木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第415話 お迎え

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「我が血を以ってこの家を守りたまえ」


 ステインを見送って馬小屋を後にしたフリージアは、急いで家に鍵をかけ、ウエストポーチから透明な魔石を取り出し、血術で家に『防御』の効果を付与した。

 (よし、これでカトレア達が来るまで持ち堪えられるわね)


「あとは、迎えを待つだけ」


 そう言って視線を森に向けた瞬間、森の奥から険しい顔をしたリアスタ村の村人達と、傷が一切ついていない銀色の鎧を身に纏った騎士達が現れた。

 (あら、思った以上に盛大なお迎えね)


「とはいえ、随分と物騒な雰囲気を纏っているけど」

 騎士達と共に来た村人達が持っている物に、一瞬だけ眉を顰めたフリージアは、いつもの無表情に戻すと両手を広げる。


「これはこれは、リアスタ村の皆様に、騎士団の皆様。一体何のご用でしょうか?」


 わざとらしく仰々しい挨拶をすると、しかめっ面で睨んでいた村長が声を荒げた。


「うるせえ! この反逆者が! よくも俺たちを長い間、騙しやがったな!」
「騙した? 一体、何の話でしょうか?」


 (大方、そこにいる騎士達に唆されたのでしょうけど)

 ニヤニヤと笑みを浮かべる騎士達を一瞥した木こりは、知らないとばかりに小首を傾げる。
 すると、怒りの増した村長が唾を吐きながら木こりを指差す。


「とぼけるな! 俺たちを騙して、この国に反旗を翻させようとしているんだろうが!」


 (なるほど。そこにいる騎士達から『村人達を騙して、この国に反旗を翻えさせようとしている』って言われたのね。全く、余所者嫌いなのに、騎士様の話は聞くわけね。本当、都合が良いというか何というか……それにしても、『反旗』ねぇ)

『この森から連れ出すもっといい口実は無かったのか』と思いつつ、『反旗』という言葉を聞いて僅かに口角を上げたフリージアは、すぐさま表情を戻すと心外と言わんばかりに大袈裟に首を横に振る。


「とんでもない! どうして、私があなた方を騙してこの国に反旗を翻そうとするのですか? そもそも、あなた方と同じ平民である私が、この国に反旗を翻すなんて出来るはずないでしょう」


 (そうよ、もしこの国に反旗を翻すなら私1人でやるわ。そもそも、脅威から守る術をあなた達を騙して利用しようなんて微塵も思わない! あのクズと一緒にしないで!)

 全てを奪われたあの日から、フリージアは何度もこの国に……ノルベルトが宰相として我が物顔で座っているこの国に反旗を翻そうと思った。

 けれど、その度にエドガスから『ご家族との約束がありますでしょう』と諭され、反逆する意思を押しとどめていた。

 (『生きて家族と再会する』。この約束だけが私を押しとどめた。だから私は、今日までサザランス公爵家の人間として平民を守りながらも、平民として生きてきた。例え、同じ平民達から嫌われても)


「そうやってしらばっくれるのか!」
「しらばっくれるも何も、私は本当にあなた方を騙し利用して反旗を翻そうとは思っていません」
「嘘つけ!! こちらにいらっしゃる騎士様達がおっしゃっていた! 『この森に住む平民は、我々騎士の行いを邪魔し、俺たちを騙し利用してこの国に反旗を翻す』と! 実際、お前は王都に行くたびに騎士様に対して剣を向けていたそうではないか!!」
「……その話は、一体誰が?」


 (私が自分から王都での話を村長はおろか、村人達にもしたことがない。色々と面倒なことになると思ったのと、そもそも村人達が私の話をまともに聞いてくれないと分かっていたから。だとしたら……)

 冷めた目で見るフリージアに、ニヤリと笑みを浮かべた村長が騎士達の方に手を向ける。


「もちろん、ここにいる騎士様達だ!」
「ほう?」


 下卑た笑みを浮かべる騎士達に目を向けたフリージアは、この時ようやく、村人達を連れてきた騎士達が全員、過去に王都で相手をしたことがある者達だと気づく。

 (なるほど、だからこの人たちに私のお迎えを頼んだのね)


「いくらカトレアでも、さすがにここまでは予想出来なかったみたいね」
「おいお前! 何を言っている!」


 (大方、王都で辛酸舐めさせられた仕返しとして、村人達を騙して武器を持たせ、味方を多くしてここで私を袋叩きにしてからコロッセオに連れて行く気ね。全く、騎士の風上にも置けないわ)


「というか、私を本気でコロッセオに連れて行く気があるのかしら?」


 そう呟くと、フリージアは村人達の手元に再び目を向ける。

 村人達が手に持っていた物は、本来平民の身では決して持てない剣などの武器だった。
 そして、その武器には全て王国騎士団に支給される武器の証である王国の紋章が刻まれていた。

 (まぁ、村人達が持っている物はどれも痛めつける程度の威力しかなさそうだからコロッセオに連れて行く気はあるのでしょうけど)

 村人達が持っている武器が騎士達から支給された物だと改めて理解したフリージアは、小さく溜息をつくと村人達に今まで話していなかった王都でのことを話す。


「今までお話しておりませんでしたが、私は王都でこの騎士様達に何度も切りつけられました」
「それは、お前が騎士様に楯突くからだろう!」
「そうですね。平民ですが、自分の身に危険が及ぶのであれば、例え騎士様相手でも楯突きますよ」
「貴様! それがこの国を守って下さる騎士様に対しての態度か!」


 激高する村長に、フリージアはフッと鼻で笑った。


「何が可笑しい!」
「お言葉ですが、理不尽に剣を向けてくる騎士達に抵抗して何が悪いのですか?」


 (そもそも、騎士が剣を向けるから剣を向けるだけであって……それの何が悪いのかしら?)


「貴様……そもそも、貴様が身分不相応に騎士様に向かって剣を向けるのが悪いじゃないか!」
「ですから、私は騎士達が剣を向けるからで……って、これでは埒が明きませんね」


 (だって、この人達は自分の信じたいものを信じるしかない人達だって分かってしまったから)

 我が身が可愛さに騎士に味方する村人達に、再び小さく溜息をついたフリージアは視線を村人達から騎士達に移す。


「ところで、王都で聞いたのですが……確か、私は今日、会場となるコロッセオに連れていかれるのですよね?」
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