結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

文字の大きさ
5 / 187

会いに来ない王子5

しおりを挟む
夜、大雨が降っている。

料理する道具も全くないけど…
「…食材1つ残さず持って行くことないじゃない!」

明日からどうしようかな。
今はお金があるけど、数日で底をついちゃうよね……

「窃盗団の仲間にでもいれてもらおうかしら…」
それは冗談だけど…

大至急職探しをしなければ餓死してしまうわ。



次の日も雨…

これじゃ外に出ていけない。傘もレインコートも無い…このまま雨が降り続く…なんて事ないよね…

誰かが助けてくれるなんて思っちゃ駄目よ。既に3人に裏切られているんだもの。

食べるもの…水もないから、1度外に出ないといけない。
王子の婚約者…って、その肩書きは何の役にたつの?私の顔を知ってる人にしか通じないよね。貴族とかいうのも。

そうだ!!
このまま私がいなくなったって事にすればいいかも。放っておいたのは向こうなんだし。いなくても当分ばれない気がするのよね。
家がこれだけ荒らされてるんだから、誘拐されたって勘違いしたりして。
そうなれば、お父様達に迷惑をかける事もないよね。逆に、『この国の王子は他国の女だからそんな扱いをしたのか!』って、信用も名誉もがた落ちよ。


一矢報いるなら今しかない!


別居したいと思っていたけど、別居どころか王子と結婚しなくていいかもしれないよね!

そうなれば諦めていた『好きな人と結婚』が出来るかもしれない。好きな人が出来たらお付き合いして…結婚して、子供だって好きな人とならほしいし、家族で暮らせたら最高だわ!!


ピンチはチャンスと聞いた事があるわ。それが今よ!

……でも、今、この状態をなんとかしなくては。

ここで躓いたら餓死する…

とりあえず、お水とタオル、それだけ買いにいこう。

もう少しすれば雨はやむかも…って思うけど、さすがに水1滴すら飲んでないのはきつい。

少しでも雨を遮る事が出来そうな物…私の読みかけの本。それしかない。

雑貨屋があったし、そこならきっと売ってるよね…?
どこにどういう物が売ってるのかなんて、今まで考えた事がなかった。タオルなんて、用意されてて当たり前だったし…
貴族の知識なんて、一歩外にでれば何の役にも立たないわね。

そんな事を考えながら、雑貨屋に小走りで向かった。



「いらっしゃい…って、あなたどうしたの!ずぶ濡れじゃない!」
濡れた私がお店に入っても、嫌な顔ひとつせずに迎えてくれた。
「タオルを3枚、頂けないかしら。それからレインコートがあればそれも。」
「そんな事より、先に体をふきなさい。風邪引くわよ!」
タオルを持ってきて、急いで私をふいてくれた。
「あなた、この辺では見た事ないけど、うちは近いの?」
「ええ。最近引っ越してきたんです。すぐそこなので問題ありません。」

あの別邸に住んでるなんて、絶対気付かれないようにしなきゃ!


とりあえず、水もパンもタオルも買えたし、他は雨が上がってからね。必要最低限の物以外は買わないようにしないと!

「寒い…」
早く体を暖めないと…でもどうやって…?お湯だって私1人じゃどうにも出来ない。今の状態から早く抜け出さないと、生きていけないわ…
本格的に仕事探さなきゃ!

「…ん?」
雨で視界が悪くて気がつかなかったけど、 10メートルくらい先に男の子がいる。まだ5才くらいだと思うんだけど、このどしゃ降りの中、レインコートも着ていない。まわりを見ても親らしい人は見当たらないし、迷子?

「ねえ?君は1人なの?」
「………」
「迷子になったのかな?」
「………」

どうしよう…喋らないよ…

「お父さんやお母さんと一緒に来たのかな?」
「………」

全く反応ないんだけど!
どうしようかな……
ここに置いておくわけにもいかないよね。この辺の子かな?身なりは綺麗だから、お金持ちの子っぽいのよね。けど商人の子って感じではないし。

「君、お名前は?」
「………」

これは1人で解決は無理だわ…
ここからなら質屋が1番近いし、お兄さんに聞いてみよう。

「はい、手を繋ごうね」

私が手をだすと、最初は迷っていたけどキュっと繋いでくれた。

一歩前進!

「ほら、これで顔を拭いて。」

男の子は私の顔を見て、それからタオルを見て、また私の顔を見た。これは可愛い…

「いいよ、あげる」

私が笑って言うと男の子はコクンと頷いた。

「すみませーん。」
「いらっしゃい、あぁ君は3日ほど前に来たお嬢さん。」
「ごめんなさい。今日は売りに来た訳じゃないの。この子がどこの子なのか知りませんか?」
男の子はお兄さんを見ると、すぐに私の後ろに隠れてしまった。
「どうしたの?」
私とはギュッと手を繋いで離さない。大人の男の人が苦手なのかも。小さい時、私もそうだったしね。
「多分この辺りの子ではないよ。服や靴も高級な物だし、どこかの貴族の坊っちゃんじゃないかなぁ?」

やっぱり…

「この辺りの領主は…誰かわかりますか?」
「ラドクリフ様だね。」

ラドクリフ……
聞いたところで、この国の娘じゃない私にはさっぱりわからないんだけどね。

「けど、お屋敷はここからかなり遠いし、この辺りにラドクリフ様所有の邸はないよ…」
う~ん…
「…君はラドクリフ様のお家の子?」
「…………」
顔を覗いて聞いてみたら、コクンと頷いた。
貴族のご子息が何故1人でこの街にいるの?謎だわ。
ラドクリフ君の服はびちゃびちゃだし、このままじゃ風邪をひいてしまうよね。
「お兄さん、そこにあるは服いくらするの?」

全財産167ニードルの私にはかなりきついけど、買うしかないよね。

「お金はいいよ。この前の服のお礼だ。」
「お礼?」
「隣街に持っていったら、かなりの金額で売れたからね。」
「ありがとうございます。」 
あの洋服、売っておいてよかった!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

なか
恋愛
「君の妹を正妻にしたい。ナターリアは側室になり、僕を支えてくれ」  信じられない要求を口にした夫のヴィクターは、私の妹を抱きしめる。  私の両親も同様に、妹のために受け入れろと口を揃えた。 「お願いお姉様、私だってヴィクター様を愛したいの」 「ナターリア。姉として受け入れてあげなさい」 「そうよ、貴方はお姉ちゃんなのよ」  妹と両親が、好き勝手に私を責める。  昔からこうだった……妹を庇護する両親により、私の人生は全て妹のために捧げていた。  まるで、妹の召使のような半生だった。  ようやくヴィクターと結婚して、解放されたと思っていたのに。  彼を愛して、支え続けてきたのに…… 「ナターリア。これからは妹と一緒に幸せになろう」  夫である貴方が私を裏切っておきながら、そんな言葉を吐くのなら。  もう、いいです。 「それなら、私が出て行きます」  …… 「「「……え?」」」  予想をしていなかったのか、皆が固まっている。  でも、もう私の考えは変わらない。  撤回はしない、決意は固めた。  私はここから逃げ出して、自由を得てみせる。  だから皆さん、もう関わらないでくださいね。    ◇◇◇◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

処理中です...