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第7章 余興と奇貨の建国祭
第397話 揺るがない決意
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「今この瞬間、お父様やロスペル兄様がこの国を取り戻そうと動いている。そして、カトレアやラピスさんもそれに協力している。それなら……」
(私は、サザランス公爵家……『王国の盾』を賜った家の娘。ならば、やることは1つ)
淡い緑色の瞳に決意を秘めたフリージアは笑みを浮かべる。
「私は、サザランス公爵家の娘として、囮としてダリアとノルベルトの前に立って気を惹く。お父様もそれを望んでいるでしょうから」
カトレアから話をレクシャやロスペルのことを聞いた時、フリージアは『王国の盾』として何もしなかった自分が不甲斐ないと思っていた。
だが同時に、フリージアは父が『ダリアとノルベルトの気を惹いて欲しいと考えていたはずだ』と察した。
それを父が望んでいないことも。だから、約束なんか忘れて私に帝国に逃げるように仕向けたことも。
(お父様は心の底から『逃げて欲しい』と思っていたはず。でも、お父様。私もサザランス公爵家の一員なのです。だから、私も『王国の盾』としての務めを果たします)
「フリージア……」
「フリージア嬢……」
淡い緑色の瞳に宿る強い意志。
それは、平民になっても宰相家の娘としての誇りと矜持を持ち続けたフリージアの何物にも折ることは出来ない強い心そのものだった。
「大丈夫。あなた達がお父様と一緒にノルベルトの手からこの国を取り戻して、家族と再会するまで死なない。絶対よ」
(私は『王国の盾』なのだから)
親友の揺るがない意志を目の当たりにし、静かに目を閉じたカトレアは大きく深呼吸をする。
そして、ゆっくり目を見開いたカトレアは、テーブルの上に置かれた通行証を手に取る。
「分かった。あんたがそう言うなら、私はあなたの意思に従うわ」
「カトレア!」
(お前、本当にそれで良いのか!?)
ラピスは知っていた。
レクシャからの頼まれごとを引き受けてから今日まで、カトレアが毎日、気が気じゃない思いでいたことを。
だから、『自ら囮になる』と言ったフリージアを引き留めなかったカトレアに驚きが隠せなかった。
声を荒げて椅子から立ち上がったラピスに、ゆっくりと顔を上げたカトレアが小さく溜息をつく。
「あんただって分かっているはずよ。この子が『やる』と言ったことは、絶対に曲げないって」
「だが、このままだとノルベルトの思う壺だぞ!」
「『それでも行く』と言ったのは、フリージア自身よ」
「確かにそうだが……でもっ!」
「ラピス」
カトレアの薄紫色の瞳がラピスの口を無理矢理閉ざさせる。
「何を勘違いしているか知らないけど、フリージアはあの愚か者に命を差し出すために行くんじゃないの。公爵様がこの国を取り戻してくれると信じて、サザランス公爵家の人間としての役目を果たすために行くのよ」
「だとしても俺は……っ!」
カトレアの話を聞いても尚、言い募ろうとしたラピスだったが、何かに気づいて思わず目を見開くと小さく笑みを零して大人しく椅子に座った。
「ラピスさん?」
「いや、記憶が改竄されていたお陰で忘れていたことを思い出しただけだ」
「何よ、それ」
不快そうに目を細めるフリージアを見て、苦笑したラピスは隣に座っているカトレアに目を向ける。
「俺の知っているフリージア嬢は、こういう時にこそ、自分の出来ることを察して自ら前に立つ奴だったな」
「そうよ。まぁ、私は記憶を取り戻した時に、この子がこういう子だったってことを思い出したけどね」
「ねぇ、それって絶対にバカにしているわよね?」
不満げに頬を膨らませながら睨みつけるフリージアに、楽しそうな笑みを浮かべるカトレア。
そんな彼女が、テーブルの下に小刻みに震える両手を隠していることは、隣に座っているラピスしか気づいていなかった。
(カトレアだって本当は行かせたくないに違いない。だから、先に逃げるように仕向けた。だが、行くことを決意した親友を見て、無理矢理諦めたのだろう)
親友が決意を無理矢理受け入れた婚約者の震える手を、ラピスはそっと、けれど力強く握りしめる。
(っ!? ラピス……)
(大丈夫、俺がいる)
「カトレア?」
ラピスの淡い黄色の瞳に射貫かれ、思わず目を見開いたカトレアは、小さく笑みを零すと首を傾げているフリージアに視線を戻す。
「フリージア、これだけは忘れないで」
そう言って笑みを潜めたカトレアの薄紫色の瞳は、フリージアと同じく決意の炎を宿していた。
「私は、あんたの親友として、稀代の天才魔法師の弟子にかけて、絶対にあんたを死なせない!」
「っ!」
親友の固い決意を聞いてフリージアは思わず息を呑むと、ラピスもまた騎士らしく姿勢を正して左胸に手を当てる。
「俺も、お前の悪友として、ペトロート王国の騎士にかけて、絶対にお前を死なせない」
(そして、絶対にメスト隊長とお前を会わせる!)
「2人とも……」
「言っとくけど、これだけは譲れないわ」
「そうだ。これだけは文句は言わせないからな」
「……えぇ、分かったわ」
2人の頼もしい言葉を聞いて、涙ぐんだフリージアは小さく頷いた。
(私は、サザランス公爵家……『王国の盾』を賜った家の娘。ならば、やることは1つ)
淡い緑色の瞳に決意を秘めたフリージアは笑みを浮かべる。
「私は、サザランス公爵家の娘として、囮としてダリアとノルベルトの前に立って気を惹く。お父様もそれを望んでいるでしょうから」
カトレアから話をレクシャやロスペルのことを聞いた時、フリージアは『王国の盾』として何もしなかった自分が不甲斐ないと思っていた。
だが同時に、フリージアは父が『ダリアとノルベルトの気を惹いて欲しいと考えていたはずだ』と察した。
それを父が望んでいないことも。だから、約束なんか忘れて私に帝国に逃げるように仕向けたことも。
(お父様は心の底から『逃げて欲しい』と思っていたはず。でも、お父様。私もサザランス公爵家の一員なのです。だから、私も『王国の盾』としての務めを果たします)
「フリージア……」
「フリージア嬢……」
淡い緑色の瞳に宿る強い意志。
それは、平民になっても宰相家の娘としての誇りと矜持を持ち続けたフリージアの何物にも折ることは出来ない強い心そのものだった。
「大丈夫。あなた達がお父様と一緒にノルベルトの手からこの国を取り戻して、家族と再会するまで死なない。絶対よ」
(私は『王国の盾』なのだから)
親友の揺るがない意志を目の当たりにし、静かに目を閉じたカトレアは大きく深呼吸をする。
そして、ゆっくり目を見開いたカトレアは、テーブルの上に置かれた通行証を手に取る。
「分かった。あんたがそう言うなら、私はあなたの意思に従うわ」
「カトレア!」
(お前、本当にそれで良いのか!?)
ラピスは知っていた。
レクシャからの頼まれごとを引き受けてから今日まで、カトレアが毎日、気が気じゃない思いでいたことを。
だから、『自ら囮になる』と言ったフリージアを引き留めなかったカトレアに驚きが隠せなかった。
声を荒げて椅子から立ち上がったラピスに、ゆっくりと顔を上げたカトレアが小さく溜息をつく。
「あんただって分かっているはずよ。この子が『やる』と言ったことは、絶対に曲げないって」
「だが、このままだとノルベルトの思う壺だぞ!」
「『それでも行く』と言ったのは、フリージア自身よ」
「確かにそうだが……でもっ!」
「ラピス」
カトレアの薄紫色の瞳がラピスの口を無理矢理閉ざさせる。
「何を勘違いしているか知らないけど、フリージアはあの愚か者に命を差し出すために行くんじゃないの。公爵様がこの国を取り戻してくれると信じて、サザランス公爵家の人間としての役目を果たすために行くのよ」
「だとしても俺は……っ!」
カトレアの話を聞いても尚、言い募ろうとしたラピスだったが、何かに気づいて思わず目を見開くと小さく笑みを零して大人しく椅子に座った。
「ラピスさん?」
「いや、記憶が改竄されていたお陰で忘れていたことを思い出しただけだ」
「何よ、それ」
不快そうに目を細めるフリージアを見て、苦笑したラピスは隣に座っているカトレアに目を向ける。
「俺の知っているフリージア嬢は、こういう時にこそ、自分の出来ることを察して自ら前に立つ奴だったな」
「そうよ。まぁ、私は記憶を取り戻した時に、この子がこういう子だったってことを思い出したけどね」
「ねぇ、それって絶対にバカにしているわよね?」
不満げに頬を膨らませながら睨みつけるフリージアに、楽しそうな笑みを浮かべるカトレア。
そんな彼女が、テーブルの下に小刻みに震える両手を隠していることは、隣に座っているラピスしか気づいていなかった。
(カトレアだって本当は行かせたくないに違いない。だから、先に逃げるように仕向けた。だが、行くことを決意した親友を見て、無理矢理諦めたのだろう)
親友が決意を無理矢理受け入れた婚約者の震える手を、ラピスはそっと、けれど力強く握りしめる。
(っ!? ラピス……)
(大丈夫、俺がいる)
「カトレア?」
ラピスの淡い黄色の瞳に射貫かれ、思わず目を見開いたカトレアは、小さく笑みを零すと首を傾げているフリージアに視線を戻す。
「フリージア、これだけは忘れないで」
そう言って笑みを潜めたカトレアの薄紫色の瞳は、フリージアと同じく決意の炎を宿していた。
「私は、あんたの親友として、稀代の天才魔法師の弟子にかけて、絶対にあんたを死なせない!」
「っ!」
親友の固い決意を聞いてフリージアは思わず息を呑むと、ラピスもまた騎士らしく姿勢を正して左胸に手を当てる。
「俺も、お前の悪友として、ペトロート王国の騎士にかけて、絶対にお前を死なせない」
(そして、絶対にメスト隊長とお前を会わせる!)
「2人とも……」
「言っとくけど、これだけは譲れないわ」
「そうだ。これだけは文句は言わせないからな」
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2人の頼もしい言葉を聞いて、涙ぐんだフリージアは小さく頷いた。
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