木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第7章 余興と奇貨の建国祭

第454話 バカにしてる

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「はぁ!? 私が『宰相家令嬢』という地位をバカにしている!? バカにしているのはあんたの方じゃない!!」


 フリージアの『宰相家令嬢の地位をバカにしている』という言葉に激高するダリア。
 そんな彼女に絶対零度の視線を向けるフリージアは、怒りで小さく体を震わしながらも淡々とした口調で話す。


「いやいや、どこをどう考えてもバカにしているのはあなたでしょ。この国で一番偉い人のことも宰相家令嬢の役割のことも……婚約者を蔑ろにしていることすらも理解出来ないなんて。これはもう、宰相家令嬢としての地位はおろか、貴族そのものをバカにしているとしか思えないわ」
「何ですって!!」


 怒りで声を荒げるダリアに呼応するように、フリージアに観客から罵声が飛ぶ。


「貴様! 我が国の女神たる宰相家令嬢様になんてことを!」
「そうよ、本来ならあなたのような下民が口を聞いていい人じゃないの!」
「女神に歯向かう愚か者は、すぐさま処刑してやる!!」
「「「「「処刑! 処刑! 処刑! 処刑!」」」」」


 コロッセオに響き渡るフリージアの『処刑』コール。
 耳を劈くような大合唱にフリージアが堪らず眉を顰めると、ダリアが大きく手を叩く。
 すると、コロッセオが一瞬にして静寂に包まれる。


「あんた達、私のために言ってくれてありがとう。けど、うるさいから黙っていてくれない? あまりにも下品な歓声であんた達全員を燃やしたくなるから」
「「「「「ヒッ!!!!」」」」」


 目を吊り上げたダリアが手の上に魔法で作った赤い炎を灯すと、観客全員の表情が引き攣ったものに変わる。
 その様子に心底呆れたように溜息をついたダリアは、フリージアに視線を戻すと口角を歪に上げる。


「でも、処刑して欲しいというあんた達の願いは叶えて上げる。だって、そのためにこの場にあの下民を呼んだのだから」
「「「「「わ――――!!!!!」」」」」


 コロッセオ中に響き渡る観客からの嫌な歓声に、心地よさを感じたダリアが下卑た笑みを浮かべながら手に作った炎をフリージアに向ける。


「さて、パーティーの余興として、あんたには私の綺麗で美しい魔法に、醜く焼き殺されて頂戴♪」


 ダリアの愉悦と侮蔑の籠った表情と言葉に、フリージアが眉を顰めると後ろ手に嵌められていた手枷と腰に携えられたレイピアの存在を思い出す。

 (そう言えば、あの騎士がバカだったお陰でレイピアは奪われなかったわね。まぁ、手枷をつけたままだけど。けどまぁ……)

 手首から感じる冷たい感触に、僅かに笑みを零したフリージアは心底呆れた表情をするとダリアに話しかける。
 その眼には、決してその眼には決して諦めの色はなかった。


「本当に、私を余興の一環として公開処刑するのね」
「当たり前じゃない! あなたはこの国を脅かした大罪人! 私の大切な国民を傷つけた罪は万死に値する! だから、この場で余興として処刑する! そして、私の更なる名声を得る糧になってもらう!」


 本音交じりの仰々しい宣言に絶望することも無く、更に呆れたフリージアは大きくため息をつく。


「ハァ、『大切な国民』ね。まぁ、あなたにとって『大切な国民』ってどうせ貴族だけなのでしょ?」
「そうよ! 私にとって『大切な国民』は貴族! そして、下民はこの国の害虫でしかない! だから、あなたを処刑した後、パーティーのメインディッシュとして、この国にいる下民全員を貴族で皆殺しにするの!」
「っ!」


 ダリアの言葉に引っ掛かりを覚えたフリージアはあることに気がつく。

 (もしかして、ダリアは父親から作戦について聞いていない? それとも忘れているだけ?)

 随分前にカトレア達から聞いたノルベルトの作戦では、建国祭で余興を終えた直後、コロッセオからありったけの魔力で改竄魔法を使って国民全員を傀儡にし、自身の駒として帝国を攻め入るというものだった。
 その国民全員に、貴族も平民も関係無かった。

 なにせ、ノルベルトにとって貴族も平民も傀儡になってしまえば同じ駒なのだから。

 (まぁ、どちらにしてもダリアは実の父親から信頼されていない。いや、もしかするとノルベルトは家族すらも自分の駒としか思っていないのかも)


「さぁ、私のために死になさい! 《ルビーボール》!!」


 愉しそうに嗤いながら火球を放つダリアに、少しだけ憐れに思いつつも、身勝手で理不尽な振る舞いに怒りで理性が吹き飛びそうになったフリージアは、小さく口を噤むと魔力を手枷に流し、手枷に刻まれていた封印魔法用の魔法文字を無理矢理無効化魔法用の魔法文字に書き換える。


「あなたのようなヘナチョコ魔法で、死ぬわけにはいかないのよ!」


 (私には会いたい人達がたくさんいるのだから!!)

 勢いよく放たれた火球は、フリージアの鼻先に届く寸前で、無効化魔法によって打ち消される。
 その瞬間、フリージアを縛っていた手枷がボロボロになって外れた。


「ふぅ、これで自由になったわね」


 あらゆる魔法を無効化出来る無効化魔法は、魔道具に刻まれた魔法を無効化し、無効化魔法を発動する際の対価として使うことが出来る。

 だが、無効化魔法の対価として使われた代償として、対価として使われた魔道具は呆気なく壊れてしまうのだ。

 無効化魔法を使ったことにより、手枷が外れ、自由になった手をフリージアが感慨深そうに見つめている。
 その様子に唖然としていたダリアだったが、急に意味深な笑みを浮かべると、どこから取り出した扇子を広げて口元を覆う。


「ふ~ん、あれが『無効化魔法』なのね」
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