木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第457話 『戦闘開始!』と思いきや……

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「《ルビーボール》!」
「《ルビーボール》!」
「《ルビーボール》!」
「《ルビーボール》!」


 赤い魔法陣を展開したダリアから放たれる火球の雨を最小限の動きで回避しつつ、フリージアはレイピアに透明な魔力を薄く纏わせながらダリアに向かって一直線で駆けていく。


「チッ、下民の癖に私の高貴な魔法を避けるなんて生意気よ!」
「それは、あなたが平民に避けられる程度の魔法を撃つからよ!」
「卑しい下民の癖に、宰相家令嬢に口答えしないで! 《ルビーボール》!」


 眼前に迫った火球を避けずにレイピアで打ち消したフリージアは、すぐさま透明な魔力を纏わせると彼女の寸前で足を止めてレイピアを構える。


「だから『宰相家令嬢』はそんな地位の人間じゃないって言っているでしょう!」
「ヒッ!」


 怯えるダリアに向かってフリージアは何の躊躇いもなくレイピアを振り上げる。

 (安心して、無力化魔法を纏わせているから殺さないわ。でも、今まで好き勝手した分の後悔はさせてあげる!)

 武器に無力化魔法が刻まれた魔力を纏わせると、どんなに切れ味が鋭い武器でもただの鈍器へと変わる。

 その特性を熟知していたフリージアが、顔面蒼白のダリアの脇腹にレイピアを当てようとしたその時、視界の端に緑色の刃が映った。


「ハアッ!」


 眼前に迫った風の刃をレイピアで打ち消したフリージアは、一旦ダリアから離れると険しい顔でコロッセオの観客席を見回す。

 (魔力の練りの甘さからして、明らかに魔法師のものではなかった。だとしたら……)


「いた」


 静かにレイピアを下ろしたフリージアの視線の先には、フリージアの公開処刑を見たさに駆けつけた男爵貴族が、フリージアに向かって両手を伸ばしていた。


「この下民が! 我らの女神であるダリア様を傷つけるとは何たることか!」
「…………」


 (まさか、横やりが入るとは思わなかったわ)

 鬼の形相で睨みつける男爵貴族に、小さく溜息をついたフリージアは思わず本音を漏らす。


「分かっていたけど……やっぱり、ここに私の味方はいないわね」
「当然よ、この下民が!」


 そう言って、先程まで追い詰められていたダリアが、得意げな笑みを浮かべながらフリージアを嘲笑う。


「ここにいるのはみ~んな、私の駒♪ だから、あんたが私を傷つけることなんて出来ないのよ♪」
「その通りだ! 俺たちは、ダリア様の忠実な配下! 故に、貴様のような下民にダリア様が傷つけることなど出来ない!」
「そうだそうだ!」


 ダリア様の言葉に同意するように、他の貴族達が一斉に声を上げる。
 その光景を見て、フリージアがレイピアを握る手に力を入れると、ダリアが退屈そうな顔を扇子に隠した。


「さて、私はかなり頑張っちゃったから、少しだけ休憩をしようかしら?」
「は?」


 (この状況で何を言っているの?)

 ダリアの自由奔放さに、フリージアは思わず眉を顰める。


「あなた、一体何を言っているの? 今は、私の公開処刑中……」
「あぁ、それは私自らがやらなくていいから」
「えっ?」


 (本当に何を言っているの?)

 ダリアの言っている意味が分からず、怪訝な顔をするフリージア。
 そんな彼女を見て、ニヤリと下卑た笑みを浮かべたダリアがパンパンと大きく手を叩く。
 すると、アリーナの出入口から上質なお着せを来たメイド達が、テーブルやティーセットを持って現れ、ダリアの前でティータイムの準備を始める。


「あなた、何やっているの?」
「『何』って、休憩のために準備させているのよ」
「はぁ? だから、休憩って今は……」
「だ~か~ら~!!」


 フリージアの言葉を遮ったダリアは、結界魔法が敷かれた簡易ティールームに入ると、用意された高級な椅子に座った。


「それは、私じゃなくても良いのよ」
「何を言って……」


 その時、観客席で見守っていた貴族達が一斉に立ち上がり、フリージアが向かって魔法陣を展開する。
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