木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第480話 一瞬で終わらせます

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「カトレア嬢、行きますよ」
「はい、師匠!」
「《フライ》!」


 レクシャの合図を聞き、ロスペルはカトレアと共に飛行魔法で宙に上がる。


「うわっ、物凄い数の魔物ですね!」
「えぇ、さながらスタンピードのような夥しい光景ですね」
「た、確かに……」


 眼下に広がる草原地帯を覆い尽くさんばかりの多種多様な大勢の魔物達に、思わず驚きを上げるカトレアと冷静に感想を口にするロスペル。

 すると、周囲を見回したロスペルはニヤリと笑みを零す。


「とはいえ、飛行型の魔物を召喚する余裕は無かったみたいですが」
「あっ」


 ロスペルに言われ、ハッとしたカトレアは周囲を見回す。
 そこにはどこまでも広がる青空しかなく、禍々しい姿をした魔物は一匹たりとも見当たらなかった。

 (言われてみれば、確かに魔物を姿がどこにもないわ)


「まぁ、これもノルベルトの改竄魔法の影響なのでしょうが」


 (はたまた、術者本人の魔法に対する知識の足りなさか……この際、どちらでもいいか)

 得意げな顔で駒の騎士達を使ってメスト達を襲っているリアンを見て、小さく溜息をついたロスペルは銀色の杖を持ち直す。


「カトレア嬢。あなたは、馬車から見て右側から襲ってくる魔物の討伐を。私は、左側の魔物を」
「は、はい!」


 (一先ず、兄さん達が騎士達全員無力化する前に終わらせないと)

 カトレアと背中合わせになった、リュシアン達に襲い掛かろうとする魔物に杖を向ける。


「さっさと魔物討伐を終わらせます。僕たちには、騎士達を捕縛する仕事が控えているのですから」
「分かりました、師匠!」


 (父上から言われていないけど、無力化した騎士達の捕縛は魔法師に任させると思うから)

 小さく息を吐いたロスペルは、メスト達に意識が向かっている魔物に魔法を放つ。


「《ウインドトルネード》!」
「《ウインドブラスト》!」
「「「「「うがががっ!」」」」」


 カトレアとロスペルが放った風属性の上級魔法は、多種多様な魔物の体をあっという間に空へと巻き上げる。

 そして宙に上がった魔物達に2人の魔法師はすかさず魔法を放つ。


「《ウインドカッター》!」
「《サンダーアロー》!」
「「「「「うがががっ!!!!」」」」」


 ロスペルが放った無数の風の刃と、カトレアが放った無数の雷の矢は、多種多様な魔物達達は魔石に変わって地上に落ちていった。


「ふぅ、とりあえずこんなところでしょうか?」
「はい。辺りにも魔物の気配がありませんし」


 念のため辺り一帯を見回していると、下からリアンの情けない声が聞こえてきた。


「なっ! あれだけいた魔物を一瞬で!?」


 それを聞いたカトレアはニヤリと笑うとリアンに声をかける。


「フフン、あんたの未熟な召喚魔法で召喚された魔物なんて、一瞬で魔石に変えられますわよ!」
「ぐっ、貴様――!!」
「あらあらそんなに怒っちゃって……けれど、私に気を取られていてもいいのですか? あなたが操っている騎士達が次々と倒れていますよ」
「っ!」


 カトレアに指摘されたリアンは、顔を真っ赤にしながら意識を騎士達に向ける。

 (全く、これほど未熟な術者だと召喚された魔物達に思わず同情してしまう)

 幼い頃に何度か隣国で魔法を学んでいたロスペルは、凄腕魔術師の召喚魔法がいかに強力なものか身をもって知っていた。

 だから、脂汗を掻きながら必死の形相で傀儡の騎士達に命令しているリアンを見て、呆れたような溜息をついたロスペルはカトレアに声をかける。


「カトレア嬢。リアンへの煽りはそこまでにして、地上に降りて魔力を練り直しますよ。ここでの僕たちの仕事も終わりましたし」


 (地上に降りると同時に父上から騎士達の捕縛を指示されると思うから)


「はい、師匠!」


 満面の笑みで返事をしたカトレアと共にリアンは地上に降りた。

 その時、傀儡にされていた騎士達が全員、リュシアン達の手によって無力化された。
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