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11 別話. 子育て
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由貴くんと悠介さんの間に、"ゆうくん"という小さな息子がいる話。
ーーーーーーーーーー
おれはパパとママが大好きだ。
どっちの方が好き?ってパパによく聞かれるけど、どっちも好きって答えたら、パパは難しそうな顔をする。
「お願い、ゆうくん!パパの方が好きって言って!」
おれはにっこり笑顔で、「ママの方が好き」って言ってみたんだ。そうしたらパパ、おいおい泣き出しちゃった。
それがおもしろくて笑っていたら、ママに怒られてしまった。ごめんなさい。
・
・
・
朝 起きると、パパは真っ先にちゅーしようとしてくる。
そのたびに「こらっ、うがいもしてないのにばっちぃ!」ってママに叱られている。ママが言うには、パパの口の中にはバイ菌がウヨウヨいるんだって。こわっ。
だから、「バイ菌マン」ってパパのことを呼んだら、化石みたいに固まってしまった。
すぐさまママが、「パパ大好きって言ってあげて」とコソコソ。パパはプテラノドンみたいに、会社へ飛び立っていきましたとさ。元気いっぱいだね。
・
・
・
「ママ、あれ飲みたい」
確か、粉ミルクのCMだったと思う。すごく美味しそうに見えたんだ。
でもママは、「あれは赤ちゃんの飲み物だよ。ゆうくんはもうおっきいでしょ?牛乳を飲もうね」って。いいや、牛乳よりもこっちの方が美味しそうだ。
「ママのおっぱいは?粉ミルクみたいな味がするの?」
おれはママに飛びついて、服の中に潜り込んだ。
「ちょっ、ちょっとゆうくん!やめなさい!ママはもう出ないの!」
「なんで!吸ったら出るよ、きっと!」
騒いでいたら、パパも駆け付けたみたい。「パパもママのおっぱい吸う!」とか言ってたような気がする。
でもね。すぐに鈍い音がして、おれがママの服から顔を出したら、パパは伸びていた。あんぱんの死体が転がってるみたいだ。
・
・
・
パパはそんな感じで、ママによくやられている。くっついたりしては、「子供の前!」「グハァッ」なんてのはしょっちゅう。ママは強い。でも、パパはもっと強い。
だって、肘でお腹をガンッてされても、めげずに何度も引っ付こうとするんだもん。なんで?
「ママは照れ屋なんだよ。本当は喜んでいるんだ」
そう答えるパパの後ろには、いつの間にかママが立っていた。
「ゆうくん、今夜はママと二人で寝ようね」「マ゛マ゛ァァァ!!」
でも、たまーに、本当にたまーにだけど、パパとママは二人だけで寝ちゃう時がある。
フッと目を覚ましたら、真っ暗。キョロキョロすると、いつものベッドの上なんだけど、だぁれもいない。
トコトコ探しに行ったら、もう一つのベッドがある部屋から声が聞こえてきた。パパとママの声だ。
暗いから転ばないように、そーっと戸の前まで近づいて行くと、不思議な会話をしていた。
「あぁん…悠介さん…もっ、もうやめてっ…ゆうくんが起きちゃう」
「つれないことを言わないで、由貴くん…もうずっとしてなくて、気が狂いそうだったんだ。お風呂だってゆうくんと二人で入っちゃうし…僕も混ぜてよ」
「わっ、わかった、わかったから!悠介さんとも入ってあげるから、ゆうくんを巻き込まないでっ…!」
おれはそーっと、物音を立てないようにベッドへ戻っていった。なにやらただならぬ雰囲気で、恐ろしいことを聞いてしまったような気分だ。
そうそう。恐ろしいといえば、前にこんなことがあった。
パパのお仕事は、結婚式でお嫁さんが着る服を作ること。ママが出かけている間に、おれにもそれを着せてくれた。白くて長い、肩の出たお洋服。チビ助のおれにもぴったりだ。…あんまり、かっこよくはない。
「パパ、これ…似合ってる?」
「すっっっごく似合ってる!将来はパパと結婚しようね」
「パパはママと結婚してるでしょ」
「ゆうくんともしたいの」
そんなことを話していたら、ママが帰ってきた。
ママは綺麗な声をしている。パパいわく、前世は白雪姫だったんだよって。でも、「パパ…何してくれてんの」って言う声は雪でも降らせそうで、すごく怖かった。
おどおどするパパを放って、無言でテキパキとおれのお着替えを済ませる。それからママは、パパに言い放った。
「離婚」
おれはママに手を引かれ、外を歩いていた。後ろを付いて来る、パパみたいな人をチラチラと覗き見る。カオがナシのあれみたいだ。
「ゆうくん、見ちゃいけません。あの世に連れて行かれますよ。ほっときなさい」
ママはそう言うけど、あの世って…死んだ人が行くところ?パパは…死んじゃったの?
確かに後ろのおじさんは、パパだけどパパじゃないみたいだった。ママがこんなに冷たいのも、きっと本当のパパじゃないからだ。
おれは段々悲しくなって、声を上げて泣いた。ママはすぐにおれのことを抱っこしてくれたけど、「パパっ、パパがいいよう~!」って叫んだら、「…ぱーぱ、ゆうくんがそう言ってますよ」とママが言った。
そうしたらパパが駆け付けてくれて、またお家に三人で帰れたんだ。本当によかったぁ。
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おれはパパとママが大好きだ。
どっちの方が好き?ってパパによく聞かれるけど、どっちも好きって答えたら、パパは難しそうな顔をする。
「お願い、ゆうくん!パパの方が好きって言って!」
おれはにっこり笑顔で、「ママの方が好き」って言ってみたんだ。そうしたらパパ、おいおい泣き出しちゃった。
それがおもしろくて笑っていたら、ママに怒られてしまった。ごめんなさい。
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朝 起きると、パパは真っ先にちゅーしようとしてくる。
そのたびに「こらっ、うがいもしてないのにばっちぃ!」ってママに叱られている。ママが言うには、パパの口の中にはバイ菌がウヨウヨいるんだって。こわっ。
だから、「バイ菌マン」ってパパのことを呼んだら、化石みたいに固まってしまった。
すぐさまママが、「パパ大好きって言ってあげて」とコソコソ。パパはプテラノドンみたいに、会社へ飛び立っていきましたとさ。元気いっぱいだね。
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「ママ、あれ飲みたい」
確か、粉ミルクのCMだったと思う。すごく美味しそうに見えたんだ。
でもママは、「あれは赤ちゃんの飲み物だよ。ゆうくんはもうおっきいでしょ?牛乳を飲もうね」って。いいや、牛乳よりもこっちの方が美味しそうだ。
「ママのおっぱいは?粉ミルクみたいな味がするの?」
おれはママに飛びついて、服の中に潜り込んだ。
「ちょっ、ちょっとゆうくん!やめなさい!ママはもう出ないの!」
「なんで!吸ったら出るよ、きっと!」
騒いでいたら、パパも駆け付けたみたい。「パパもママのおっぱい吸う!」とか言ってたような気がする。
でもね。すぐに鈍い音がして、おれがママの服から顔を出したら、パパは伸びていた。あんぱんの死体が転がってるみたいだ。
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パパはそんな感じで、ママによくやられている。くっついたりしては、「子供の前!」「グハァッ」なんてのはしょっちゅう。ママは強い。でも、パパはもっと強い。
だって、肘でお腹をガンッてされても、めげずに何度も引っ付こうとするんだもん。なんで?
「ママは照れ屋なんだよ。本当は喜んでいるんだ」
そう答えるパパの後ろには、いつの間にかママが立っていた。
「ゆうくん、今夜はママと二人で寝ようね」「マ゛マ゛ァァァ!!」
でも、たまーに、本当にたまーにだけど、パパとママは二人だけで寝ちゃう時がある。
フッと目を覚ましたら、真っ暗。キョロキョロすると、いつものベッドの上なんだけど、だぁれもいない。
トコトコ探しに行ったら、もう一つのベッドがある部屋から声が聞こえてきた。パパとママの声だ。
暗いから転ばないように、そーっと戸の前まで近づいて行くと、不思議な会話をしていた。
「あぁん…悠介さん…もっ、もうやめてっ…ゆうくんが起きちゃう」
「つれないことを言わないで、由貴くん…もうずっとしてなくて、気が狂いそうだったんだ。お風呂だってゆうくんと二人で入っちゃうし…僕も混ぜてよ」
「わっ、わかった、わかったから!悠介さんとも入ってあげるから、ゆうくんを巻き込まないでっ…!」
おれはそーっと、物音を立てないようにベッドへ戻っていった。なにやらただならぬ雰囲気で、恐ろしいことを聞いてしまったような気分だ。
そうそう。恐ろしいといえば、前にこんなことがあった。
パパのお仕事は、結婚式でお嫁さんが着る服を作ること。ママが出かけている間に、おれにもそれを着せてくれた。白くて長い、肩の出たお洋服。チビ助のおれにもぴったりだ。…あんまり、かっこよくはない。
「パパ、これ…似合ってる?」
「すっっっごく似合ってる!将来はパパと結婚しようね」
「パパはママと結婚してるでしょ」
「ゆうくんともしたいの」
そんなことを話していたら、ママが帰ってきた。
ママは綺麗な声をしている。パパいわく、前世は白雪姫だったんだよって。でも、「パパ…何してくれてんの」って言う声は雪でも降らせそうで、すごく怖かった。
おどおどするパパを放って、無言でテキパキとおれのお着替えを済ませる。それからママは、パパに言い放った。
「離婚」
おれはママに手を引かれ、外を歩いていた。後ろを付いて来る、パパみたいな人をチラチラと覗き見る。カオがナシのあれみたいだ。
「ゆうくん、見ちゃいけません。あの世に連れて行かれますよ。ほっときなさい」
ママはそう言うけど、あの世って…死んだ人が行くところ?パパは…死んじゃったの?
確かに後ろのおじさんは、パパだけどパパじゃないみたいだった。ママがこんなに冷たいのも、きっと本当のパパじゃないからだ。
おれは段々悲しくなって、声を上げて泣いた。ママはすぐにおれのことを抱っこしてくれたけど、「パパっ、パパがいいよう~!」って叫んだら、「…ぱーぱ、ゆうくんがそう言ってますよ」とママが言った。
そうしたらパパが駆け付けてくれて、またお家に三人で帰れたんだ。本当によかったぁ。
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