木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第458話 奇貨を我が手に!

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「なっ!」


 ダリアの言葉に呼応するように、観客席にいた貴族達が一斉に立ち上がり、アリーナに向かって魔法陣を展開する様に、フリージアは唖然とする。

 (まさか、自分じゃなくてここにいる貴族達に私の始末をさせるなんて!)

 ダリアの『私じゃなくてもいい』の意味を理解し、苦い顔をしたフリージアは、メイド達が用意した椅子に座っているダリアを睨みつける。


「あなた、国民を何だと思っているの?」
「もちろん、私の駒よ。私の優雅な日々を過ごすためのこ・ま♪」
「っ!」


 (本当、父親に似て最低な女ね! 大方、父親の改竄魔法の影響なのでしょうけど!)

 ノルベルトの改竄魔法の影響で、傲慢だった性格に拍車がかかっているダリアを見て、フリージアは怒りのあまり肩を震わせる。
 それを見て、機嫌を良くしたダリアは駒達に命じる。


「ウフフッ、それじゃあみんな~♪ 後は、よ・ろ・し・く・ね♪」


 ダリアの一声で、透明だった結界が半透明になった瞬間、魔法陣を展開した貴族達がフリージアに向かって一斉に魔法を放つ。


「やるしか、無いのよね」


 頭上に地表にと顕現した色とりどりの魔法で、アリーナに土埃が立ち込める中、眉を顰めながら口元を覆っていたフリージアは、エドガス直伝の回避技で紙一重で躱したり、無効化魔法で打ち消したりして逃げ回っていた。

 (さすが貴族の魔法。魔法師が撃つ魔法に比べればたいしたことは無いわ)


「おい、逃げるな! この下民!」
「そうだ! さっさと俺たちの手柄になってくれ!」
「というか、あの平民どこだ!!!」
「この土煙のお陰でよく分からないわ!」
「クソッ! これもあの卑しい下民の策だっていうのか!」
「仕方ねぇ、こうなったらコロッセオを壊す勢いで更に魔法を撃ち込むぞ!」
「「「「お――――!!」」」」
「…………」


 (土煙が立ち込めているのは私のせいじゃなくてあなた達のせいよ! それに、コロッセオが壊れたら、あなた達だってただでは済まないのよ!)


「本当、ノルベルトは国民のことを駒程度にしか思っていないのね。それも捨て駒としか」


 (そして、愛娘もさえも)

 頭上から聞こえてくる貴族達の罵詈雑言と、半透明の結界に覆われたダリアを見て、内心憐れんだフリージアは、アリーナを駆け回って攻撃を避けながら結界魔法を無効化する機会を伺う。

 (数が多いとはいえ、所詮は貴族の魔法。魔法の鍛錬を疎かにしている魔法師に比べても、威力も弱いし、発動するのに時間がかかる。そして、保有している魔力量もたいしたことないからせいぜい一発や二発が関の山)


「とはいえ、ノルベルトが休憩に行ったきり戻ってきていないこの状況で、体力と魔力の消耗は最低限に済ませたいわね」


 (それに、ダリアに魔力の回復なんてさせたくないし)

 実はアリーナに行く途中、ノルベルトの『では、我は休憩に入る。その間、我が娘ダリアが用意した余興を楽しんでくれ』という言葉がフリージアの耳に届いた。

 そして、フリージアと入れ違うようにノルベルトがアリーナから姿を消したのだ。

 (お父様達がもうすぐ来るとは思えないし……ともかく、まずはダリアを結界から外に出さないと!)

 次々と放たれる魔法を躱しながら冷静に考え事をしていたその時、魔法の嵐が突然、ピタリと収まった。


「クソッ! 魔力が切れちまった!」
「俺も!」
「誰か! 魔力回復の高級ポーションは持っていないか! 金ならいくらでも払う!」
「…………」


 魔力が切れて慌てふためく貴族達と、結界越しに見ていたダリアが悔しそうに顔をゆがめているところを見て、フリージアは『チャンスが来た!』と笑みが零す。

 (思った以上に早くガス欠が起こったわね。まぁ、魔法を装飾品程度にしか思っていないからそんなことになるのだけど)


「それじゃあ、悪く思わないでよね!」


 普段から魔法を扱っていない貴族達の慌てふためく様子とそれを見て悔しがる様のダリアを見ながら、足を止めたフリージアは、魔力を足元に纏わせて弾けさせると空に向かって大きく飛びあがる。


「おい、下民が飛びあがったぞ!」
「今が仕留めるチャンスだっていうのに!」


 空にいるフリージアに、魔力切れで視野が狭くなっていた貴族が気づく。
 そんな彼らを眼下に見下ろした刹那、フリージアは懐から魔法文字が刻まれた小さなナイフを複数取り出すと、人が全くいないコロッセオの端に向かって円を描くように投擲する。

 (よし、後は……!)


 視界の端に、遥か遠くの方で一際豪華な馬車が騎士達を連れてこちらに向かっているのが見えた。

 (メスト様……)

 思わず下唇を噛んだフリージアは、邪念を振り払うように首を横に振ると、透明な魔力をクッション代わりにしてアリーナに着地をする。
 そして、レイピアを持っていない方のグローブを外し、そのまま砂煙が収まった地面に手を置く。

 (魔力消費が大きいから正直、使いたくない。けど、ここにはたいことのない魔法を使う人達ばかりだから上級魔法1回分の魔力で十分よね)

 結界の内側で驚いた表情でこちらを見ているダリアと目が合ったフリージアは、僅かに笑みを零すと詠唱と同時に魔力を地面に流す。


「《範囲干渉》」
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