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第7章 余興と奇貨の建国祭
第420話 カルミア・インベック(後編)
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「あんた、誰?」
突然現れた木こりに、不快そうに眉を顰めるカルミア。
そんな彼女を見て、フリージアが堪らず噴き出す。
「何が可笑しい?」
「いえ、ただ……」
冷笑を浮かべたフリージアが、カルミアに蔑みの目を向ける。
「宰相家の夫人とあらせるお方が『あんた』という言葉をお使いになられるとは……『この国も随分と落ちぶれたものだな』と思いまして」
「はぁ!?」
眉を吊り上げながら激高するカルミアを見て、フリージアは笑みを深める。
(さすが親子。貴族とは思えない下品なリアクションね。だから、この国が乱れるのよ)
「まぁ、その元凶を止められなかった私たち家族にも責任はあるのだけど」
誰にも聞こえない声で呟いたフリージアは、透明な魔力を纏わせた反動で、ボロボロになって壊れて地面に落ちてしまった手枷を一瞥する。
(これは、もう一回手枷を付けてもらわないといけないわね)
あらゆる魔法を無効化する無効化魔法は、あまりにも強力なため魔法のため、得物となる物には必ず無効化魔法の使い手の血を垂らし、無効化魔法の魔法文字を刻む。
でなければ、得物の方が強力な魔法に耐え切れないのである。
隊長格の男が不機嫌そうに睨む中、静かに笑みを潜めたフリージアは左胸に手をあて、カルミアに向かって深々とお辞儀をする。
「突然の無礼、大変失礼致しました。私は、ダリア・インベック様に呼ばれた平民でございます」
「平民風情が、私の娘の名前を軽々しく呼ぶんじゃない!!」
愛娘の名前を平民に呼ばれて激高したカルミアは、周囲の目などお構いなしと、侍女が持っていたマジックバックから愛用の鞭を取り出す。
そして、フリージアに向かってしならせた鞭を物凄い速さで放った。
(フッ、やっぱり親子ね)
サッと顔を上げたフリージアは、背後にいる村人達を一瞥すると下ろしていたレイピアで軽くいなす。
「なにっ!」
(この私の鞭をたかだか平民風情に止められた!?)
気に入った殿方を1人残らず篭絡させるほどの美貌を持つカルミアは、とにかくプライドが高く、気に入らないことがあれば、相手が貴族だろうと使用人だろうと容赦無く鞭を打つ。
その速さたるや、素人目では捉えらないほど速く、鍛えられた騎士でも彼女の鞭を紙一重で躱すのがやっとである。
だが、フリージアは幼い頃から彼女以上に鞭捌きが上手い人に鍛えられていたので、カルミアの鞭がスローモーションのように見えており、レイピアでいなすことくらい容易かった。
(普通の人に比べて鞭捌きが速いとはいえ、ろくに鍛えてもいない女の鞭なんて、日頃鍛錬で鞭を使われているお母様に比べればたいしたことはないわ)
普段は、鉄製の護身用扇子を愛用している母ティアーヌ。
けれど実は、幼い頃から護身術の一環として鞭を嗜んでいて、その実力は学生時代に行われた闘技大会で毎年優勝していた程だった。
そして結婚後は、鍛え上げたしなやかでありつつも力強い華麗な鞭捌きで、夫や子ども達、使用人達の鍛錬に付き合っていた。
そんな母のことを思い出し、僅かに笑みを浮かべたフリージアは、笑みを潜めるとレイピアを鞘に戻す。
「あの、差し出がましいことを申し上げますが、今日は我が国の建国を祝う。そんな晴れやかな日に流血騒ぎ……それも、宰相家の夫人が行ったと多くの民に知られれば、どうなるかお分かりになりますでしょう?」
「そんなの、私の名誉が上がるに決まっているじゃない!」
「……どうしてそんな野蛮な結論になるのかしら?」
「何ですって!!」
(でもまぁ、今更よね)
大貴族の女主人とは思えないカルミアの答えを聞いて、小さく溜息をついたフリージアは再びカルミアに冷たい目を向ける。
「ともかく、この年に一度の素晴らしい日に無益な血が流れることは、この国の民はもちろんのこと、国王陛下はおろか、宰相閣下も良い顔をされないのでは?」
「っ!」
『宰相閣下』という言葉が出た瞬間、顔を青ざめさせていたカルミアは。高く上げていた鞭を下ろす。
(いくらプライドが高いとはいえ、夫の機嫌を損ねればどんなことになるか流石に分かっているわよね)
「確かに、この国を治めている夫が良い顔をしないわね」
「お言葉ですが、この国を治めているのは国王陛下ですよ?」
「うるさいわね! あのお飾り国王なんて夫の足元にも及ばないわよ!」
「……王族相手になんと無礼なことを」
(これも改竄魔法の影響なのは分かっているのだけれど……あの男、どれだけ改竄魔法を使って多くの人の記憶を弄っているのよ)
この国の主を何の躊躇いもなく愚弄するカルミアに、フリージアが心底呆れるように小さく溜息をつく。
すると、村人達に視線を向けたカルミアが、無い知恵を一生懸命絞ると結論を出したかのように不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「分かったわ。夫の顔に免じてそこにいる愚民共は殺さないであげる。ただし、この旧都に繋がる門の前で待つように!!」
「女王陛下! それは……」
「ありがとうございます」
「フン! これも女王たる私の務めなんだから!」
(務めというより、単に夫の機嫌を損ねたくないだけでしょ)
深々と頭を下げつつ、内心愚痴を零したフリージアは、用は済んだとばかりにそそくさと馬車に戻ると、不満たらたらの騎士達に護衛されながら、建国祭で様変わりしている旧都へ入った。
突然現れた木こりに、不快そうに眉を顰めるカルミア。
そんな彼女を見て、フリージアが堪らず噴き出す。
「何が可笑しい?」
「いえ、ただ……」
冷笑を浮かべたフリージアが、カルミアに蔑みの目を向ける。
「宰相家の夫人とあらせるお方が『あんた』という言葉をお使いになられるとは……『この国も随分と落ちぶれたものだな』と思いまして」
「はぁ!?」
眉を吊り上げながら激高するカルミアを見て、フリージアは笑みを深める。
(さすが親子。貴族とは思えない下品なリアクションね。だから、この国が乱れるのよ)
「まぁ、その元凶を止められなかった私たち家族にも責任はあるのだけど」
誰にも聞こえない声で呟いたフリージアは、透明な魔力を纏わせた反動で、ボロボロになって壊れて地面に落ちてしまった手枷を一瞥する。
(これは、もう一回手枷を付けてもらわないといけないわね)
あらゆる魔法を無効化する無効化魔法は、あまりにも強力なため魔法のため、得物となる物には必ず無効化魔法の使い手の血を垂らし、無効化魔法の魔法文字を刻む。
でなければ、得物の方が強力な魔法に耐え切れないのである。
隊長格の男が不機嫌そうに睨む中、静かに笑みを潜めたフリージアは左胸に手をあて、カルミアに向かって深々とお辞儀をする。
「突然の無礼、大変失礼致しました。私は、ダリア・インベック様に呼ばれた平民でございます」
「平民風情が、私の娘の名前を軽々しく呼ぶんじゃない!!」
愛娘の名前を平民に呼ばれて激高したカルミアは、周囲の目などお構いなしと、侍女が持っていたマジックバックから愛用の鞭を取り出す。
そして、フリージアに向かってしならせた鞭を物凄い速さで放った。
(フッ、やっぱり親子ね)
サッと顔を上げたフリージアは、背後にいる村人達を一瞥すると下ろしていたレイピアで軽くいなす。
「なにっ!」
(この私の鞭をたかだか平民風情に止められた!?)
気に入った殿方を1人残らず篭絡させるほどの美貌を持つカルミアは、とにかくプライドが高く、気に入らないことがあれば、相手が貴族だろうと使用人だろうと容赦無く鞭を打つ。
その速さたるや、素人目では捉えらないほど速く、鍛えられた騎士でも彼女の鞭を紙一重で躱すのがやっとである。
だが、フリージアは幼い頃から彼女以上に鞭捌きが上手い人に鍛えられていたので、カルミアの鞭がスローモーションのように見えており、レイピアでいなすことくらい容易かった。
(普通の人に比べて鞭捌きが速いとはいえ、ろくに鍛えてもいない女の鞭なんて、日頃鍛錬で鞭を使われているお母様に比べればたいしたことはないわ)
普段は、鉄製の護身用扇子を愛用している母ティアーヌ。
けれど実は、幼い頃から護身術の一環として鞭を嗜んでいて、その実力は学生時代に行われた闘技大会で毎年優勝していた程だった。
そして結婚後は、鍛え上げたしなやかでありつつも力強い華麗な鞭捌きで、夫や子ども達、使用人達の鍛錬に付き合っていた。
そんな母のことを思い出し、僅かに笑みを浮かべたフリージアは、笑みを潜めるとレイピアを鞘に戻す。
「あの、差し出がましいことを申し上げますが、今日は我が国の建国を祝う。そんな晴れやかな日に流血騒ぎ……それも、宰相家の夫人が行ったと多くの民に知られれば、どうなるかお分かりになりますでしょう?」
「そんなの、私の名誉が上がるに決まっているじゃない!」
「……どうしてそんな野蛮な結論になるのかしら?」
「何ですって!!」
(でもまぁ、今更よね)
大貴族の女主人とは思えないカルミアの答えを聞いて、小さく溜息をついたフリージアは再びカルミアに冷たい目を向ける。
「ともかく、この年に一度の素晴らしい日に無益な血が流れることは、この国の民はもちろんのこと、国王陛下はおろか、宰相閣下も良い顔をされないのでは?」
「っ!」
『宰相閣下』という言葉が出た瞬間、顔を青ざめさせていたカルミアは。高く上げていた鞭を下ろす。
(いくらプライドが高いとはいえ、夫の機嫌を損ねればどんなことになるか流石に分かっているわよね)
「確かに、この国を治めている夫が良い顔をしないわね」
「お言葉ですが、この国を治めているのは国王陛下ですよ?」
「うるさいわね! あのお飾り国王なんて夫の足元にも及ばないわよ!」
「……王族相手になんと無礼なことを」
(これも改竄魔法の影響なのは分かっているのだけれど……あの男、どれだけ改竄魔法を使って多くの人の記憶を弄っているのよ)
この国の主を何の躊躇いもなく愚弄するカルミアに、フリージアが心底呆れるように小さく溜息をつく。
すると、村人達に視線を向けたカルミアが、無い知恵を一生懸命絞ると結論を出したかのように不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「分かったわ。夫の顔に免じてそこにいる愚民共は殺さないであげる。ただし、この旧都に繋がる門の前で待つように!!」
「女王陛下! それは……」
「ありがとうございます」
「フン! これも女王たる私の務めなんだから!」
(務めというより、単に夫の機嫌を損ねたくないだけでしょ)
深々と頭を下げつつ、内心愚痴を零したフリージアは、用は済んだとばかりにそそくさと馬車に戻ると、不満たらたらの騎士達に護衛されながら、建国祭で様変わりしている旧都へ入った。
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