木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第464話 親子の愛情なんて無い

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「えっ、なにこれ?」


 実の父に見放されたダリアをアリーナの外に逃がそうと、フリージアが彼女の細腕を掴んだ瞬間、ダリアの足元に黒い魔法陣が現れた。

 (これって、先程の黒い魔法陣ね!)

 コロッセオにいる全員を傀儡にした時に現れた魔法陣と同じ黒い魔法陣に、フリージア咄嗟にレイピアに魔力を纏わす。


「とりあえず、《直接干渉》で魔法陣を無効化……」


 その時、頭上からノルベルトの威風堂々とした声が降ってきた。


「神である我の僕となれ。《フォースドコントロール》」


 フリージアが魔法陣を無効化するよりも先に、ノルベルトが改竄魔法を詠唱した瞬間、ダリアの足元に現れた黒い魔法陣が光る。
 すると、陣の中にいたダリアが掴まれていたフリージアの手を振り払うと、絶叫しながら頭を抱えてその場に蹲る。


「あああああああああああああっ!」
「ダリア!」


 (急いで無効化させないと!)

 ダリアから手を振り払われ、少しだけ体勢を崩したフリージアは、すぐさま体勢を整えると透明な魔力を纏わせたレイピアを地面に突き刺す。
 その時、足元に現れた黒い魔法陣が消え、甲高い呻き声を上げていたダリアが、糸が切れたかのように地面に伏せた。


「ダリア!」


 レイピアに纏っていた魔力を慌てて消したフリージアは、レイピアを突き刺したまま倒れている彼女を抱き起こし、両手から伝わる生温かい感触と規則正しく呼吸している彼女の寝顔に安堵の溜息をつく。

 (一先ず、生きているみたいで良かったわ。けれど……)

 主の指示を待って動かない騎士達の間をぬい、意識を失っているダリアをアリーナ出入口近くに寝かせたフリージアは、地面に突き刺しているレイピアを持つとこちらをじっと観察しているノルベルトに鋭い視線を向ける。


「あなた、実の娘に対して何をしているのですか?」


 ダリアと対峙していた時以上の殺気を放ち、ゆっくりとレイピアを構えるフリージアの問いに、ノルベルトが不機嫌そうな顔をしながら答える。


「『何を』ってもちろん、ダリアをここにいる宮廷魔法師や騎士隊と同じようにしただけだが?」
「……つまり実の娘を廃人にしたということですね?」


 (自分以外の人間を平気で駒にするクズだけど、家族に対してはそんなことをしないだろうと思っていたけど……どうやら、正真正銘のクズだったみたいね)

 殺気が更に増すフリージアに対し、ノルベルトの不機嫌も更に増す。


「フン、我が意に従わない人間など、娘でも何でもない」


 (ましてや、ターゲットもろくに仕留められない奴など、我が栄光あるインベック公爵家の一員ではない!)

 ダリアの目に余る自由奔放ぶりに前々から頭を悩ませていたノルベルトは、娘が貴族令嬢として相応しくない行動をする度に、王宮の地下にある水晶から各地に配置された魔法陣を通して、娘の行動を全て『宰相家令嬢らしい行動』という誤った認識を国民全員の脳に記憶として改竄していた
 それは全て愛しい娘を守るためであり、来るべき世界征服を進めるためのカモフラージュのためでもあった。

 だが、毎日のようにダリアが貴族らしくない奔放なことをするので、ノルベルトも毎日のように改竄魔法を使っていた。

 そうすると、頻繁に改竄魔法を使った代償が大きくなり、愛しいと思っていた娘に対しての認識が、段々と鬱陶しいものへと変わっていった。

 そして今、娘がフリージアを仕留められなかったと分かった瞬間、ノルベルトは彼女を亡き者にしようと思い立って実行した。

 だが、それをフリージアに阻止されたことで、ノルベルトはダリアを騎士や宮廷魔法師と同じ自らの手駒にしようと瞬時に決断する。

 もちろん、そこに父としての愛情など微塵もなかった。


「さて、色々と手間取ってしまったが、手駒も増えたことだ。処刑の続きをしようじゃないか!」
「っ!」


 ノルベルトが心底嬉しそうに公開処刑の再会を宣言すると、今の今まで動かなかった騎士や宮廷魔法師、そして観客としていた貴族達が一斉にフリージアに向かって刃などを向ける。

 (言葉だけで大勢の駒を動かせるなんて……認めたくはないけど、闇魔法の使い手としての実力は一流ね)

 すると、ノルベルトの傍にいた宮廷魔法師が空に向かって杖を掲げ、上空に薄い膜のような結界をノルベルト個人に張った。

 (なるほど。貴族達に戦わせ、自分は駒に張ってもらった結界の中で高みの見物ってわけ。どこまでクズなのよ)


「絶対にその結界を破るから!」


 (お父様達がここに来る時までに!)

 全方位から敵意を向けられる中、殺気を放つフリージアは再びレイピアに透明な魔力を纏わせて構える。

 その少し離れた場所で、赤色の魔法陣がこちらに向けられていることも知らずに。
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