陥落 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな

文字の大きさ
4 / 9

4. お迎えですぞ

しおりを挟む
 次の日の朝、ミングォさんはやけににこやかな笑みを浮かべて仕事へと出かけて行った。昨日のことが余程嬉しかったのかもしれない。

 ただ、「万が一、ポポイがやって来ても絶対に出てはいけないよ。いいね」と言い残した言葉が妙に引っかかり、私の心はどんより曇り空であった。なんだか窮屈で息苦しい。ミングォさんもちょっと過保護が過ぎやしないだろうか。


 それでもどうにか朝の家事を終え、少し休んでいた時だった。椅子の上でうとうとしていた私に、戸をコンコンと叩く音が揺さぶり起こしてきたのだ。
 私は息を呑み、年下の子供達に音を立てぬよう手で合図をした。彼らはコクリと頷き、私はジッと戸を見つめた。

「おはようございます、ポポイと申します。リンユゥ殿はいらっしゃいますかな」

 あやうく、叫び声を上げるところだった。震える手で口を押さえ、私はそろそろと奥の部屋へ忍び足で逃げ込む。来た…本当に来た…何しに来たんだ…!

 背中の方からは再び私を求める声が響いた。あぁ…お願いだから帰ってくれ。やって来たなんてことがミングォさんに知られたら、私はそれこそ籠の中の鳥になってしまうのではなかろうか。

 すると突然、子供達の騒ぎ声が聞こえてきたのだ。私が目をひん剥いて顔を出すと、どうやってか家の中に入り込み、しげしげと辺りを眺める大柄の紳士がたたずんでいた。

「おや…やはりいらっしゃったのですね、リンユゥ殿。お会いできて嬉しゅうございます」

 あぁ、その小さなお子様方を責めないで下さいませ…実は村長から合鍵を拝借しておりましてね、とニコニコしながらとんでもないことを言う。

「何か、御用で?」私は震える足に鞭を打ち、ゆっくりと立ち上がる。
「そうです、お迎えに参りました。リンユゥ殿、わたくしの弟子となっては頂けませぬか」
「…弟子?」

 聞けば、私の璃伴の才能を育て上げたいという。ポポイの屋敷に住み込み、衣食住やお金のことは一切気にせず指導をして下さると言うが…しかし。

「私には…父と共に、この家を守り抜く義務がございます。大変もったいない話ではありますが…お断りさせて頂きます」
 怪しい、怪し過ぎる。そんなうまい話があってなるものか。大体勝手に他人の家に入り込んで平然としているのが末恐ろしい。この男…何を企んでいる?

 なのに私は、「貴方はご自分のことを試したいとは思いませぬか?良いものですよ…それに人生は長い」という言葉にふらついたらしい。さして好きではなかった璃伴だが、ミングォさんに反対された唯一の私の長所をこの人は理解してくれるのか、それにこの家で一生を終えるくらいなら…と、気づけばポポイの手を取っていた。
 彼は大層満足気で、その目は三日月のように弧を描いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父と息子、婿と花嫁

ななな
BL
 花嫁になって欲しい、父親になって欲しい 。すれ違う二人の思い ーー ヤンデレおじさん × 大学生    大学生の俺は、両親が残した借金苦から風俗店で働いていた。そんな俺に熱を上げる、一人の中年男。  どう足掻いてもおじさんに囚われちゃう、可愛い男の子の話。

羽衣伝説 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな
BL
 麗しい少年が、おじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全12話。  仙人の弟子であるボムギュは、お師匠様のことを深くお慕いしておりました。ところがある夜を境に、二人の関係は歪なものとなってしまいます。  逃げるように俗界へと降りたボムギュでしたが、村の子供達に読み書きを教えているという男に心を奪われてしまい…。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

甘味食して、甘淫に沈む

箕田 はる
BL
時は大正時代。 老舗の和菓子店の次男である井之口 春信は、幼馴染みである笹倉 明臣と恋仲にあった。 だが、母の葬儀を終えた早々に縁談が決まってしまい、悲嘆に暮れていた。そんな最中に、今度は何故か豪商から養子の話が持ち上がってしまう。 没落寸前の家を救う為に、春信はその養子の話を受け入れることに。 そこで再会を果たしたのが、小学校時代に成金と呼ばれ、いじめられていた鳴宮 清次だった。以前とは違う変貌を遂げた彼の姿に驚く春信。 春信の為にと用意された様々な物に心奪われ、尊敬の念を抱く中、彼から告げられたのは兄弟としてではなく、夫婦としての生活だった。

弟が兄離れしようとしないのですがどうすればいいですか?~本編~

荷居人(にいと)
BL
俺の家族は至って普通だと思う。ただ普通じゃないのは弟というべきか。正しくは普通じゃなくなっていったというべきか。小さい頃はそれはそれは可愛くて俺も可愛がった。実際俺は自覚あるブラコンなわけだが、それがいけなかったのだろう。弟までブラコンになってしまった。 これでは弟の将来が暗く閉ざされてしまう!と危機を感じた俺は覚悟を持って…… 「龍、そろそろ兄離れの時だ」 「………は?」 その日初めて弟が怖いと思いました。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

処理中です...