木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第474話 作戦成功と新たな脅威

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 ――時は、メスト達がリアンに対峙する少し前まで遡る。

 王都から建国祭の式典開始の合図を告げる祝砲が鳴ってしばらく、レクシャのいる拠点に待ちに待った知らせが届いた。


「旦那様。先程、東西南北にある拠点から全ての魔法陣から黒い魔力が無効化され、マーザス様から頂戴しました応急処置用の魔道具により崩壊寸前だった魔法陣が修復されました」
「そうか」


 (ようやく、ようやく、ノルベルトの魔の手から魔法陣を奪還することが出来た)

 忠臣であるインホルトから報告を受けたレクシャは、連絡役の騎士達が安堵する中、目を閉じて深く溜息をつくと背もたれに背中を預ける。

 (これで、ノルベルトの改竄魔法がこれ以上国民に影響を及ぼすようなことは無いだろう)


「旦那様。一先ず、作戦の半分が成功しましたね」
「あぁ、そうだな」


 全てを奪われたあの日から、レクシャと共に今日という日に備えて水面下で準備をしてきたインホルト。

 そんな彼の安堵した声を聞いて、再び深く息を吐いたレクシャは気を引き締めるとインホルトとその場にいた騎士に指示を出す。


「では各拠点には魔法陣奪還作戦が成功したことと、現地にいる協力者達に合図があるまで交代で魔法陣の警備の指示を」
「「「「「ハッ!!!!」」」」


 レクシャの指示に従い、連絡役の騎士達が一斉に現地にいる協力者達にレクシャの指示を伝える。
 すると、魔道具越しから協力者達の歓声が聞こえてきた。

 (皆、ここまで本当によく頑張ってくれた)

 国に反旗を翻していると知りつつも、国のためにとレクシャに手を貸してくれた協力者達の歓声が、通信魔法の付与された魔道具越しから聞こえてきて、思わず笑みを零したレクシャは、気を引き締めると傍にいたインホルトに指示を出す。


「そしてインホルト、お前はここで私の代理として全体の指揮を頼む」
「かしこまりました」


 深く頷いたインホルトを見て、レクシャが椅子から立ち上がった時、連絡役の騎士の1人が慌てた様子でレクシャに声をかけた。


「レクシャ様! 王族護衛を監視していた部隊から至急の伝令が!」
「なに?」


 (もしかして、もう動いたのか?)

 険しい顔をするレクシャに、騎士はメモ書きを読み上げる。


「旧都に繋がる街道の道中にリアン・インベックが姿を現したとの報告が!」
「っ!」


 (やはり、目的は王族の暗殺だったか!)

 作戦立案中、レクシャはノルベルトがコロッセオにいる観衆の前で国王を殺し、自分が新たな王と宣言すると同時に改竄魔法でこの国の民を全員廃人にし、帝国に攻め入ると考え、そのためにリアンを派遣して、彼が操る魔物を使って攫うと考えていた。

 しかし、フリージアが公開処刑されると聞いて、ノルベルトは国王ごと暗殺し、フリージアを公開処刑した後、改竄魔法で国民全員を廃人にし、帝国に攻め入るのではないかと思い立った。

 そして、それは図らずも当たってしまったのだ。

 こみ上げてくる怒りを抑えながら、レクシャは騎士に問い質す。


「王族は今どこにいる?」
「王都を出て、今街道に入りました!」
「では、王族とノルベルトの倅が対敵する時間は?」
「あちらが動かなければ、恐らく30分後には対敵するかと」
「っ!」


 騎士の推測を聞いて、眉間の皺を寄せて苦い顔をしたレクシャがインホルトと騎士に指示を出す。


「インホルト、大至急ロスペルに今聞いたことと、妻やカトレア嬢、ラピス君を拾ってこちらに来るように伝えてくれ」
「かしこまりました」
「王族監視部隊は引き続き監視を。そして、旧都にいる監視部隊に街道に現れたリアンの監視に人を回して欲しい」
「ハッ! 只今!」


 レクシャの指示でインホルトと騎士が動いたのを見届けたレクシャは、視線をペトロート王国が乗った作戦用の地図に落とす。

 (大方、倅の召喚魔法で召喚した魔物を使って、護衛役の騎士ごと馬車にいる王族全員を殺すつもりなのだろう)


「全く、どこまで堕ちれば気が済むんだ!」


 声を荒げながらきつく拳を握ったレクシャが机に拳を叩きつけ、辺りがシンと静まり返った時、ロスペルに報告を終えたインホルトがそっとレクシャの肩に手を置く。


「旦那様。悔しい気持ちは痛いほど分かりますが、今は感情的にならず、陛下を助けることを最優先にした方が良いかと。あなた様がそのようでは全体の士気にも関わりますし……何より、囮役のフリージアお嬢様がいつまで2人の気を引いているか分かりませんので」
「そう、だな……すまない、インホルト」
「いえ、『優秀な執事ならば常に冷静に物事に対処せよ。そして、時として主人を諫めよ』という養父の言葉に従っただけです」
「そう、か。確かに、エドガスなら言いそうなことだな」



 (そうだ。私が熱くなってしまっては、ここまで頑張った皆の士気に関わる。それに、こうしている間にもフリージアはコロッセオでたった1人、囮役としてノルベルトとダリア嬢の機を引いている。ならば、急いで陛下を救出しなければ)


「皆、すまない。取り乱してしまった」


 インホルトの言葉で、今は亡きエドガスのことと、遠い場所で1人孤独に頑張っている娘のことを思い出し、冷静になったレクシャが謝罪をするとインホルトに視線を向ける。


「では、ロスペル達が来次第、私たちは王族のもとに駆けつけ……」
「それなら」
「っ!!」


 部屋の入り口から聞こえてきた声に、レクシャ達は思わず息を呑んだ。
 その視線の先には、鎧を纏った2人の男を連れ立った金髪碧眼の麗しい表情をした男がいた。


「僕も行って構わないよね?」
「ジルベール殿下!」
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