木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第432話 魔法陣奪還戦(後編)

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 『帝国の死神』達による魔法陣の中にある黒い魔力の無効化作業が始まった途端、魔法陣から飛び出すように大小様々な魔物が矢継ぎ早に現れ、静けさのあった森は瞬く間に騒がしくなる。


「しまった! カトレア!」
「っ!」


 周囲が魔物討伐で混戦している中、カトレアの護衛をしていたラピスがほんの少しだけカトレアから離れた隙に、狼型の中型魔物がカトレアの前に飛び出し、騎士達の援護に集中しすぎて気づくのが遅れたカトレアに向かって火球を放とうとしていた。


「《アイシクルラ……》」
「《ウォーターショット》。《ウォーターランス》」


 魔物に気づいて慌てて魔法陣を展開したカトレアよりも先に、瞬時に魔法陣を展開したマーザスが水属性の中級魔法で魔物が放った火球を打ち消し、続けざまに水の槍を放って魔物の頭を射貫く。


「すみません、マーザス様」
「良いよ、こんな大勢の騎士達の援護なんて滅多に無いから、集中しすぎて周囲の警戒を怠ってしまうのも仕方ないよ」


 (それでも、マーザス様のように援護をしながら周囲を警戒することが出来なくて悔しい)


「マーザス殿、ありがとうございます」
「良いってことよ」


 悔しがるカトレアを見て僅かに眉を顰めつつ、彼女の隣に来たラピスがマーザスに礼を言うと、柔らかな笑みを浮かべたマーザスが周囲を見渡すと、腰に下げているマジックバックから魔力回復用のポーションを取り出す。
 そして、そのままカトレアとラピスに無理矢理握らせた。


「はいこれ。ちゃんと飲んでね。まだ魔物はたくさんいるんだから」
「「ありがとうございます」」


 (そうよ、魔物はまだいるのだからここで挫けてはいけないわ!)

 マーザスの言葉に発破をかけられたカトレアと、それを見て安堵したラピスが揃ってマーザスから貰ったポーションを一気飲みする。
 それを見てマーザスが満更でもない顔をしていると、騎士達の指揮を執っていたライドが3人のもとに駆け寄ってきた。


「筆頭宮廷魔法師殿、お疲れ様です」
「お疲れ、状況はどうなっている?」
「現在、作戦通り我が騎士達が魔物達を討伐しつつ、帝国からの来客を守っているところです」
「ふむ、では今のところ、彼らは魔法陣の中にある黒い魔力を無効化しているところだね?」
「そうです。しかし、予想以上の魔物の数が多く……」
「そうだろうね」


 結界魔法用として作られた魔法陣は、ノルベルトの黒い魔力が注がれる度、魔法陣内で反発が起きる。

 魔法陣に設定した王族の魔力とは、明らかに異なる魔力が注がれるからだ。

 だが、ノルベルトが毎回、無遠慮に膨大な黒い魔力を注ぐせいで、一時的に魔法陣の設定が無理矢理改竄され、結果的に改竄魔法の効力を上げている。

 その際、反発の影響で黒い魔力が溢れ出てしまい、その溢れ出た黒い魔力が魔物の核として形成される。


 その結果、ノルベルトが魔力を注ぐたびに、魔法陣の周囲に魔物が現れるようになってしまった。


「大方、無効化魔法から逃れるために、黒い魔力たちが外に出て、それが魔物の出現に繋がっているでしょう。とはいえ、彼らが順調に黒い魔力の無効化をしているってことは、魔物の数も段々少なくなるでしょうね」
「そうなのですか?」
「うん。彼らがちゃんと仕事しているなら、そう時間が経たないうちに魔物も現れなくなるよ」


 『帝国の死神』であるサザランス侯爵家の十八番である無効化魔法が、魔法陣の中にある膨大な黒い魔力を無効化していると聞いて、ニヤリとマーザスが笑うと、魔力が回復したカトレアが声をかける。


「マーザス様、そろそろ戻りましょう」
「そうだね。もうすぐで魔物が現れなくなるとはいえ、頑張っている騎士達の体力を少しでも温存させておかないと」


 カトレアの言葉に小さく頷いたマーザスは、ラピスやライドと共に魔物達と戦っている戦場へと戻る。

 そうして、マーザス達が再び騎士達の援護を始めて約1時間後。
 魔法陣の中にあった黒い魔力は全て無効化され、魔力陣から魔物が現れることは無かった。
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