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第四章 新たな使命は特にない
第1098話
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冒険者ギルドに指名依頼を出しに来たら、受付嬢がこちらを見もせずに依頼を却下した。
その結果が招いたものは……
「カウンターが」
「あれ、燃えてねぇか?」
「おい水! 消火しろ消火!」
「受付嬢の生死は問わない! まずは神子様の視界から汚ねぇもんをどかせ!」
休憩から戻った同僚が事態に気付き、謝罪させようと爪とぎレディの頭を鷲掴みにした。
そのままカウンターに押し付け、勢い余ってカウンターごと破壊。
威力付けすぎだと思う。彼女生きてるかなぁ?
木製だったせいか、摩擦で火が付いたらしく煙が上がってさぁ大変。
冒険者たちがバタバタと消火活動に走り回る。
とんでもない騒ぎになってしまった。
「なにごとだ」
騒ぎを聞き付けて、二階のギルド長室からギルドマスターが姿を現した。
困ったことに、その人物こそ爪とぎレディの父親だった。
その瞬間のギルドの空気をお分かりいただけるだろうか。
ギルド長にとっては大事な一人娘。
だからこそ受付をしながら爪とぎなんて馬鹿げた真似も許されていた。
その娘が依頼人に無礼を働き、同僚がとっさに謝罪させようとしたが、どう見てもオーバーキル。
娘をかばえば冒険者からの信頼を失い、切り捨てれば親としての立場を失う。
普通なら。
無礼を働いた相手が、よりによって冒険者ギルド統括であるアー君の身内である僕。
娘をかばえば人生を失い、切り捨てれば情状酌量の余地がある……かもしれない。
なお、この場合の「人生」とは社会的信用や職ではなく、人生(物理)である。
「ギルマス! あんたの娘が、よりによって神子様を相手にやらかした!」
娘のせいで人生まるごとデッドエンドかと思われたその時、冒険者の悲鳴のような報告が響いた。
ギルマスは階段の上から跳躍し、僕の足元に着地するとそのまま土下座した。
スライディング土下座ならぬ、ジャンピング土下座。
身体能力が高くないとできない芸当だね。
「ギルマスが……土下座の域を超えてきやがった……!」
とざわめく冒険者たち。
僕も威厳ある大人に突然ジャンピング土下座されてびっくりしている。
「あはははー、土下座が間に合って良かったなぁ」
僕の背後から歩み出たのはアー君だった。
そのまま前に進み、土下座するギルマスの頭を踏みつける。
「アー君!」
「ママはちょっと休んでて」
「そうじゃなくて、胎教に悪い!」
「……」
ギルマスの頭からそっと足をどけるアー君。
分かってもらえて嬉しい。
説教という名のお話し合いが始まったので、僕は視線をキョロキョロさせ、一緒に来たはずの少年を探す。
「神子様、こっち、こっち」
少年は冒険者たちに保護されていました。
どうやら僕が来た時点でトラブルになると察知した熟年冒険者が、カウンター前での騒動の際に回収してくれたようだ。
今は奢ってもらったカレーを目を輝かせながら食べています。
「いきなりそんなに食べて大丈夫かな?」
「これ、疲れた冒険者に人気のひよこ豆入りカレーっすよ」
「しかもお子様用だから甘口」
ギルドのカレーがショタに優しい……シヴァさんが何かしたのかな?
その結果が招いたものは……
「カウンターが」
「あれ、燃えてねぇか?」
「おい水! 消火しろ消火!」
「受付嬢の生死は問わない! まずは神子様の視界から汚ねぇもんをどかせ!」
休憩から戻った同僚が事態に気付き、謝罪させようと爪とぎレディの頭を鷲掴みにした。
そのままカウンターに押し付け、勢い余ってカウンターごと破壊。
威力付けすぎだと思う。彼女生きてるかなぁ?
木製だったせいか、摩擦で火が付いたらしく煙が上がってさぁ大変。
冒険者たちがバタバタと消火活動に走り回る。
とんでもない騒ぎになってしまった。
「なにごとだ」
騒ぎを聞き付けて、二階のギルド長室からギルドマスターが姿を現した。
困ったことに、その人物こそ爪とぎレディの父親だった。
その瞬間のギルドの空気をお分かりいただけるだろうか。
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その娘が依頼人に無礼を働き、同僚がとっさに謝罪させようとしたが、どう見てもオーバーキル。
娘をかばえば冒険者からの信頼を失い、切り捨てれば親としての立場を失う。
普通なら。
無礼を働いた相手が、よりによって冒険者ギルド統括であるアー君の身内である僕。
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娘のせいで人生まるごとデッドエンドかと思われたその時、冒険者の悲鳴のような報告が響いた。
ギルマスは階段の上から跳躍し、僕の足元に着地するとそのまま土下座した。
スライディング土下座ならぬ、ジャンピング土下座。
身体能力が高くないとできない芸当だね。
「ギルマスが……土下座の域を超えてきやがった……!」
とざわめく冒険者たち。
僕も威厳ある大人に突然ジャンピング土下座されてびっくりしている。
「あはははー、土下座が間に合って良かったなぁ」
僕の背後から歩み出たのはアー君だった。
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「……」
ギルマスの頭からそっと足をどけるアー君。
分かってもらえて嬉しい。
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「神子様、こっち、こっち」
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どうやら僕が来た時点でトラブルになると察知した熟年冒険者が、カウンター前での騒動の際に回収してくれたようだ。
今は奢ってもらったカレーを目を輝かせながら食べています。
「いきなりそんなに食べて大丈夫かな?」
「これ、疲れた冒険者に人気のひよこ豆入りカレーっすよ」
「しかもお子様用だから甘口」
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