木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第424話 カトレアの騎士として

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「ティブリー嬢」
「何でしょう?」
「昨日も聞きましたが、護衛役はラピスだけでよろしかったのですか?」
「ライド隊長、それは俺が騎士として未熟者で頼りないということでしょうか?」


 (確かに俺はまだ騎士としてはまだ未熟者ではある。だが、カトレアを守れるのは俺だけだ!)

 隣で来ていたラピスが威嚇をするように低い声で詰め寄ると、ライドが慌てたように首を横に振る。


「そういう意味じゃない! 騎士としてのお前の実力は、近衛騎士に選ばれるくらいの実力なのは認めている!」
「それなら、何だというのですか?」


 ラピスの放つ殺気に気づき、周囲が緊張感に包まれる中、冷や汗を掻いているライドは問い質した理由を話す。


「俺が言いたいのは、『天才魔法師』であるティブリー嬢の護衛が、騎士1人だけで大丈夫なのかと聞いているんだ!」
「……つまり、『天才魔法師』なのだから、護衛を増やした方が良いと言いたいのですか?」
「そういうことだ! だから、その殺気をしまえ!」
「……申し訳ございません」


 殺気を放つことを止めたラピスが深々と頭を下げると、緊張感から解放されたライドが深く溜息をつく。

 (はぁぁ、怖かった。しかし、こいつのことは第二騎士団にいたから知っているが……ここまでティブリー嬢のことが好きだったとは知らなかった)


『ライド、ティブリー嬢の護衛はラピスだけに任せろとのフェビル団長からお達しだ。何でも『他の奴にティブリー嬢の護衛を任せたくない』だと』


 第二騎士団団長モリスから作戦を聞かされた時、モリスから言われたことを思い出し、ライドは再び溜息をつく。

 ラピスがカトレアのことを溺愛していることは、第二騎士団内では周知の事実で、ライドも当然のことながら知っていた。
 だが、ここまで好きだったとは、第二騎士団長から言われたとはいえ、さすがのライドも想像がつかなかった。

 なにせ、第二騎士団にいた頃のラピスと『天才魔法師』であるカトレアが、一緒にいるところをライドが見たことが無かったからである。

 部下から威圧されて、げっそりしているライドを見て、優しく微笑んだカトレアがライドに頭を下げる。


「ライド様。お気遣いいただき、ありがとうございます。ですが、私の護衛はラピスだけで十分です。むしろ、本来の力を取り戻した今のラピスなら、死に物狂いで私のことを守ってくれますので」
「『死に物狂いで』ですか……」


 そう言うと、ライドはラピスが腰に携えている双剣を一瞥する。

 (腰に、いつもの片手剣ではなく、随分と珍しい双剣を携えているが……もし、今のラピスが本来のラピスなら、彼が本気でティブリー嬢を守るに違いない)

 ラピスが腰に携えている黄色と青の双剣を見て、ライドから安堵の笑みを浮かべると、カトレアは横にいるマーザス、そして屋敷の後ろで固まっている黒いフードの集団を見やる。


「それに、私の護衛に人員を割くくらいでしたら、帝国からはるばる来られた方々に人員を割いた方がよろしいかと」
「あっ、僕は良いよ。僕、一応筆頭宮廷魔法師だから、人員を割くなら後ろにいる彼らにして欲しいな」
「そ、そうですね。分かりました。帝国と王国の天才魔法師達からのご配慮、感謝申し上げます」
「「…………」」


 (本当は、私じゃなくて私の師匠が『天才魔法師』なのだけど)
 (まぁ、全てが元に戻ったらすぐに分かることだよね)

 『王国の天才魔法師』という二つ名を聞いて、カトレアとマーザスは淡い緑色の髪を1つに束ね、銀色の瞳と整った容姿のもち、家族のために魔法を極めるロスペルを思い出し、アイコンタクトを交わすと揃って苦笑する。

 そんな2人を見て、ラピスが呆れたように溜息をついていると、ライドがラピスの肩に手を置いて小声で囁く。


「ラピス、ティブリー嬢のことは任せたぞ」
「もちろんです」


 (そのために俺は、今日までカトレアと共に鍛錬をしてきたのだから)

 親友を助けたいと鍛錬をするカトレアの隣で、彼女を守り、彼女の願いを一緒に叶えたいと、ラピスは腰に携えた双剣の柄を使って鍛錬をしてきた。

 ライドの言葉を聞いて、ラピスが決意を新たにする。
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