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第7章 余興と奇貨の建国祭
第419話 カルミア・インベック(前編)
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「カルミア様!」
「おぉ、我らが女王様!」
突然現れたカルミアに、しょうもない諍いをしていた騎士達は騎士らしい礼をとる。
(あの女が女王様って呼ばれているの? てっきり、改竄魔法の影響で『女神』と呼ばれているダリアが『女王様』とも呼ばれていると思ったんだけど)
そんなことを思いつつ、フリージアは豊満な胸を強調する真っ赤なドレスに身を包む彼女に対して鼻の下を伸ばしている騎士達に溜息をつく。
「お母様が知ったら、さぞかしお怒りになるでしょうね」
『社交界の華』と呼ばれていたフリージアの母ティアーヌと、『社交界の毒婦』と陰で呼ばれていたダリアの母カルミアは昔から仲が悪かった。
というのも、ティアーヌの生家である伯爵家と、カルミアの生家の侯爵家が犬猿の仲で、何かと対立していた。
加えて、男勝りでありながらも可憐でお淑やかな性格のティアーヌと、強欲でプライドが高くあざとい性格のカルミアは、お互いにお互いの性格が気に入らなかった。
そのため、事あるごとに諍いをしていた。
ちなみに、学生時代は『ティアーヌ派』と『カルミア派』という二大派閥が作られ、それは改竄魔法がかけられる社交界にも大きく影響していた。
(社交界では比較的穏やかなお母様が、唯一感情的になる人なのよね)
随分前に父から聞いた話を思い出し、再び溜息をついたフリージア。
そんな彼女をよそに、カルミアは騎士達から熱い視線を浴びて満更でもない顔をしながら、門から現れると見目麗しい顔立ちの騎士を見つけ、彼に向かってすかさず自慢の胸を押し付ける。
「それで、一体何の騒ぎなのかしら?」
カルミアから胸を押し付けられながら猫なで声で聞かれ、顔を真っ赤にした騎士は声を上擦らせながら答える。
「そ、それが! カルミア様のご息女であらせられるダリア様の命令で、辺鄙な村から下賤な平民をこちらに連れてきたのですが、どうやらその村に住んでいる平民達も一緒に来てしまったのです!」
「へぇ~、下賤な平民が建国祭にこの由緒ある旧都に入れて欲しいと」
僅かに眉を顰めたカルミアは村人達に侮蔑の視線を向けると、フリージアと村人達を連れてきた隊長格の男がカルミアの前に出る。
「恐れながらカルミア様。かの者達は、あのボロ馬車にいる大罪人を捕まえるのに協力した者達です。故に、この者達は我らの同志として、この由緒ある旧都に入れても良いかと!」
(『捕まえた』って単にあんた達が根負けしただけじゃない。本当、都合の良いことしか言わないわね)
隊長格の男の言い訳を聞いたフリージアが心底呆れていると、小さく鼻を鳴らしたカルミアがお気に入りの騎士から離れる。
そして、隊長格の男にしなだれかかると、白魚のような細長い綺麗な手を男の頬に優しく添えた。
「ねぇ、今日が我が国の建国を祝う大事な日だって知っているわよね?」
「も、もちろんです!」
カルミアに突然迫られ、隊長格の男が狼狽えながら答えると、カルミアの口角が歪に上がった。
「だったら、コロッセオに通じるこの旧都に野蛮な下民を入れてはいけないくらい分かっているわよね?」
「で、ですが! 彼らは我らの同志で……」
「もういいわ」
不快そうに眉を顰めたカルミアが、男の頬に優しくキスをすると、男にしなだかかったまま、馬車の傍で固まっている平民達に向かって手を翳す。
「カ、カルミア様!」
「高貴なあなた達を誑かすなんて、さすが下賤で卑しい者達ね」
「え?」
カルミアが赤い魔法陣を展開した瞬間、身の危険を感じた村人達が全員、顔を真っ青にしながら怯え始める。
その様子に愉悦を感じたカルミアは楽しそうに嗤う。
「貴族と違って、下民は生まれた時から醜い存在だから、きっと私たちも知らない卑怯で恐ろしい技を知っているのでしょうね」
面白い話をするように話すカルミアに、隊長格の男は慌てて止める。
「ですが、カルミア様。『社交界の華』であるあなたが、わざわざそのようなことをなさらなくても……」
「大丈夫よ。貴族を守るのは宰相の妻である私の役目。だから、あなたを誑かした下民は私が自ら始末するわ」
「カルミア様……!」
宰相家の女夫人とは思えない蛮行に、隊長格の男は尊敬の眼差しを向け、村人達は恐怖で足が竦んで、悲鳴を上げることも出来ない。
そんな状況の中、愉しそうに嗤っているカルミアは、村人達に向かって魔法を放つ。
「《ファイヤーボール》♪」
(さぁ、建国祭前に軽いお掃除よ♪)
カルミアが放った巨大な火球が村人達に届こうとしたその時、馬車から手枷を付けた木こりが飛び出す。
そして、村人達の前に立った木こりは、手枷に透明な魔力を纏わせて両手を翳すと、目の前に迫った火球を打ち消した。
「おぉ、我らが女王様!」
突然現れたカルミアに、しょうもない諍いをしていた騎士達は騎士らしい礼をとる。
(あの女が女王様って呼ばれているの? てっきり、改竄魔法の影響で『女神』と呼ばれているダリアが『女王様』とも呼ばれていると思ったんだけど)
そんなことを思いつつ、フリージアは豊満な胸を強調する真っ赤なドレスに身を包む彼女に対して鼻の下を伸ばしている騎士達に溜息をつく。
「お母様が知ったら、さぞかしお怒りになるでしょうね」
『社交界の華』と呼ばれていたフリージアの母ティアーヌと、『社交界の毒婦』と陰で呼ばれていたダリアの母カルミアは昔から仲が悪かった。
というのも、ティアーヌの生家である伯爵家と、カルミアの生家の侯爵家が犬猿の仲で、何かと対立していた。
加えて、男勝りでありながらも可憐でお淑やかな性格のティアーヌと、強欲でプライドが高くあざとい性格のカルミアは、お互いにお互いの性格が気に入らなかった。
そのため、事あるごとに諍いをしていた。
ちなみに、学生時代は『ティアーヌ派』と『カルミア派』という二大派閥が作られ、それは改竄魔法がかけられる社交界にも大きく影響していた。
(社交界では比較的穏やかなお母様が、唯一感情的になる人なのよね)
随分前に父から聞いた話を思い出し、再び溜息をついたフリージア。
そんな彼女をよそに、カルミアは騎士達から熱い視線を浴びて満更でもない顔をしながら、門から現れると見目麗しい顔立ちの騎士を見つけ、彼に向かってすかさず自慢の胸を押し付ける。
「それで、一体何の騒ぎなのかしら?」
カルミアから胸を押し付けられながら猫なで声で聞かれ、顔を真っ赤にした騎士は声を上擦らせながら答える。
「そ、それが! カルミア様のご息女であらせられるダリア様の命令で、辺鄙な村から下賤な平民をこちらに連れてきたのですが、どうやらその村に住んでいる平民達も一緒に来てしまったのです!」
「へぇ~、下賤な平民が建国祭にこの由緒ある旧都に入れて欲しいと」
僅かに眉を顰めたカルミアは村人達に侮蔑の視線を向けると、フリージアと村人達を連れてきた隊長格の男がカルミアの前に出る。
「恐れながらカルミア様。かの者達は、あのボロ馬車にいる大罪人を捕まえるのに協力した者達です。故に、この者達は我らの同志として、この由緒ある旧都に入れても良いかと!」
(『捕まえた』って単にあんた達が根負けしただけじゃない。本当、都合の良いことしか言わないわね)
隊長格の男の言い訳を聞いたフリージアが心底呆れていると、小さく鼻を鳴らしたカルミアがお気に入りの騎士から離れる。
そして、隊長格の男にしなだれかかると、白魚のような細長い綺麗な手を男の頬に優しく添えた。
「ねぇ、今日が我が国の建国を祝う大事な日だって知っているわよね?」
「も、もちろんです!」
カルミアに突然迫られ、隊長格の男が狼狽えながら答えると、カルミアの口角が歪に上がった。
「だったら、コロッセオに通じるこの旧都に野蛮な下民を入れてはいけないくらい分かっているわよね?」
「で、ですが! 彼らは我らの同志で……」
「もういいわ」
不快そうに眉を顰めたカルミアが、男の頬に優しくキスをすると、男にしなだかかったまま、馬車の傍で固まっている平民達に向かって手を翳す。
「カ、カルミア様!」
「高貴なあなた達を誑かすなんて、さすが下賤で卑しい者達ね」
「え?」
カルミアが赤い魔法陣を展開した瞬間、身の危険を感じた村人達が全員、顔を真っ青にしながら怯え始める。
その様子に愉悦を感じたカルミアは楽しそうに嗤う。
「貴族と違って、下民は生まれた時から醜い存在だから、きっと私たちも知らない卑怯で恐ろしい技を知っているのでしょうね」
面白い話をするように話すカルミアに、隊長格の男は慌てて止める。
「ですが、カルミア様。『社交界の華』であるあなたが、わざわざそのようなことをなさらなくても……」
「大丈夫よ。貴族を守るのは宰相の妻である私の役目。だから、あなたを誑かした下民は私が自ら始末するわ」
「カルミア様……!」
宰相家の女夫人とは思えない蛮行に、隊長格の男は尊敬の眼差しを向け、村人達は恐怖で足が竦んで、悲鳴を上げることも出来ない。
そんな状況の中、愉しそうに嗤っているカルミアは、村人達に向かって魔法を放つ。
「《ファイヤーボール》♪」
(さぁ、建国祭前に軽いお掃除よ♪)
カルミアが放った巨大な火球が村人達に届こうとしたその時、馬車から手枷を付けた木こりが飛び出す。
そして、村人達の前に立った木こりは、手枷に透明な魔力を纏わせて両手を翳すと、目の前に迫った火球を打ち消した。
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