木こりと騎士〜不条理に全てを奪われた元宰相家令嬢は、大切なものを守るために剣をとる〜

温故知新

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第8章 波乱と因縁の建国祭

第482話 どこの誰だか存じ上げませんが

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「リュシアン兄さん」
「おぉ! ロスペル! そっちは終わったか!」


 実行犯であるリアンを殴り飛ばて気絶させたリュシアンが深く溜息をつくと、魔物討伐を終えたロスペルがカトレアと共に降りてきた。


「はい。術者の力が弱かったお陰か、数は多かったもののたいしたことはありませんでしたので、一匹残らず魔石にしました」
「そうか。こっちも、奴の術が弱かったお陰であっさりと無力化出来たぞ」
「そうでしたか」


 学生時代、王太子の側近であり幼馴染であるリュシアンを一方的にライバル視していたリアンは、とにかく努力することが苦手で勉強や鍛錬を疎かにしていた。

 それを知っていたリュシアンとロスペルは、今回の戦いは少数精鋭でも勝てると確信していた。

 そしてそれは、2人の父親であるレクシャも同じだった。


「お話し中のところ、すみません」
「「ん?」」


 2人で仲良く話していたところに、いつになく真剣な表情をしたメストとシトリンが声をかけてきた。


、私たちの仲間を無力化し、召喚された魔物を討伐してくれただけでなく、首謀者を捕らえていただきありがとうございます」
「「…………」」


 (そう言えば、にはサザランス公爵家に関する記憶が無かったんだったな)

 深々と頭を下げるメストとシトリンを見て、ロスペルは黙ったまま静かに目を逸らし、実は2人の友人であるリュシアンが少しだけ胸を痛める。
 すると、顔を上げたメストがリュシアンに目を向ける。


「ここからは我々が行いますので、お2人はお連れの方と一緒に戻っていただいて……」
「メスト」


 メストがレクシャ達と合流するよう促した時、フェビルがメストの名前を呼んで会話を遮った。


「何でしょう、団長」
「騎士の捕縛に関しては、そちらの魔法師とカトレア嬢に任せろ」
「団長。カトレア嬢は『稀代の天才魔法師』ですからまだ分かりますが、そちらの民間に任せるのはさすがに……」


 メストの隣で話を聞いていたシトリンがフェビルに意見をして反対する。
 だが、それを聞いたフェビルはニヤリと笑って2人の肩を叩いた。


「大丈夫だ。むしろ、この2人のやらせた方が効率は遥かに良い」


 (特に、そこにいる本物の天才魔法師様に任せれば)


「……分かりました。団長がおっしゃるならお任せしましょう」


 ニヤニヤと笑うフェビルに根負けしたのか、小さく溜息をついたシトリンはメストとアイコンタクトをとると大人しくフェビルの後ろに下がった。
 それを見たフェビルは、笑みを深めるとロスペルに向き直る。


「というわけで、お願い出来ますかな? 一応、あなた方お2人のお父上様からそういう風に言伝を預かったものですから」
「分かりました。カトレア嬢」
「はい、師匠!」


 (父上ならそう言うと思っていたから)

 少し離れた場所で人の良さそうな笑みを浮かべているレクシャを一瞥し、小さく溜息をついたロスペルは、すぐ横で目を輝かせながら待っているカトレアに視線を移す。


「カトレア嬢。随分前に差し上げた捕縛用の魔道具はまだ持っていますね?」
「もちろんです、師匠!」


 そう言って、カトレアはローブの中にあるマジックバックから、ロスペルから随分前に貰った捕縛魔法が付与された魔道具を取り出す。


「でしたら、僕が解呪魔法で騎士達にかけられた改竄魔法を解きますので、大人しくなったタイミングで魔道具を使って全員を捕縛してください」
「分かりました!」
「解呪魔法? 改竄魔法?」


 (一体、2人は何の話をしているんだ?)

 ノルベルトの改竄魔法のお陰で、今のメストとシトリンにはノルベルトが知られては困る改竄魔法や解呪魔法に関する知識が無かった。

 もちろん、無効化魔法に関する知識も。

 聞き覚えのない魔法にメストとシトリンが首を傾げているのをよそに、小さく息を吐いたロスペルは一瞬で魔力を練ると、倒れている騎士達に向かって魔法をかける。


「《ディスペル》」


 その瞬間、倒れていた騎士達とリアンが一斉に絶叫にも似た呻き声を上げた。
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