木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第469話 絶体絶命

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 ※胸糞展開な上に暴力描写が入ります。ご注意ください。



「うっ!!!」


 レイピアで折るよりも先に飛んできた矢が脇腹に刺さり、苦悶の表情を浮かべたフリージアはその場に倒れ込む。

 (ううっ……マズイわね、思っていた以上に気力を失っていたみたい)

 使用者の気力に応じて効力が発揮される血術だが、気力が落ちると効力が落ちてしまう。

 フリージアがいつも身につけている木こりの服は、全て血術で『物理耐性』を付与しており、悪徳騎士や魔物と対峙している時のフリージアならば、飛んできた矢が刺さるということはありえない。

 しかし、アリーナに来てからほとんど休むことなく戦い続けたことに加え、ポーションを二度も使用する程の怪我を負ったことで気力が減っていたため、本来の物理耐性の威力が発揮されず、結果的にフリージアの体に矢を貫通してしまったのだ。


「ギャハハハハハッ! やった! やったぞ! ついにこの手で帝国の悪魔をやれるぞ!」


 (これで、ようやく、ようやく300年前の復讐が果たせる!)

 改竄魔法の使いすぎによる副作用で、300年前の出来事が全てサザランス公爵家のせいだと曲解しているノルベルト。

 そんな彼は、地面に伏しているフリージアを見て、手を上げて駒達の動きを止めるとコロッセオに歓喜の嗤いを響かせた。

 耳をつんざくようなノルベルトの嗤い声に、思わず眉を顰めたフリージアはポーションを取り出そうと脇腹の痛みを抑えながら腰に携えているマジックバックに手を伸ばす。

 しかし、脇腹からくる激しい痛みで思うように体が動かず、フリージアの表情が険しくなる。


 (マズイ、意識が遠のいていく)


「早く、立ち上がらないと」


 (自分の役目を果たして、生きてみんなに会わないと……家族のみんなや、カトレアとラピスさんとも約束したじゃない)


「早くポーションで……あっ」


 ようやくマジックバックからポーションを取り出したフリージアだったが、不意に握力が無くなり、持っていたポーションが地面に転がってしまう。

 すると、駒達の魔法を使って特等席からアリーナに降りてきたノルベルトが、フリージアの手から落ちていたポーションを拾う。


「ふむ、こんな汚い液体で体力が回復出来るとは、高貴な我には到底考えつかないな」
「か、返して……」


 ノルベルトが拾ったポーションを返してもらおうと、フリージアがか細い声でポーションに手を伸ばす。
 それを見たノルベルトは、ニヤリと下卑た笑みを浮かべるとフリージアに顔を近づける。


「ほう、これを返して欲しいのか?」
「か、返せ……」


 苦悶の表情で手を伸ばすフリージアに、ニヤニヤと笑みを浮かべたままノルベルトは、持っていたポーションをすぐ傍にいた騎士に投げつけ、傷ついた騎士の怪我を回復させた。


「なっ!」
「ギャハハハハハッ! 誰が返すかよ、バ――カ!!」


 (ギャハハハハハッ!! なんて、なんて最高な気分なんだ!! 300年前に我が家を陥れた悪魔に復讐するこの瞬間は!!)

 ポーションが無くなり顔を青ざめさせたフリージアを見て、加虐心がそそられたノルベルトは、矢が刺さっているフリージアの脇腹を思い切り踏みつける。


「ああああああああああああ――――――!!」


 (痛い!!痛い!!痛い!!痛い!!)

 ノルベルトに脇腹を踏みつけられ、声を上げたフリージアの淡い緑色の瞳にはポロポロと涙が零れ落ちる。
 その声と涙に優越感を覚えたノルベルトは、『もっと聞かせろ!!』と言わんばかりに脇腹を執拗に踏みつける。


「ギャハハハハハッ! ほらほら、生きたかったら俺に命乞いしろよ! と言っても、助けてやらねぇし、すぐに殺すが! ギャハハハハハッ!!」


 (あぁ、愉しい!! 愉快だ!! 最高だ!! 今まで散々苦しめられたお前達に報いを受けさせられることが出来ることが!! なんと素晴らしいことか!! ギャハハハハハッ!!)

 すると、ノルベルトに脇腹を蹴られていたフリージアがフッと笑みを零す。


「どうした、何が可笑しい!」


 不快そうに顔を歪めたノルベルトは、今度は脇腹を踏みにじる。
 すると、顔を歪めたフリージアがノルベルトの顔を見てニヤリと笑う。


「だ、誰が」
「は?」


 眉を上げたノルベルトに、フリージアが挑発的な笑みを浮かべながら煽る。


「誰が、あんたなんかに命乞いなんてするものですか!」


 (死んでもしないわよ! 我が家名に誓って!!)


「なんだと、このクソアマ――!!」


 反抗するフリージアに声を荒げたノルベルトは、駒の宮廷魔法師に強化魔法をかけてもらうと、フリージアの体のありとあらゆる場所を蹴りたくる。


「うぐっ!」
「お前! 自分の立場を分かって言っているか!」
「うっ!!」
「今のこの国で偉いのは俺だ!」
「ぐはっ!」
「その俺を侮辱するなんて、本当に命が惜しくないようだな!!」
「ガハッ!!」


 静寂に包まれたコロッセオに響き渡るノルベルトの罵声の最後に強烈な蹴りを入れられ、周囲にいた騎士ごと反対側の壁に叩きつけられたフリージア。
 そんな2人の声が、この場に駆けつけようとしている誰かの耳に届いているとも知らずに。
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