「私が、サザランス公爵家の人間だからよ」
そう言うと、フリージアは笑みを潜めて小さく拳を握った。
(私が平民として暮らしている間、お父様やロスペル兄様はノルベルトから国を取り戻すため水面下に動いていた。そして、リュシアン兄様は殿下の護衛をしていた。お母様だってきっと、シュタール辺境伯夫妻の護衛をしていたはず。あの人も正義感が強いから)
家族と離れ離れになり、絶望していたフリージアはエドガスの頼もしい背中を見て、サザランス公爵家としての矜持を思い出し、民のために剣を振るった。
一方、レクシャは国を取り戻すために奔走し、ロスペルはインホルトと共に諜報活動をし、リュシアンは幼馴染である殿下の護衛をこなして、ティアーヌはシュタール辺境伯に身を寄せつつ、ノルベルトが夫妻に危害が加えないように陰で立ち回っていた。
そのことを2人から聞いて、フリージアは自分の知らないところで他の家族が国を取り戻すために動いていた事実が堪らなく悔しかった。
『自分だって、王国の盾を賜る家の一員なのに』と。
「エドガスの背中を見て、私は『王国の盾』として戦う術の無い平民の盾として、悪徳騎士や魔物達を渡り合った。けれど、あなた達の話を聞いて、『本当はお父様やお兄様達のように国を守るために動くべきだった』と今になって気づいて、とても悔しい」
顔を歪ませて俯くフリージアの手を、カトレアがそっと包み込んだ。
「でも、あなたが剣を振るってくれたお陰で、流さなくてもいい血が流れなかったし、失わなくてもいい命が失われずに済んだ。それだけでも、あなたは『王国の盾』として十分な働きをしているわ」
「本当に?」
ゆっくりと顔を上げたフリージアに、真剣な顔をしたラピスが深く頷いた。
「あぁ、公爵様も『フリージアは、この国を支える人達を守って、『王国の盾』としての務めを果たしている』と仰っていた」
「お父様」
(そんな風に思っていたのね)
ラピスの言葉を聞いて、フリージアが少しだけ涙ぐむと、カトレアはフリージアの手を包んでいた手に力を入れる。
「だからこそ、フリージアには逃げて欲しいの。国民を守ってくれたあなたに生きていて欲しいから」
「カトレア……」
涙を溜めながら真剣な表情で説得するカトレアに、フリージアもまた涙を溜めながら笑みを浮かべる。
「それに、今のあなたは誰もが手本にしたい高貴な貴族令嬢じゃない。かなり奇抜な平民よ」
「ウフフッ、確かに今の私は貴族令嬢じゃなくて平民ね」
ノルベルトによって国民の記憶が改竄された今、公爵令嬢フリージア・サザランスを知る者はごく一部の人間しかいない。
大半の人間は、今のフリージアのことを、銀色のレイピアを携えて平民を守っている特殊な平民だと思っている。
茶目っ気たっぷりに言ったカトレアは笑みを潜めると、楽しそうに笑うフリージアに懇願する。
「だから、あなたは逃げても良いの。ご家族の約束があるから離れられない気持ちは少しだけ理解出来る。それでも、逃げて欲しいの。今なら、あなたは逃げられるわ」
「そうだ。だから、公爵様はこの通行証をフリージア嬢に渡してくれと俺たちに託したんだ」
『生きてまた会うんだ!』
ノルベルトに全てを奪われた日に言われたレクシャの言葉が脳裏に蘇り、笑みを潜めたフリージアは再び俯く。
(確かに、お父様は『生きてまた会おう』と約束してくださった。だから、この2人の提案に載って帝国に逃げることも出来る。それでも……)
「ありがとう、2人とも」
「フリージア」
「フリージア嬢」
顔を上げたフリージアは、親友と悪友からの提案に笑みを零し、それを見た2人は安堵の笑みを浮かべる。
けれど、フリージアは『王国の盾』の賜った家に生まれた者として、この国から逃れようと思わなかった。
例え、当主であり実の父親であるレクシャ『逃げても良い』と逃げることを許されたとしても。
ゆっくりと笑みを潜めたフリージアは、持っていた通行証をカトレアの方に向けると、再び淡い緑色の瞳に揺るがない決意を宿す。
「でも私、この国の宰相家令嬢として……『王国の盾』を賜ったサザランス公爵家の娘として、建国祭当日にノルベルトとダリアがいる場所に立つわ」
それが、宰相家令嬢フリージア・サザランスが成すべきことであり、父レクシャが宰相としてフリージアに望んでいることだと理解したから。
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