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第7章 余興と奇貨の建国祭
第400話 フェビルとメスト
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カトレアとラピスがレクシャとシトリンにフリージアのことを話していた頃、隊長室にいたフェビルはグレアと共に、メストが仕上げて持ってきた最終護衛計画書に目を通していた。
「……よし、建国祭当日の王族護衛の配置はこれでいこう。良いよな、グレア?」
「はい、この配置でしたら問題ないかと」
応接セットの二人掛けソファーに座っていたフェビルとグレアが満足げな笑みを浮かべると、対面に座っていたメストは安堵の溜息をつく。
(良かった。隊長から『王族護衛の護衛を立てろ!』と無茶ぶりされた時は本気で恨んだ。そのお陰で、どのような配置や陣形が最適か物凄く頭を悩ませていたから)
終業後、メストはフェビルやグレア、シトリンや第4部隊に所属している先輩達にアドバイスを貰いながら夜遅くまで警備計画を立てていた。
そんな部下の安堵した表情を見て、書類を置いたフェビルはソファーから立ち上がると、労をねぎらうようにメストの頭を撫でた。
「よく頑張った、メスト! さすが、最年少の隊長だ!」
「ありがとうございます」
乱暴に頭を撫でられて眉を顰めたメストだが、尊敬する上司から手放しで褒められて、内心嬉しかった。
すると、不意に護衛に外される部下のことを思い出たメストは、頭を撫でている上司の手を掴んだ。
「どうした、メスト?」
「団長。やはり、ラピスは護衛から外すのでしょうか?」
メストにとって、ラピスは頼りになる部下の1人で、フェビルに言われなければ今回の王族護衛に加えようと考えていた。
(部隊の中で最年少とはいえ、ラピスも近衛騎士として相応しい実力を持っている。なのに、どうして団長はラピスを外すようなことをしたのか?)
本来の近衛騎士の任務を全うするチャンスを部下に与えなかった上司に、不満を覚えていたメストはフェビルから計画書を見せる度に懇願するように聞いていた。
だが、何度も聞いても答えは同じで、そして今回も同じ答えが返ってきた。
「メスト、何度も言っているがラピスには別の任務を与えている。だから外した」
「ではせめて、ラピスに与えた任務を教えてください」
「残念だが、ラピスに与えた任務はお前にも言えないものだ」
「団長!!」
納得のいかないメストがフェビルに掴みかかろうとした時、ソファーから立ち上がったグレアがメストの肩を掴んだ。
「副団長!」
「メスト、あなたの気持ちも分かります。ですが、これは近衛騎士団長が決められたことです」
「でしたら、副団長は把握されているのですよね? ラピスが団長から何の任務を与えられたかを」
「そ、それは……」
怒りの矛先を向けたメストからの問いに、珍しく狼狽えたグレアが思わずメストの肩を掴んでいた手を離す。
ノルベルトの影響下にあるグレアが、『ラピスが今の王国に対して謀反を立てようとしている』なんて知るはずがない。
それを分かっていたフェビルは、自信なさげに俯くグレアの横顔に内心申し訳ないと思いつつ、大きく溜息をつくとメストに視線を戻す。
「メスト、詳しいことは話せないがこれだけは言っておく。ラピスに与えた任務は、王族護衛以上に重要なものだ」
「っ!?……王族護衛以上に重要な任務、なのですか?」
「あぁ、そうだ」
いつになく真剣な表情のフェビルの言葉に、今度はメストが狼狽えた。
(ならば、どうしてラピスだけ選ばれた? 王族護衛以上に重要なことなら、騎士団全体が動いてもおかしくないはずだ)
フリージアのことを思い出せない今のメストが、『ラピスがノルベルトの改竄魔法で忘れ去られた宰相と共に、この国をノルベルトの手から救う』なんて考えられるはずがない。
「そういうことだからメスト、何度も言っているが今回の王族護衛にラピスは加わることは出来ない。分かったな?」
「……分かり、ました」
(すまない、メスト。だが、まだ言えないんだ)
フェビルはレクシャから手紙を通して、ノルベルトが第四部隊ごと王族を亡き者にしようとしていることを知った。
『余計な犠牲を出さない』。これは、フェビルとレクシャが交わした約束だった。
だからこそ、自分以上に第四部隊を知っているメストに王族護衛の陣形や配置を任せた。
有能な彼ならきっと素晴らしい陣形や配置をしてくれるだろうと信じていたから。
そんなフェビルの期待に応えるように、メストは何度も練り直した末に、作戦立案を任せることが多いグレアが納得する計画を立ててくれた。
ちなみに、メストに王族護衛の計画を任せ、グレアに書類仕事を押し付けた隙に、フェビルは余計な犠牲を出さず、迅速かつ確実に作戦がレクシャの成功するよう出来うる限りの根回しを水面下で行った。
例えば、ノルベルトの影響がそこまでない第二騎士団にレクシャの作戦に参加させ、ノルベルトの手中にある魔法陣の解放を手伝わせたり、例年通り第一騎士団を例年通り会場であるコロッセオの警備をさせるように唆したりした。
だが、フェビルか指図されることを嫌ったノルベルトは、フェビルからの意見を一切聞かなかった。
それでも、魔物討伐を主な任務としている第二騎士団をノルベルトが毛嫌いしているのを知っていたので、フェビルはノルベルトに見つからずすんなりとレクシャの作戦に参加させることが出来た。
そして、コロッセオまで無事に王族を護衛した後、第四部隊にはコロッセオの前で王族護衛をさせようと考えていた。
もちろん、このことをメストには伝えていない。
そんなことなど知る由もないメストは、ラピスが王族護衛以上に重要な任務を与えられていると知って酷く落ち込む。
そんな彼を見て、フェビルはただ胸を痛めることしか出来なかった。
「……よし、建国祭当日の王族護衛の配置はこれでいこう。良いよな、グレア?」
「はい、この配置でしたら問題ないかと」
応接セットの二人掛けソファーに座っていたフェビルとグレアが満足げな笑みを浮かべると、対面に座っていたメストは安堵の溜息をつく。
(良かった。隊長から『王族護衛の護衛を立てろ!』と無茶ぶりされた時は本気で恨んだ。そのお陰で、どのような配置や陣形が最適か物凄く頭を悩ませていたから)
終業後、メストはフェビルやグレア、シトリンや第4部隊に所属している先輩達にアドバイスを貰いながら夜遅くまで警備計画を立てていた。
そんな部下の安堵した表情を見て、書類を置いたフェビルはソファーから立ち上がると、労をねぎらうようにメストの頭を撫でた。
「よく頑張った、メスト! さすが、最年少の隊長だ!」
「ありがとうございます」
乱暴に頭を撫でられて眉を顰めたメストだが、尊敬する上司から手放しで褒められて、内心嬉しかった。
すると、不意に護衛に外される部下のことを思い出たメストは、頭を撫でている上司の手を掴んだ。
「どうした、メスト?」
「団長。やはり、ラピスは護衛から外すのでしょうか?」
メストにとって、ラピスは頼りになる部下の1人で、フェビルに言われなければ今回の王族護衛に加えようと考えていた。
(部隊の中で最年少とはいえ、ラピスも近衛騎士として相応しい実力を持っている。なのに、どうして団長はラピスを外すようなことをしたのか?)
本来の近衛騎士の任務を全うするチャンスを部下に与えなかった上司に、不満を覚えていたメストはフェビルから計画書を見せる度に懇願するように聞いていた。
だが、何度も聞いても答えは同じで、そして今回も同じ答えが返ってきた。
「メスト、何度も言っているがラピスには別の任務を与えている。だから外した」
「ではせめて、ラピスに与えた任務を教えてください」
「残念だが、ラピスに与えた任務はお前にも言えないものだ」
「団長!!」
納得のいかないメストがフェビルに掴みかかろうとした時、ソファーから立ち上がったグレアがメストの肩を掴んだ。
「副団長!」
「メスト、あなたの気持ちも分かります。ですが、これは近衛騎士団長が決められたことです」
「でしたら、副団長は把握されているのですよね? ラピスが団長から何の任務を与えられたかを」
「そ、それは……」
怒りの矛先を向けたメストからの問いに、珍しく狼狽えたグレアが思わずメストの肩を掴んでいた手を離す。
ノルベルトの影響下にあるグレアが、『ラピスが今の王国に対して謀反を立てようとしている』なんて知るはずがない。
それを分かっていたフェビルは、自信なさげに俯くグレアの横顔に内心申し訳ないと思いつつ、大きく溜息をつくとメストに視線を戻す。
「メスト、詳しいことは話せないがこれだけは言っておく。ラピスに与えた任務は、王族護衛以上に重要なものだ」
「っ!?……王族護衛以上に重要な任務、なのですか?」
「あぁ、そうだ」
いつになく真剣な表情のフェビルの言葉に、今度はメストが狼狽えた。
(ならば、どうしてラピスだけ選ばれた? 王族護衛以上に重要なことなら、騎士団全体が動いてもおかしくないはずだ)
フリージアのことを思い出せない今のメストが、『ラピスがノルベルトの改竄魔法で忘れ去られた宰相と共に、この国をノルベルトの手から救う』なんて考えられるはずがない。
「そういうことだからメスト、何度も言っているが今回の王族護衛にラピスは加わることは出来ない。分かったな?」
「……分かり、ました」
(すまない、メスト。だが、まだ言えないんだ)
フェビルはレクシャから手紙を通して、ノルベルトが第四部隊ごと王族を亡き者にしようとしていることを知った。
『余計な犠牲を出さない』。これは、フェビルとレクシャが交わした約束だった。
だからこそ、自分以上に第四部隊を知っているメストに王族護衛の陣形や配置を任せた。
有能な彼ならきっと素晴らしい陣形や配置をしてくれるだろうと信じていたから。
そんなフェビルの期待に応えるように、メストは何度も練り直した末に、作戦立案を任せることが多いグレアが納得する計画を立ててくれた。
ちなみに、メストに王族護衛の計画を任せ、グレアに書類仕事を押し付けた隙に、フェビルは余計な犠牲を出さず、迅速かつ確実に作戦がレクシャの成功するよう出来うる限りの根回しを水面下で行った。
例えば、ノルベルトの影響がそこまでない第二騎士団にレクシャの作戦に参加させ、ノルベルトの手中にある魔法陣の解放を手伝わせたり、例年通り第一騎士団を例年通り会場であるコロッセオの警備をさせるように唆したりした。
だが、フェビルか指図されることを嫌ったノルベルトは、フェビルからの意見を一切聞かなかった。
それでも、魔物討伐を主な任務としている第二騎士団をノルベルトが毛嫌いしているのを知っていたので、フェビルはノルベルトに見つからずすんなりとレクシャの作戦に参加させることが出来た。
そして、コロッセオまで無事に王族を護衛した後、第四部隊にはコロッセオの前で王族護衛をさせようと考えていた。
もちろん、このことをメストには伝えていない。
そんなことなど知る由もないメストは、ラピスが王族護衛以上に重要な任務を与えられていると知って酷く落ち込む。
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