結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん

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本編後ストーリー

裏側の街

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 次の日

 日雇いの仕事…見つからないわ。みんなどうやって雇ってもらってるのかしら。

「ねぇ、君!」

 このままでは本当に餓死するわ。

「そこの君!」

 ん…?私の事?

「君は……ニナだよね?」

 これは答えた方がいいの?それとも別人になりすました方がいいのかしら。

「エドワード陛下と舞踏会に来ていただろう?」

 あの時の舞踏会に来てた人って事は貴族よね。少なくても、結構な地位にいる人のはず。街の事を聞けるかもしれないわ。

「ええ。貴方が仰るように私はニナです」
「そう…よかった。俺の名はパリス・ヤングです」

『よかった』ってどういう事…?

「この街の事で陛下に話がしたいんだけど、なかなか謁見する事は難しくて。君なら何とかなるんじゃないかと……」

「話とは…?ある程度お伺いしなければ『とうぞ』とはいきませんので」

「わかった。では、あの店で話そう」

 案内されたのはとても上品なお店よ、会員制の…。街娘の姿の私への視線はつめたいわ。この店へ出入りする事が1つのステータスみたいなものだもの、当然なのだろうけど。


「エドワード陛下に会いたい、その理由はなんですか?」

「この街の開発の事で、少しね」

「とても賑わっていて、問題があるようには思えませんが……」

 今は何も知らないふりをして聞き出そう。

「実は街の格差が酷くなってきてね。このままでは大変な事になりかねないんだ」


 もしかしてこの人、街の裏側の事を言ってるのかしら。『このままでは』…という事は、今ならまだ何とか出来るって事よね。

「どうしてそんな事に?」

「恥ずかしい事に、私の父のせいです」

「お父様の?」

「ええ。土地を買って観光客をよぶ為の開発をすすめてるのですが、それだけでは無いようなんです」

「どういう事ですか?」

「言い方は悪いですが、地上げするような輩と手を組んで土地を買ってるんです」

 これね。あの子が言っていた事が繋がったわ。
『この街を仕切ってる|男がぐるになって追いやったんだ!っめ』

「貴方が何か策を講じてみるべきでは?」

「それが…」

「…おお!君は!エドワード陛下といた女性じゃないか。パリス、この女性と何を?」

 私達が話してる所に、大きな声で割り込んで来た人がいる。

「……っ」

 パリス…顔が真っ青だわ。
 おそらく、この人が噂のお父様ね。
 意思の強そうな、けれど冷たい目をした男。

 …パリスは駄目ね。この人、父親の圧に負けすぎているわ。

「初めまして…では無いようですが、私は貴方の事を記憶しておりませんので、自己紹介いたしましょう。私はニナ・スミスと申します」

「…ヤングだ」

 フルネームで言うつもりはないのね。

「ヤング様、この街はとても良い所ですね」

 私と話したくはないけど、エドワードと繋がりがあるから無下にも出来ないってところかしら。

 今あの少年の事を言うのは得策ではないわね。

「お話も終わりましたので、私は失礼致します」

「君は先行してここに来たのかい?」

「先行?」

「知らないふりをする事はない。陛下の今回の視察の最後がここなのだから」

「……」

 嘘でしょ。ここまで来て、最後の最後に会ってしまったら、脱走が本人に知られてしまうわ。しれっと『城にいましたよ』と、どうどうと迎えようと思ったのに!


 ここはアルデーテ屈指の観光地だもの、来る可能性があって当たり前なのよ。


 帰らないと…
 ううん、駄目よ。
 街の裏側の観察、教会、警察の悪行、エドワードなんかに任せておけないわ。
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