木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第407話 後方支援(後編)

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「妻だけでなく『子ども』に任せたということは……息子だけでなく、娘にも話したのだな?」
「えぇ、彼らもいずれ大人になります。そのための前準備としてこの役目を任せました」
「なるほどな」


 (本当は、妻や子ども達に大事な役目を任せたくなかっただろうに)

 妻を溺愛し、子を持つ親としてレクシャは、ユークの決断に静かに胸を痛める。
 すると、ユークの後ろに控えていた護衛騎士がユークの耳元で囁く。


「旦那様、そろそろ」
「分かっておる」


 小さく頷いたユークは、レクシャの方を見ると深々と頭を下げる。


「それでは、公爵様。失礼致します」
「あぁ、貴殿の……貴殿達の働きがこの作戦の成功に大きく左右する。期待しているぞ」
「分かっております。我がミストラル家、公爵様達がこの国をノルベルトの手から奪還し、再び社交界でお会いできることを信じ、全身全霊をもって皆様方の後方支援を行わせていただきます」


 ミストラル家はこの作戦で後方支援全般を担う。
 王都から西にある領地の屋敷で、ユークは東西南北に散らばった家族や伝達役の私兵から通信魔法で報告を受け、部下と手分けして必要な魔道具や食料などの物資を各拠点へと転移魔法で届ける。
 そして、必要に応じて帝国にある本家ミストラル伯爵家から物資を送ってもらう。

 つまり、ミストラル家は作戦においての生命線なのである。

 (公爵様から任されたこの役目、必ずや果たしてみせる!)

 小さく拳を握ったユークは、何かを思い出して顔を上げるとレクシャに声をかける。


「公爵様」
「何だ?」
「次にお会いする時、あの美しい公爵邸のタウンハウスの庭で久しぶりにチェスでもしましょう」


 緊迫した空気の中、小さく笑みを浮かべたユークがささやかな約束を口にすると、眉間に皺を寄せていたレクシャがフッと笑みを零す。


「あぁ、そうだな。貴殿とのチェスは楽しいからな」
「私も、公爵様とのチェスは楽しいです。それに、私の手土産を喜んでくださる公爵様のお顔を久しぶりに見たいですし」
「ハハッ、貴殿の手土産はどれも素晴らしいからな。つい、顔が綻んでしまう」
「ありがとうございます。では、また」


 王都でもかなり大きいサザランス公爵家のタウンハウスの庭で、よくチェスをやっていたレクシャとユーク。
 そんな在りし日のことを思い出したレクシャは、楽しそうに笑いながら転移魔法の魔道具を使って護衛と共に屋敷に戻るユークを見送った。


「全く、この状況で私と約束を取り付けるとは……さすが、ミストラル侯爵殿だな」


 (ノルベルトの動きを私が探っていた時、いち早く気づき、私に接触してきたのは、他でもない侯爵殿だった)

 数多の情報からミストラル家が経営している商会とって利益になる物や人、懇意にしている相手が欲しい物を瞬時に見抜き、人の良さそうな笑みを浮かべながら相手の懐に入り、相手の欲しい物を提示して商会やミストラル家の繫栄につなげるユーク。

 その商人としての情報網の広さと慧眼さと直感さ、交渉術からの人心掌握は、帝国で大商会を経営している本家ミストラル伯爵家の縁戚にあたる者と言わざるを得ない類稀なる才能だった。

 そして、その才能は子ども達にも受け継がれつつある。

 ユークと約束を交わしたレクシャが思わず苦笑すると、机の上に置いてある通信魔法が付与された魔道具からロスペルの声が聞こえた。
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